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神様の外交官  作者: 山下小枝子
【その他番外編】
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【番外編】初めての川遊び。

このお話は、2020年の感染症で大変な時期に、少しでも楽しい気持ちになってもらえれば……という思いで書いたお話です。

一部と二部の間の番外編でもないし、置き場所に困ったのとライト過ぎるからなぁ。と、ネットから下げたのですが、リクエストがあったのでフォルダ漁って発掘してきました!


文章がいつもよりかなりライトで、しかも設定が完結した後か、何か大変な事が終わった後で、しかも逆ハ状態なのでお嫌な方は見ないでくださいませ。

楽しんでいただけたら幸いです!

 それはとある暑い午前中のこと、佐知子が部屋で身支度をしていると……


「サッちゃーん! 今日は午後に皆で川に水浴びに行くよー!」

「!」


 急にバタンと扉が開き、セロがやってきた。


「セ、セロさん?」


 着替え終わっていたから良かったものの……と、佐知子は思いながら引きつった表情で振り返る。


「水浴び! 川遊び! いいよねー!! 僕、大好き!!」


 セロの突然の言葉に、佐知子は動揺する。


「え? 水浴び……ですか? 川で?」

「うん!」


 セロは笑顔で答える。


「え……でも私、水着とか持ってないし……」

「水着? 何それ」


 セロはきょとんとしている。


「……この世界では水浴びをする時どんな格好でするんですか?」


 佐知子は恐る恐る聞いてみた。


「えーっと、白い布まとって水に入るよ!」

「!」


 そんなの絶対透けるじゃん! と、佐知子は思った。


「わ、私はご遠慮します!」

「なんでー! なんでー! せっかく皆揃って行くっていうのにー! ヨウも黄さんもカーシャさんもトトくんもタカヤくんとハーシムさんまで来てくれるんだよ!? あの二人まで来てくれるんだよ!!」

「え……」


 タカヤくんとハーシムさんが水浴びに……? と佐知子も疑問に思う。

 何故、皆そんな揃って……。


「最近色々あったからねー。皆でパーッと遊ぼうよ! って、僕が提案したの! ね! サッちゃん! 川で遊ぼう!」


 セロは満面の笑みで言う。


「…………」


 そこまで言われては断れない……。


「わかりました……」


 佐知子は了承した。


「やったー!! 皆に伝えてこよー! じゃねー! あ、迎えにくるから! お昼ご飯食べたあとね! じゃあねー!」


 相変わらず嵐の様な人だなぁ……と、思いながらドアを開けっ放しで去って行ったセロを見送った。




「サーチコー! あんた水浴びの布持ってないだろ! 用意しといてあげたよ!」

「!」


 昼前、ドアをノックされ出ると、カーシャが白い布を持ってドアの前に立っていた。


「カーシャさん! ありがとうございます! ……ていうか……本当に白い布なんですね……」

「そうだけど?」


 カーシャは白い布を持って言う。


「あの……これ、裸に巻きつけて水に入るんですか? あの……身体透けますよね?」


 佐知子は怪訝な顔で言う。


「それで男たちを魅了するんじゃないかい!」


 ニヤリとカーシャは笑う。


「!? そんなことしたくありません!! 私、透けるなら水浴び行きません! 無理です!!」


 佐知子は両手のひらをカーシャに向けた。


「……って、言うと思って、サチコにはこれも用意してきたよ」


 ふっと笑いカーシャはビキニの様な物を取り出した。


「これ……」

「踊り子の衣装。あんまり飾りないから下にこれ着て白い布纏えば透けてもまだいいだろ?」

「…………」


 佐知子は悩む。それでもハードルは高い。


「せっかくの皆揃っての水浴びだよ! ガタガタ言わずこれ着て来な! 男達が待ってるよ!」

「ええ!? なんですかそれ!!」

「言葉の通り」


 カーシャはウインクして、じゃあね~と去って行った。


「…………」


 何なんだ一体……と、思いながらも、まぁ、ビキニ……の上に布纏ってプールに入ると思うならいいか。

 普通にビキニでプール入るよりいいし。と佐知子は届けられたお昼ご飯を食べることにした。



「サッちゃーん! 迎えに来たよー!」


 お昼ご飯を食べ終えしばらくすると、セロが今度はちゃんとノックをして迎えにきた。


「あ、ヨウ」

「だ、大丈夫か? 嫌なら無理して来なくていいんだぞ……?」


 ヨウはどこか不安げにおろおろと佐知子にそう問う。

 それが少しおかしかった。

 しかし、もう佐知子は腹を括っていた。


「大丈夫だよ。タカヤくんとハーシムさんも来てくれるっていうし。色々あったしね。皆でパーッと楽しもう!」

「…………」


 その言葉にヨウはどこかホッとしたような表情をして、少しほほえんだ。



 荷物を革のカバンに入れ、三人で部屋を出る。

 途中でカーシャとトトと合流した。

 そして黄とも合流し水辺につくと……


「うわー! さすがハーシムさん! 上流階級って感じ!」

「何がだ……」


(うん……貴族って感じがする……貴族じゃないけど……)


