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姉が真実の愛を見つけたようなので、私も真実の愛を探します

 私、コルネー侯爵家次女・シャーリーは、私の財産目当ての婚約者だった第二王子と婚約を正式に解消しました。


国王陛下はあの夜の出来事をうやむやにしようとしたそうですが、どういう理由か、あの夜第二王子が私からジャネットに乗り換えようとしてジャネットに殴られた話が新聞に載り王国全土に知れ渡ってしまったそうです。


そうして国民の皆様は私に同情してくれて、流石の国王陛下も民意には逆らえず婚約解消を受諾。




そして晴れて自由の身となった私は、今日、ジャネットが紹介したいという殿方と会う予定です。


場所は我が家の庭園で、ジャネットも交えて三人で。




私に「貴女の幸せのためならなんでもするわ」と宣言してくれたジャネットは、王子が消えたことでまた近寄ってきた財産目当ての男達から私を守るために社交界でも色々手を打ってくれていたらしく、御婦人方のお茶会ですら結婚や恋についての話題をふられることはなかったわ。


だからジャネットの勧める殿方なら、とこの場に来た。




でも、今日会う方についてよく知らないのよね。


ジャネットの婚約者の上官だから、軍関係の方。それも上層部。


そして領地を持っているから爵位のある方で、その領地はコルネー侯爵家とお隣。


我が家と隣接している領地の家は五つ程度あるけれど、軍人のご子息がいる家なんてあったかしら?




「おまたせ、シャーリー。遅くなってごめんなさい」


「いいのジャネット。そんなに待ってないわ」




今日もジャネットはとても素敵。


夜の社交界での姿もとても華やかだけれど、昼のお茶会での可愛らしい姿も羨ましいほど輝いているわ。




私を姉妹として、とても大事にしてくれるけれど、お母様は違うからこれほど差が出るのね。


自分のお母様を貶めるつもりはないけれど、やっぱりジャネットのお母様は人離れした魅力があるもの。


その娘であるジャネットが魅力的なのは当然だわ。




「それで、その・・・今日お会いする方は?」


「そう、彼のせいで遅れたのよ。彼は貴女に一目惚れした、愛してるって言ったのに、会議があるから遅れるそうよ!わたくしはそんなことより早く来なさいって説得していたの。まったく、わたくしのシャーリーを二の次にすることなんてあるの?」


「ジャネット、今は軍人さんみんな忙しいじゃない。」


「まあ、そうね。・・・でも」


「私は大丈夫。むしろ、仕事をしっかりなさる方みたいで安心したわ」




我が国はつい最近まで隣国と国境付近での小競り合いがあったのですが、なんでも第一王子殿下の活躍もありわが国有利の条件で講和が結ばれたそうです。


どのように活躍なされたのか、まで令嬢の耳には届かないのが残念ですが。




「・・・・・あら」


「ジャネット?」


「シャーリー、此処から動かないでね。わたくし、ちょっと行って来ます」


「ああ。ごめんなさい」




私には何も聞こえないけれど、ジャネットには何か合図があったのか庭園を抜け正門の方向に向かっていく。


最近ジャネットと話していると、こういう事が多い。


ああ、風に乗って遠くから怒鳴り声が聞こえてくるわ。愚かしい。




第二王子との婚約は解消されました。けれど彼は私か、私の財産にまだ未練があるのか、または自分の地に落ちた評判を元に戻したいのか、我が家の正門に押しかけてきているそうです。


私との復縁を求めて。迷惑な上に図々しい話。




すでに新聞の一面を飾り、日々自分の評判を落としているのをなぜ理解できないのかしら。




ただジャネットが毎回追い返していて、顔も合わせなければ声も聞かずに済むのが唯一の救いです。ジャネットだってあの王子のことは嫌いでしょうに。


優しさに甘えて申し訳ないとは思うけれど、自分で追い返せる自信もないし。


任せるのが一番早いのよね。




後ろでガサッと葉が動く音がした。


どうして正門からの道ではないのかしら。




「ジャネット?」


「シャーリー!」


「は!?どうしてここに!誰か!」




とうとう気でも狂ったのでしょうか。


なぜ我が家の庭園に第二王子が。


まさか正門は陽動?この王子にそんな知恵が働くなんて想定外だった。




「どうして人を呼ぶんだシャーリー!僕と君の仲じゃないか」


「近寄らないでください。私と貴方はもう赤の他人です。これは不法侵入です!」


「君に酷いことをした。それはあやまるよ、すまなかった」




この甘ったれの馬鹿王子!


