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4 握られた震える手。
しかし痩せて、頬はこけ、風呂にも何日……何ヶ月も入っていないのだろう……異臭がする。黒い布を頭から被っていたが、その布もボロボロ。抱えている子供も手足が細く、薄汚れていて痛々しい。
(声かけてよかった……)
佐知子は心の底からそう思い、ほっとした。あのまま無視して帰っていたらと思うと……ぞっとしたのだ。
「さ、早く行きましょう!」
「ありがとう……ありがとう……」
佐知子が手を差しだすと、女性は鶏ガラのような手で佐知子の手を取り、両手で握ると、ぎゅうっと、弱々しい力で……けれど精一杯の力なのだろう……手を震わせながら、涙を流していた。




