表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の外交官  作者: 山下小枝子
【第一部と第二部の間の番外編】
111/267

【番外編】オレンジと水色の中。

「サチ……あの……今日の日没の鐘がなったら……裏門の前で待っててくれないか……」

 ごく普通の、ある日突然、勉強会の休憩の終わりにヨウにそう話しかけられた佐知子。

「え……うん……いいけど」

 佐知子が二言返事で了承すると、


「おや~? デートのお誘いかな~?」

 と、にやにやと机に肘をつき、手のひらに頬をのせながらセロがいう。

「……うるさい…………じゃあな」

 セロに一言いい無視すると、ヨウは颯爽と行ってしまった。


「セロさん! からかうのやめてください!」

 勉強に入ろうとしながら佐知子が怒りながら文句をいうと、

「いやいや、たぶんデートのお誘いだよ。今はあの時期だからね~」

「あの時期?」

 セロの言葉に首をかしげる佐知子。

「おっと、これ以上はまずいな。さ、勉強勉強!」

 佐知子が疑問符を返すと、セロは、ふふふとほほえみながら話をそらした。



(日没の鐘そろそろかな……早めに行っておこう)

 佐知子がそう思い、裏門へと向かうと、既にヨウらしき人影が見える。いつからいたの。と笑いをこらえて、小走りに近づくと、日没の鐘がなった。


「ちょうどだな」

「ごめんね、いつからいたの?」

「気にしなくていい……」

「教えてよ~」

「いい……それより……行くぞ。開けてくれ」


 そういって、ヨウが門番に門を開かせる。その開いた先に見えたのは…………


 一面の、水色の絨毯が、風に揺れ広がっていた……。


「わー! わー!」

 佐知子は思わず門から外へ駆けていゆく。

「あ、足下! 気をつけろ!」

 ヨウは慌ててはしゃいだ佐知子の後を追う。そんな二人を、門番たちはクスリと笑っていた。


 門が閉まり、畑のあぜ道を歩く二人。


「こんな水色……っていうか、淡い青っていうか水色っていうか……なんていえばいいんだろう! すごい綺麗な青の綿花なんだね! これ、綿花だよね?」

「ああ……バリク綿っていってな、ちょうど収穫時期で、綿花はこの色なんだ。ちょっとした観光地にもなるから、しばらくは収穫しなかったりする」

「確かに! だって綺麗だもん! うわ!」

「おっと!」


 あぜ道から畑に落ちそうになった佐知子の腕を掴むヨウ。


「あはは、ごめん」

「はしゃぎすぎだ」


 ヨウは苦笑する。

 でも、うれしそうな佐知子を見て、ヨウもうれしそうにほほえんでいる。


 落ち着いて、今度はゆっくりと、沈むオレンジ色の夕陽の色と、綿花の淡い水色の、綺麗な色の空間の中を、二人でならんでゆっくりと歩く……。


「綺麗だねぇ~」

「ああ……」

「これ見せてくれようと、今日誘ってくれたんだ」

「ああ……」

「ありがとね」

「いや……」

「まだまだ知らないことばかりだ……」

「ここの世界も広いからな……」

「この村のことさえも知らないよ」

「……俺は、お前の世界のことは何も知らないけどな……」


 苦笑いした佐知子に、少し淋しそうに、ふっとヨウがそんなことをいったので、隣を歩くヨウを見た。

 どこか悲しげな……淋しげな……つらそうな顔をしている…………。


「いつか……ヨウが私の世界にこれたらいいね! 神様の力使って!」

「!」


 ぱっと見た佐知子は、オレンジ色の中、満面の明るい笑顔だった。その笑顔と、その言葉に……気休めかもしれないが、ヨウの心は救われた。


(ああ……どうしてサチコはいつも…………)


 ヨウはそう思いながら、そっと佐知子の手に自分の手を伸ばす……けれどそっと引いた。


 今はいい……この美しい風景を、二人で一緒に話しながら、見ていられるのなら…………と。

実験的に地の文なしで、会話文を連続させてみた小説でした。

やっぱりしっくりきませんでした。

読む方は読みやすいかもしれませんが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