私が謝れば許すような令嬢だと思っているなんて。




「誰か!誰か!」




我が家の護衛は正門でしょうか。


足音は聞こえてくるけれど、私とこの不審者の間には東屋の柵しか距離がない。




「うるさい!どうして言う事を聞かないんだ!」


「なっ!誰か!」




柵は乗り越えられてしまった。


後ろに引いた時にドレスがテーブルに引っかかってしまって動けない。


今度テーブルは女性でも動かせるような軽いものに替えてもらうことにしましょう。




「シャーリー!君は僕と結婚するしかないんだ!」


「そんなことありえません!」




肩を掴まれてしまえば逃げることは難しい。馬鹿な王子だけど、力は一般男性に劣らない。


しかも力加減を忘れているから痛い。




「ジャネット助けて!!」


「シャーリー!」


「ガッ!」




ジャネットではない声に名前を呼ばれたかと思うと、不審者が吹き飛びました。


この人は暴力を受ける運命にあるのでしょうか。




「何もされていないか!?その痣はどうした?アイツの仕業か!」


「あ、ええ。そうですが、え?どなた?」




私を不審者から引き離し、壊れ物に触るように心配してくれるこの殿方はどなたでしょう?


見覚えがないのですが、本当に。


ジャネットの知り合い?新しい護衛?


でも護衛にしては服装が立派だし、勲章も沢山。


ああ、ジャネットの婚約者の方?




「すぐにジャネット嬢が来るので、耳をふさいで少々後ろを向いていてください」


「はい」




おとなしく耳をふさいで後ろを向くと、ジャネットが走ってくるのが見えました。


凄く心配そうな顔をしているのですが、なんだか速度が速くなっていませんか?




「だっ!」




私の横をすり抜けたジャネット。もしかして、不審者に柵を飛び越えながらの蹴りをお見舞いしたのでしょうか。


あのドレスで動ける身体能力は凄いけれど、令嬢としてその行為はどうなのでしょう。








「もういいわ、シャーリー。可哀想に。わたくしが甘かった。ごめんなさい」


「大丈夫よ。本当に、大丈夫。あの方が守ってくれたから。あの方がジャネットの婚約者?」




裏門まであの不審者を引っ立てて、帰ってくる殿方を示すとジャネットは笑ったわ。


コロコロと面白そうに。




「彼が貴女を守るのは当然よ。それに、わたくしの婚約者は会議中。貴女に会いに来た彼の代わりにね、シャーリー」




コロコロと笑うジャネットは可愛いけれど、目が笑ってなくて怖いわ。








「改めまして。シャーリー、彼が今日会う予定だった人よ。」


「先ほどは愚弟が無体を働き本当に申し訳ない」


「あの馬鹿のせいで好感度が底辺だったらすぐにお帰りいただくから遠慮しないでね?シャーリー」


「そんな、ジャネット。助けてくれた方なのに。・・・・けど、まさか第一王子殿下がいらっしゃるなんて思ってなかったから、驚いたわ」




私がこの人の顔を知らないのも無理なかった。


王族の中でも第一王子は自ら軍に飛び込み、前線で国の力になることを望んだ方。


勿論政務が出来ないわけではないけれど、王子が軍を志望したときは特に情勢が悪かったから国軍の士気を上げるためにもと戦場から帰ってこなかった。


だから王族主催のパーティーに行っても顔を合わせることはずっとなかった。




「レギオンだ。殿下といった敬称はいらない。今日は一人の求婚者としてジャネット嬢の助力を得てお会いしに来た。愚弟のこともあるから、断ってくれて構わない」




なんだか変な気分。


確かにコルネー侯爵領は首都防衛の名目で首都に接しているから王族なら隣の領地となるし、レギオン殿下・・・レギオン様は誠実そうで精悍なお顔立ちで、婚約者は次期国王であらせられるのに居ない、とは聞いていたけれど。




