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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第一章

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24 寄付金の循環。

 その後、男性の隣に立ち通訳をし始めた佐知子。


 役人の女性が、名前とどこから来たのか地名を教えてというので通訳すると、すんなりと答えが返って来たので、先程までの苦労はなんだったのかと、役人の女性は溜息を吐いた。


 その後、その男性の年齢、生年月日などの個人情報を通訳し、どういう理由でここにきたのか、アーマ宿舎に入りたいのは一人だけかなどを聞くと、アーマ宿舎の説明に入った。


「アーマ宿舎は、食事、寝床、生活に必要な最低限の物が支給されます。その代わり農作業をしてもらいます。給金は出ません。また、学校に通ってもらいアズラク語とその他、この村の一般常識を学んでもらいます。そして、なるべく早く他の職につき、なるべく早くアーマ宿舎を卒業してもらいます。いつまでも居てもらっては難民の方は見ての通り次から次へとくるので宿舎がパンクしますから……って、訳してもらえる?」


「あ! はい!」


 佐知子は男性に伝える。


「ああ、わかった! ありがとう! 恩にきる!」

「わかりました、ありがとう、恩にきる。と、言っています」


 佐知子が女性に伝えると。


「感謝するのであれば、この村の代表二人にしてください。アーマ宿舎を設立したのはあのお二人です。そしてあなたがアーマ宿舎を出て、普通の暮らしをするようになったら、村に寄付金を納めてください。アーマ宿舎は寄付金と農作業で得た収入で賄われていますので……て、訳してくれる?」

「……はい」


 役人の女性の言葉を、佐知子はゆっくりと丁寧に心を込めて難民の男性に伝える。どうかこの循環が途切れることなく、長く続きますように。と、願って……。


「この村の代表二人には感謝だな……わかったよ、いつか普通の暮らしができたら……必ず出来る限りの寄付をするよ」


 男性は下を向き、はぁ……と、大きく息を吐いた。


「がんばってください」


 佐知子はほほえむ。


「伝えた?」


 役人の女性が何を話しているのかわからないので、眉間にしわを寄せながら問う。


「あ、はい! 代表二人には感謝だなって。いつか必ず出来る限りの寄付をすると……」


 佐知子はどこか嬉しそうに女性に伝える。


「そう……じゃあ、この書類を持って日没の鐘がなったら役場の入口に来るように言って」


 女性は一枚のパピスをテーブルの上に乗せる。


「はい」


 佐知子は男性に伝える。


「わかった。ありがとう、お姉さん。お嬢ちゃんもありがとな。助かったよ。恩にきる。それに故郷の言葉で会話したのなんて何年ぶりかな……嬉しかったよ」

 役人の女性に手を上げ感謝を述べると、佐知子に顔を向け男性は目を細めて嬉しそうにほほえんだ。


「いえ……私は……普通に話してるだけですから……」

「? どういうことだい?」


 少しうつむいて男性にそう言うと男性は怪訝な顔で返した。しかし、


「はいはい! 終わったなら次がたくさんいるんだから退席して!」


 役人の女性がパンパンと手を叩く。


「おお、どけってか。そうだな、俺みたいのがたくさんいるからな。じゃあな! 嬢ちゃん!」

「はい!」


 手を上げて去る男性に、佐知子も手を上げて見送りすると、


「ねえ……さっきから後ろで見てたんだけど、あなた私の故郷の言葉話してるわよね? でも、あの男性は違う言葉で話してた……でも、会話は通じてたわよね……? どういうこと? でも、あなた……私の言葉……わかる?」


 男性の背後で待っていた、ボロボロの服の白人の女性が、意味がわからない。という表情で佐知子にそう話しかけた。


「あー……言葉はわかります……。私、なんかちょっと特殊みたいで……」


 と返事をしたら、またもやその女性が掴み掛るように佐知子の服を掴み、故郷の言葉で会話するなんて何年ぶりかしら! 私も通訳して! と、頼まれるのだった……。


 そしてその様子を見ていた女性の役人は、訳が分からず唖然としながらも、頭の片隅で後で上司に怒られそうだけどもういいや、今日は仕事が楽になりそうだ。と、思ったのだった。

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