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ジャンク・エコー

……………………


 ──ジャンク・エコー



 武器弾薬の補充を行い、的矢たちはいよいよ70階層に潜る。


 ここのエリアボスを排除して前進する。


『マイクロドローンを先行させろ』


『あいあい』


 信濃がマイクロドローンを先行させて投入する。


『目標確認。畜生。ジャンク・エコーだ』


『やはりか』


 日本国防軍コード:ジャンク・エコー。


 エキドナといわれる化け物だ。


 巨大な女性の体をしており、玩具のように人間の手足をもぎ取り、化け物に付け足す。キメラの母。クソッタレなゴミ溜め(ジャンク)の女王様。


『ああ。ああ。ああ。畜生。畜生。畜生。やっぱりあれは人間だったんだ。化け物なんかじゃなかった。人間だったんだ。畜生。なんてこった』


『黙れ、アルファ・ファイブ。あれは化け物だ。化け物に変わっている。元が人間だったらゾンビも殺せなくなるぞ。分かっているのか』


『だが、彼らは生きていて』


『生きていない。意識も知性もない。何より魂がない。殺せないなら、アルファ・シックスとともに上に上がれ。また呼び戻すかは分からんがな』


『やってやるよ。クソッタレめ』


 ネイトは殺意をむき出しにして、ジャンク・エコーの映像を睨む。


『目標、敵ジャンク・エコー。これを撃破し、70階層を掃討する。行くぞ』


『了解』


 的矢たちが駆けだす。


 70階層は化け物の歌が響いている。化け物たちが狂ったリズムで歌っている。


 そして、その音の反響で彼らは侵入者に気づいた。


「助けて、助けて、助けて!」


「殺さないで、殺さないで、殺さないで!」


 そう叫びながら化け物たちが突っ込んでくる。


『雑魚を一掃しろ、アルファ・ツー。他はジャンク・エコーに攻撃を集中』


 的矢はキメラたちへの攻撃を陸奥の重機関銃に任せ、銃口をエキドナに向ける。そして、引き金を引く。無数の銃弾がエキドナを貫き、エキドナが悲鳴染みた声を上げる。そしてエキドナはさらにキメラを繰り出してくる。


 ダンジョンカルトが差し出す生贄の手足を千切り、首を千切り、化け物にくっつける。そしてできたキメラが的矢たちの方に殺到してくる。


『流石に自分だけでは限界です、アルファ・リーダー!』


『アルファ・フォー。アルファ・ツーを援護しろ。サーモバリック弾でもなんでも使って構わん。制圧しろ。俺たちはジャンク・エコーを潰す』


 的矢は椎葉にそう命じ、椎葉がグレネードランチャーからサーモバリックグレネード弾や空中炸裂型グレネード弾を叩き込み、相手をぶち殺す。殺戮のリズムが刻まれ、重機関銃の銃弾とグレネード弾が景気よく音を立てる。


 その間にも的矢たちはエキドナを攻撃し続けていた。


 だが、相手は12メートル近い巨体を持った女だ。並大抵の攻撃ではバイタルパートに致命傷を負わせられないのか、依然としてキメラを作りながら送り込んできている。


『奴の目を狙え。効果はあるはずだ』


『了解。ぶち殺してやる』


 この中ではネイトがもっともエキドナを憎んでいた。彼がこれまで殺す羽目になったキメラたちはこのエキドナが作っていたと彼は思っているからだ。実際のところはダンジョンがランダム生成した化け物なのだろうが、ネイトは全ての元凶はエキドナにあると思い、対戦車榴弾をエキドナの目に叩き込んだ。


「────!」


 エキドナが人間の言葉では表現できない悲鳴を上げる。


 エキドナは的矢たちを明確な脅威と認識したのか、的矢たちに向かって巨大な手を伸ばしてくる。


『散開、散開』


 的矢が命じ、アルファ・セルが散開する。


 陸奥と椎葉も重機関銃を持ち上げて、移動する。


 だが、エキドナの追撃は止まらず、攻撃は苛烈さを増す。


 的矢たちは移動しながら撃ち続け、エキドナを殺そうとする。無数の銃弾が叩き込まれ、エキドナが怯む。それでもなお、エキドナは的矢たちを捉えようと手を伸ばす。だが、その手にネイトが対戦車榴弾を叩き込む。


