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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第一章

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21 神様の手助け。

「うわぁ……」

「あらぁ……」


 二人は難民課につくと、そんな声をもらした。


 難民課が一番端の理由を、佐知子はすぐに理解した。


 行列の人の多さと、異臭……ずっと旅をしてきた人達が、そのままここに来て大勢集まったせいだろう。

 入院した息子の付き添いの為にハンムに入り、食事を取り、きちんとした布団で寝て難民課に来たノーラは珍しい例だ。

 ほとんどの者が皆、身体を清潔にする事も、食事も出来ず、布団で眠ることも出来ずにここ、難民課に来たのだ。


「……とりあえず……列に並びましょうか」

「ええ……」


 そうして最後尾にならんだ佐知子とノーラだが、佐知子はあることに気がついた。


「ママー! ママー! まだなのー? お腹すいたよー!」

「がんばって、ここでアーマ宿舎に入られれば、おいしいごはんとお布団が待ってるからね」


「あと何時間くらいかしらね……」

「時間も時間だし明日になるかもな……はぁ……今日も野宿か……」


「おいまだかよ!」


「もう少しよ……がんばって……」

「うん……」


 佐知子は前や隣の列の人々の声を聞いて、この世界に来た最初の頃、セロとヨウと話した事を久しぶりに思い出した……いや、でも……と、心の中で思いつつも、確認の為、ノーラに質問をする。


「あの……ノーラさん、横の列の親子とその前の男女……同じ言葉……言語で話してます?」


 ノーラを問われた人達の言葉を少し聞き、そして返ってきた答えは……


「いいえ、多分、別の言葉よ? 私には何語かわからないけれど……」


 うわっ。と、佐知子の腕に鳥肌が立った。そして少し目を見開く。


 佐知子にはおそらく、今、ここにいる難民の全ての言葉が分かる。


 そう、すっかり佐知子は忘れていたが、この世界に初めて来た時、幼いヨウに貰ったぶどうを食べた為か、二回目にこの世界に来て、セロに荷物を見せた時に、この言葉の不思議現象を発見したのだった。


 佐知子には、おそらくこの世界の全ての言葉が日本語で聞こえ、そして相手には相手の話したい言葉、話せる言葉で聞こえるのだ。


「サチコ? どうしたの? 大丈夫?」


 黙って硬直している佐知子に、ノーラが心配そうに声をかけた。


「あ……はい」


 受け入れるのに少し時間はかかったが、なんとなく受け入れられた。きっと、神様が言っていた『たまに手助けするから』の一つなのだろうと、そう思うことにした。

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