 ハーシムは水辺に布を敷き、背もたれのクッションを置き、日よけのテントを張り、果物や飲み物を置いて既にくつろいでいた。

 タカヤも横にちょこんと座っている。


「ちゃんとお前達も座れるように広く用意しただろう。休憩したかったら座れ」


 ハーシムはそう言う。


「ハーシムさん泳がないの?」


 セロがそう聞くと、


「泳ぐような歳ではない……」


 と返した。


「え、でも……」

「俺は泳ぐがな!」


 服を脱ぐと、腰に白い布を巻いた黄がバシャン! と、川に飛び込んだ。

 水しぶきが跳ねる。


「ぷはっ! あー! やっぱ水浴びは気持ちいいなー!!」


 水を滴らせた前髪を後ろへと上げた黄をかっこいい……と、思わず佐知子は思ってしまう。


「あー! ずるい黄さん! 僕も僕も!」


 と、セロもカンラを脱ぎ、白い布を腰に纏っただけで飛び込んだ。


「お前ら! ちゃんと服をたため!」


 ハーシムが水タバコをふかしながら注意する。


「ぷはっ! きっもちー! サッちゃんとヨウもおいでー!」

「サチコとあたしはちゃんと着替えるんだよ! 男共と一緒にしない! ほら、サチコ、ハーシムのテントの裏行くよ」

「え、あ、は、はい!」


 佐知子はカーシャに連れられるまま、ハーシムの立てたテントの裏へと回った。

 その間にヨウとトトも川に入ったようだ。


「タカヤも入っていいぞ。我慢するな……」

「いえ……私は……」

「……まぁ、あとでサチコに連れてってもらえ……」

「…………」


 そんな会話をしていると、テントの裏からやり取りが聞こえてきた。


「あ、それ持ってきたんだー。やっぱり着るんだね」

「当たり前です! 透けちゃうじゃないですか!」

「透けたほうが男共は喜ぶのに」

「喜びません!」

「喜ぶよー」

「それより、この白い布どうやって巻くんですか!」

「これー? ここをこうして……こう!」

「あ……意外と露出少ないですね……」

「でも透ける」

「……カーシャさん透けていいんですか?」

「べっつにー。あたしのナイスバディをご覧あれ! って感じ? それにあたしの身体なんてここの男共は誰も見てないよ」

「……そうですか……」


 そんな会話が背後から聞こえ、ハーシムとタカヤは気まずい空気の中、黙っていた……。



「じゃーん! おまたせー!」


 そして出てきた女性二人の格好は、白い布を肩で止めた白いロングワンピースを着た様な格好だった。


「遅いよー! サッちゃーん! 早くおいでおいでー!」


 と、手招きするセロは……金髪に水がかかり、それに太陽が反射してキラキラと眩しくて……。

 元々黙っていれば西洋の王子様なのが一段と格好良く見えた……。


 もう、男性陣はタカヤとハーシム以外、川に入っているので、よく見れば皆、水も滴るいい男状態だった。


 水辺に腰掛けたヨウとトトは鍛えられた肉体が上半身あらわになっているし、ヨウは濡れた前髪を上げてオールバックだ。

 佐知子は赤面してしまう。


(これは……こっちがまずいかも……)


 そう思いながらカーシャに手を引かれ、川に足を入れる。

 川はこの暑い午後の日差しの中とても冷たかった。


「あ、冷たい……気持ちいい!」


 佐知子は恐る恐る入ったが、二、三歩入ると味をしめ、ザブンと身体を水中へと沈めた。

 白い布が水面に舞う。


 水は体を覆い、ひんやりとしてとても気持ちよかった。


「すごーい! 水浴びってこんなに気持ちいいんですね!」


 佐知子はお団子にした髪の毛の前髪を上げながら言う。


「ほらー! だから来てよかったでしょ?」


 と、セロが近寄ってきた。


「はい!」



 それからザバザバとセロと水をかけあったり、黄とヨウが泳ぎ比べをするのを水中で見たりしていた佐知子はふと、ハーシムの方を見て気づいた。


(タカヤくん……)


 子供なのにこの状況を見ていて川に入らないのは辛いだろう……。

 あのタカヤくんの事だ……きっとまた我慢してるに違いない。

 佐知子はそう思い、皆から少し離れ、ハーシム達のテントの方へと向かった。


「タカヤくん、よかったら一緒に泳ごう? ハーシムさん、いいですよね?」


 佐知子は川べりに手を置き、ハーシムに問う。


「ああ、私は行きたかった行けと言っている」

「じゃあ、泳ごう? タカヤくん」

「……しかし……私は……」


 タカヤは中々、泳ごうとしない。

 本音は泳ぎたい。

 だが、ハーシムが泳がない手前、自分だけ泳ぐには……と、思っている。


「……また、ハーシムさん置いて自分だけ……とか思ってるんでしょ」

「!」


 思ってたことを見透かされてタカヤはビクッと肩を揺らす。


「もう! ハーシムさん許してるんだし、子供なのにそういうのよくないよ! 今はいいんだよ! そういうの! ちょっと待ってて!」


 佐知子はそう言うと、そこからは高くて上がれないので陸に上がってタカヤを引っ張ってこようと、皆の方へ行き、低いところから上がろうとする。


「あはは! ヨウの負けー! 次誰……が……」


 ザバザバと上がる佐知子を見てセロが硬直する。

 ヨウも、黄も、トトも……。


「ほら、タカヤくん、行こう?」


 テントに近寄ってきた佐知子に、ハーシムは瞳を見開き硬直し、タカヤも硬直していた。


「あー……まぁ、踊り子の衣装着させててよかったわ。これで透けてたらみんな死んでたわ」


「タカヤ! 布だ! 布を佐知子に被せろ!」

「はい! ハーシム様!」

「え?」

「やったー! 下に何か着てるけどサッちゃんのナイスバディ見られたー!」

「よくやった! セロ!」


 セロと黄がハイタッチする中、ヨウとトトは見つめたまま硬直していた。



 そんなそんな、楽しい午後の水浴びだった――。

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