 エキドナは手を押さえて呻き声を上げ、真の姿を見せた。


 エキドナの腕が6本に増え、キメラを作りながら、4本の腕で的矢たちを攻撃する。


『畜生。クソ化け物め』


『ぶち殺せ』


 的矢たちは攻撃をエキドナに集中し、とにかくエキドナの顔面を狙う。


『こんなことなら50口径の自動小銃を持ってくるべきだった』


『まさに、な、徹甲榴弾があったらあのクソ化け物の腕を吹っ飛ばせただろう』


『だが、兵士は与えられた装備で任務をこなす』


 的矢が対戦車榴弾をグレネードランチャーに装填する。


『くたばれ、化け物』


 的矢はエキドナの顔面に対戦車榴弾を叩き込む。エキドナの顎が砕け、口が剥き出しになる。だらりと舌が伸び、エキドナがまた言葉に表現できない悲鳴を上げる。


『アルファ・ツー、アルファ・フォー! そっちは大丈夫か!』


『大丈夫です、アルファ・リーダー! なんとかしのいでいます!』


 陸奥と椎葉は群がるキメラたちを屠っていた。


『もうすぐこっちも片付く。そうすればゲームセットだ』


 あの開いた口にサーモバリックグレネード弾を叩き込んでやれば、確実にエキドナは葬れるだろう。くたばりやがれ、クソ化け物と的矢は思う。


 だが、そこでエキドナは予想外の行動に出た。


 キメラの材料にしようとした子供を掴むと、自分の顔面の傍に寄せたのだ。


「助けて! 助けて、お母さん!」


 子供が悲鳴を上げる。


『どうする、アルファ・リーダー!』


『どうもせん。化け物に引導を渡す』


『ダメだ。それだけはダメだ』


『付随的損害だ』


 的矢がグレネードランチャーをエキドナに向けようとするのをネイトが抑える。


『30秒くれ。どうにかする』


『クソ。30秒だぞ』


『ああ』


 ネイトがシャーリーを呼ぶ。


『シャーリー。援護してくれ。子供を取り戻す』


『正気ですか。大尉』


『正気だ。頼んだぞ』


『了解』


 シャーリーがマガジンを交換する。


『つれないな、色男。あたしも援護するぜ』


『ありがたい、アルファ・スリー』


 そして、ネイトと信濃がエキドナに向けて突撃する。


 エキドナは攻撃を繰り広げてくる。それを信濃が銃弾で撃退し、シャーリーがグレネード弾で援護し、ネイトがエキドナに肉薄する。


 そして、エキドナの子供を掴んでいる腕に向けて対戦車榴弾を叩き込んだ。


 エキドナの腕がもげ、子供が落下する。


 ネイトは銃を手放し、子供を受け止める。


『もう大丈夫だ。大丈夫だからな』


『30秒だ。よくやった、アルファ・ファイブ』


 そして、的矢がエキドナの口にサーモバリックグレネード弾を叩き込む。


 エキドナの顔が弾け飛ぶ。口から入ったサーモバリックグレネード弾はエキドナの頭を完全に吹き飛ばし、頭を失ったエキドナが倒れる。


 そして、無数のキメラとともにエキドナが灰になっていく。


『片付いたな』


『ああ。片付いた』


 ネイトが安堵の息を吐き、的矢が頷く。


『よくやってくれた、ネイト。あんたは本物の英雄願望持ちだ』


『それは褒めてるのか?』


『さあな』


 生き残ったダンジョンカルトが喚き声を上げ、武器を手にして的矢たちに向かって来る。彼らはエキドナを崇拝していた様子だ。


『残りの仕事を片付けるぞ。容赦はするな』


『了解』


 そして、また銃弾が宙を駆ける。


……………………

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