誤った恋
――それは正真正銘、「誤った恋」だった。
彼女に恋をしてはいけない、ということは明らかだった。
この世に生を授かってたかだか15年の僕にだって、もう少し慎重さがあれば、こんな愚かな恋に身を焦がすことなどなかったのである。
若気の至り――ということになろう。
彼女の容姿が醸し出す魅力に、僕は抗うことができなかったのである。
要するに、一目惚れだ。
何も事情を知らない人は、僕のことを「失礼な奴」と非難するだろう。勝手に恋に落ちておいて、それを「誤った恋」などと断じることは、相手に対して失礼だと、そう感じるに違いない。
それは一般論としては正しいかもしれないが、まさしく事情を知らない人の見解である。
彼女が一体どんな人間なのかについて、あまりに無知なのである。
彼女は、見た目だけはまともか、それ以上に優れているかもしれないが、中身は少しもまともではない。それどころか、はたから見れば、正気ですらないのだ。
それに――
僕の恋が「誤った」ものであることは、僕が恋に落ちた張本人も認めているのである。
それどころか、彼女は、一般に、人間が恋に落ちるということ自体が誤っている、と考えている。
考えている、なんてユルイ話ではない。
彼女は、そう確信している。
要するに、それは彼女の「教義」なのだ。
つまり、僕は、誤って恋して恋をしてしまった相手とは、美少女のお面を被った、教祖様なのである。
ここ2年くらい短編に凝っていましたが、久しぶりに長編を書きます。
ミステリーの良さを出しつつ、ラブコメのような強烈なキャラを描くことが、今作の僕の抱負となります。
(この話は短かったですが、)基本的に1話2500字程度とし、毎日1話以上の投稿を目指します。
何卒よろしくお願いします。