まさかその理由が腹違い、とは言え弟の婚約者である私だったなんて。




「ジャネット嬢とは彼女がコルネー家に入る前からの知り合いで、ずっと連絡を取っていた」


「まあ。そんなに前から」


「わたくしの曾祖母が、とある王族の側室だった関係なのよ。それにシャーリーは覚えてないかもしれないけれど、貴女とレギオン様は一度お茶会で会っているの。王妃様のお茶会でね。そこで可愛いわたくしのシャーリーを紹介したら惚れられてしまったの。見せなければ良かった」




「婚約を打診した時にはすでに弟の婚約者になってしまっていて、どうすることもできなかった」


「陛下はあの馬鹿がどうしても可愛いらしいのよ。わたくしもお父様を説得したのだけれどどうしても駄目だったわ」




私の婚約の裏でそんなことが。


けれど、そんなに昔から好かれていた、と言われて悪くは思いません。




「それで、愚弟が貴女を手放したと聞いて直ぐに和睦をし、帰って来た。


貴女に十数年越しの求婚をするために」




こういう風に言われると、ジャネットも反対しない人だから、断る理由はない。


けれど、どうしましょう。




「私は、貴方に『真実の愛』というものを贈ることが出来ないかもしれません」


「・・・・その理由は?」


「その、私が一番大事に思っているのはジャネットだからです」


「まあシャーリー!」


「ごめんなさい、レギオン様」




ジャネットは私のために王族への不敬罪も意に介さず王子に暴行を加え、国王陛下の意思を無視して民を動かしてくれた。


それにこれらの行動がなかったとしても、お母様を亡くしたばかりの私に優しくしてくれて、ずっと守ってきてくれたジャネットが一番大事。


まるで父であり母であり、そして唯一の姉であるジャネットより優先する存在は私には作れない。




「・・・・自分のことが嫌いではないのだな?」


「それは勿論!先ほど助けていただいた際には胸が高鳴りました。ただ、『真実の愛』を贈れないかもしれない、というだけで」


「それなら構わない。それでも貴女と、シャーリーと結婚したい」


「けれど」


「自分は国王になる。だから貴女を一番に優先すると確約はできない。時には国を優先する。だからそんな男に『真実の愛』は捧げなくて良い。ただ自分からの愛を受け入れて欲しい」


「そんな・・・・あの・・・まずは、恋人からでよろしいかしら?」
















「相手が第一王子殿下なんて聞いてなかったわジャネット!」


「でも素敵な人だったでしょう?わたくしが唯一、婚約者以外で認めても良いと考える殿方ですもの」


「それはそう・・・けど」


「それよりシャーリー、ウェディングドレスのデザインを決めましょう!わたくし、シャーリーの花嫁姿を見るまで結婚できないわ!」


「もう、ジャネットったら」


















「レギオン、次あの馬鹿をシャーリーの視界に入れたら首都を落とすわよ」


「そんなことは二度とないから安心しろ」


「そう、なら良かったわ。国を落とすのって大変そうだもの」


「・・・・まったく、これではいつまでたってもシャーリーの一番にはなれそうにないな」


「それはそうよ!わたくしはシャーリーの姉よ?勝てるなんて思うのは千年早いわ」


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[良い点] 姉が第一と宣言する妹、妹のためなら首都を落とす姉。 前話を読んだ時点で 『もう、姉妹で結婚したら?』 と思える仲良し姉妹でしたが、本話でさらにその印象が強くなったような。 控えめに言って、…
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