19 行動力を見習って。
「ノーラさん! 何とかなりそうです!」
急いで手洗いうがいをし、ノーラ親子の病室の扉を勢いよく開け、佐知子は叫んだ。
「サチコ! ユースフが起きちゃうわ!」
しーっと、ノーラが人差し指を唇にあてる。
「あ……ごめんなさい……」
佐知子は静かに扉を閉め、そろそろとノーラが座る絨毯の上へと向かった。
「さっき知り合い……の様な方に聞いたんですが、役場に難民課があるそうなんです! そこに行けば、あーまの宿舎? に入れるそうなんです!」
瞳を輝かせて膝立ちし、佐知子はノーラに伝える。
「……あーまって何かしら?」
「…………」
すると、不思議そうにノーラにそう問われ、ぐっと佐知子は言葉に詰まってしまった。
「それ……は……聞けなかったんですが……」
風船がしぼむ様に佐知子は静かに座り込みながら小声で返す。そんな佐知子にノーラはほほえんだ。
「……大丈夫よ、サチコ。とりあえず役場に行ってみましょう。それしか縋れるものがないもの。ありがとうね」
優しいほほえみだった。佐知子は申し訳なく思いながらもほっとする。
「じゃあ、善は急げで今から……は、無理ですかね? いつ行けますか?」
どうしてもノーラ親子に関しては急いてしまう、佐知子。早く安住の地を見つけてあげたいのだ。
「そうね……ユースフも安定して寝てるし、佐知子の行動力は見習わなくちゃね! 看護婦さんにユースフ見てもらって今から行きましょう!」
ノーラは佐知子にほほえみ、やる気を出した。
「はい! 行きましょう!」
こうして、二人は役場の難民課へと向かったのだった。




