伊音スズ(3)
タキ:最期まで、とても勇敢な女性だったよ
スズ:おまえら……ぐっ!
リュウ:夜中に騒ぐのは、近所迷惑になりますので。しかし、見た目も中身も綺麗な方だったのを覚えております
ショウ:血色も実際のものも良い献体だったなぁ、くふふ
スズ:ゆ、ゆるさねぇ……
ショウ:じゃあ、ご褒美に、良いところへ連れてってあげるから……ちょっとだけ、良い子にしててね
スズ:(М)トンッと、静かに首の後ろを突かれたのを最後に、意識がプツンと落ちてしまった。0:翌日、きさらぎ署捜査一課灰崎班のシマ
灰崎:スズのやつ、遅い……これは遅くまで楽しんだんだな。まぁ、6年走ってきたから、しょうがないか。それより、40歳で淡白な俺がおかしいのか?
灰崎:(М)出世をし、家庭を持った俺とは違い、スズはひたすら、目の前の事件と真剣に向き合ってきた。下ネタが大好きな変態だが、犯人が女でも遠慮はしないやつ。まさに、刑事の鏡みたいなやつなんだ。
灰崎:(М)特に、トウパイには思い入れがとてつもなく強い。人生を捧げたといっても、いいんじゃないかな。
灰崎:(М)今のところ、わかっていることを整理してみる。マル害は10~40代の女性で、5人。ホシは2人で、血抜き担当と解剖担当がいる。
灰崎:(М)2014年から、大体年に1回の頻度で1~2人のマトを殺している。
灰崎:(М)犯行は、帰り道のマトをスタンガンで眠らせ、作業場に運ぶ。そこで、全身の血を抜き、移植可能な臓器を摘出する、というもの。
灰崎:(М)なぜ、トウパイと呼んでるのかというと、何の感覚も感じられない無惨な犯行から、ドイツ語で無感覚を意味するトウパイから取ったらしい。
灰崎:(М)まぁ、最初の事件がカラオケ大会常連の10代の女の子で、血液と移植可能の臓器を摘出した後、遺跡跡に埋め、遺体を蝋化させたんだからな。
灰崎:(М)刑事2年目のスズと刑事10年目の俺、バディを組んでから7年がたったあの時から……いや、2年前に俺が班長になってからも、変わらずに追い続けてきたヤマだ。
灰崎:(М)ホシが2人とも同じ病院で働いていて、28歳の血液内科の看護師と30歳の移植外科の医師とまで突き止めたのは、スズが足で稼いだ成果だ。
灰崎:スズ、もういいよ。今度はお前が幸せに(班長と呼ばれる)ん?
灰崎:(М)報告書をまとめていた班員の高橋巡査から、1枚の封筒を渡された。
タキ:“そこの刑事さん、無防備にふらついてたから、捕まえてきちゃったよ。早く助けに来ないと、俺たちのモノにしちゃうからね。”
灰崎:(М)中には、機械的な文字で書かれた声明文が入っていた。添付されていたカードにはニコニコ笑っているイラストが描かれていた。なんで……こいつが。