2 お葬式。
食事を終えた佐知子は、黒い革の靴を履き、レンガを重ね絨毯を敷いて高くなった段差に腰掛けヨウが来るのを待っていた。
看護係の仕事は例外で仕事があるのだが、葬儀がある人は休める。そして昨夜ヨウに、明日、迎えに行くから待っていろと言われた。
(お葬式か……初めてだな……)
佐知子は今まで結婚式の経験もなければ葬式の経験もない。どんな感じなのだろう……と、いまだにアフマドが死んだという実感がつかめず、宙を見つめぼうっとしていた。
「!」
すると、開け放たれた入口にかけてある布の向こうに、ちらちらと人影が見えた。おそらく中に声をかけられないヨウだろうと思い、佐知子は慌てて立ち上がる。
「あ、やっぱりヨウだ」
さっと布を避け見ると、そこには今日も午前中からギラギラとまぶしい太陽の中、佐知子と同じように黒いカンラ、黒い革の靴を履いたヨウがいた。
ヨウのカンラ姿はめずらしくて、思わず見入る。だがそれよりも……
(やっぱり痩せたなぁ……)
そして顔の切り傷が痛々しい……腕の包帯も。と、思いながら、佐知子の顔が曇る。
「あ……出て来てくれて助かった……おはよう……」
ヨウは、ほっとした顔であいさつをする。
「おはよう」
佐知子は薄くほほえんだ。
「……アフマドの葬儀……行くか……」
「……うん」
そう言われ、歩き出したヨウに並んで歩いた。