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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第一部 第七章
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4 埋葬の鐘。

 遠くから……地面にしゃがみこみ、布に包まれた人の様な……おそらく人……アフマドなのだろう……に、顔をよせ涙を流すアイシャの姿が見えた。


 佐知子の鼓動はより一層、早くなる。


「ここだ……」


 ヨウは小さくそうつぶやく。

 墓場のごく普通の一画。そこが、アフマドの埋葬場所だった。


「アフマド……アフマド……」


 黒いカンラを着たアイシャが、佐知子とヨウの位置からでは見えない、顔だけまだ布から出ているアフマドをなでながら、うわ言のようにつぶやいていた。


 アイシャは一晩中泣いていたのだろう。アフマドに寄り添っていたのだろう。瞼は赤く腫れ、目の下にはくまが出来、少しやつれていた。


(アイシャさん……)


 そんなアイシャを見て、佐知子は涙が溢れて来た。いよいよもって、アフマドの死を実感してきた。


 アイシャの周りには数名の女性が寄り添い、肩をさすったりし慰めている。その周りにも何十人も人が集まっていた。アフマドの人望がうかがえる。


「ヨウ、来たのか」

「ああ……」


 その場に立っていると、ヨウが佐知子の知らない男性に話しかけられた。そして、ヨウの元には徐々に人が集まってくる。


 なんでこんなことに……しかたない、戦は誰がいつどうなるか……など聞こえてきた。


 佐知子は少し離れた所にそっと移動して、その様子を見ていた。

 ヨウは少し悲しそうな表情をしながらも、あまり表情は変えずに、皆の言葉に相槌を打ったり、短い言葉を返したり、泣いてる者を慰めたりしていた。それはまるで、副長官の仕事をしているようだった。そんなヨウが痛々しい。


 カラン! カラン! カラン! と、鐘の音がどこからか聞こえた。


「アフマドぉー! 行かないでおくれぇー!」


 それと同時にアイシャが泣き叫ぶ。

 佐知子は驚くが、先程ヨウに教えてもらったことを思い出し、いよいよ埋葬なのだと息を飲んだ。

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