表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の外交官  作者: 山下小枝子
第一部 第七章
108/267

10 神様の外交官。

 そして、思い切って伝える。


「……あの……神様がね……私なら色々……戦止めたり、変えたり、大戦争……回避することが出来るから……改めてやってくれる? って……ここにくる前も聞かれたことなんだけど……また聞いてきたんだ……」


 佐知子はうつむき、乾いた黄土色の地面を見つめる。


「実際、戦、経験してみて……看護係の仕事してみて……アフマドさんのことがあって……私も……戦なくしたいって思ったから、はいって……答えたの……出来ないかもしれないけど、出来る限りのことはします……って……」


 佐知子は急に不安になってきた。


「ねぇ……ヨウ……出来るかな……私に……そんな大それたこと」


 佐知子は少し困ったような、自嘲的な笑みを浮かべ、ヨウを見た。

 ヨウは真剣な顔をしていた。そんな表情に、佐知子はやはり自分には不相応なことをしようとしていると思い、真顔になり、気まずくなって俯いた。


「……それは……かなり大変なことだと思う……」

「……うん」


 言わなきゃよかったかな……と、佐知子は後悔する。


「でも……サチコが本気で戦をなくして……大戦争を回避しようとするなら……これから……どんな状況でも…………たとえこの世のすべてがサチコの敵になっても……俺は、サチコの味方だし……この命が尽きるまで…………俺は……サチコをずっと……側で支える……」


「…………」


 その言葉に、佐知子は驚いたような表情でバッと顔を上げた。


「だから……どうかこの世界から戦をなくしてくれ……サチコ」


 真剣な表情で佐知子を見つめていたヨウは、やわらかく、やさしくほほえんだ。


「ありがとう……」


 佐知子は瞳に涙をため、涙声でほほえんだ。



 なくそう……この世界から戦争を……まずはこの村から戦を……。


 神様がくれたヒント。

 戦争を回避するには外交が大切……。



(外交……外交かぁ……外交するには外交官になるしかないよねぇ……この村の外交官に……なる……の? 私が? なれるの? 今から? 使用人から? えぇ~……)


「……なんだ? また、ラハーフと話してるのか?」


 崖から難しい顔で佐知子が村を見つめ考えていると、少し含み笑いをしたヨウが佐知子に問う。


「え! あ! 違うよ!! 違う!! ちょっと考えごと!」

「……わかってる」


 ふふっとヨウが明るく笑った。


「……もー!」


 ヨウもそんなことを言ってこんな風に笑うんだな。と、驚きつつもおかしくて、佐知子は笑いながらヨウの二の腕を拳で軽く小突く。


 ヨウは穏やかに笑っていた。

 佐知子もほほえみ返す。


(でも……やるしかないよね……)



 なろう、外交官に。



 佐知子はこの世界に来た時も、それからも、どんな時もいつも変わらない、まぶしい太陽と、高く綺麗な青い空を見上げて思ったのだった。



第一部 完



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