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梶野宮家の転移家計簿  作者:
第二章 異世界移動編
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最後のゾンビ



 「わ~だ~ぢ~に~も~」


 最後のゾンビだろうレナが、地獄の底から聞こえて着そうな呻き声を上げ、ハイハイしながら土筆たちの場所を目指していた。


 土筆もそれに気が付き桶を持って走り寄る。


 「これを飲めばスッキリしますので」


 スッキリしますの言葉を聞きた瞬間、飛びつくように桶へと頭を突っ込むレナ。


 桶に入れられていたお玉に鬼人族オーガ特有の角をぶつけるも、お玉だけ放り出し一言。


 「ないです……うっぷ」


 再度頭を突っ込みオロオロオロオロオロオロロオロ。


 ヒロイン候補からゲロインへと昇格したレナ。


 土筆は横で嘔吐するゲロインの背中を優しくさすりながら、ころ合いを見て指輪からポーションを取り出す。


 エリクサーと書かれた小瓶を確認し封を空ける。


 「ココアさん水を下さい」


 ココアは言われたとおりカップに水を持ち土筆の元へ。


 「レナさんこれで口を濯いで下さい」


 吐き終えて多少なりスッキリした顔のレナは、まだ青い顔で水を受け取る。


 「ご迷惑を……すいません」


 消え入りそうな声のお礼にココアは頭を下げ、心配しながら後ろへと下がった。


 「口がスッキリしましたか? 二日酔いの薬ですので飲んで下さい」


 エリクサーから二日酔いの薬へと降格された小瓶をレナへ持たせると、表示も見ずにひと口でエリクサーを流し込むレナ。


 体が輝きポーションの効果が出ている事を確認する土筆。

 レナも二日酔いの薬と聞いて異世界の二日酔いの薬だと勘違いしていた事もあり、輝く体に驚き自身の体をペタペタ触り、体の異常がないか確認する。


 「土筆さま、この薬は? 光が収まらないのですが?」


 淡く輝くレナはエリクサーを飲み終わって三十秒は経過している。

 ポーションの効果もあり二日酔いによる頭痛も吐き気も気持ち悪さも収まった。が、淡く光り続けるレナ。


 流石に長く効果がある薬に疑問を抱くのは当たり前である。

 実際飲んでいるのだから……


 まだ手にしていた小瓶へと視線を移すレナ。

 レナ全体が輝いており目やまぶたも輝き視界が悪い中、小瓶を近づけラベルを確認する。


 エリクサーの文字が確認できる。


 「ん?」


 見間違いだと思い、もう一度確認する。


 「ん!?」


 再度視界に入るエリクサーの文字。


 「んっ!!! こ、これは、あの、あれ、何でっ!?」


 小瓶に表示されたラベルを押し付けるが如く土筆へと詰め寄るレナ。

 押し倒しはしないもののレナと土筆の距離は、ほぼゼロにまで近付き小瓶を押し付ける。


 「元気になったようで、よかったです」


 土筆の言葉に嬉しさよりも、この非常識な行動を咎めた方がいいのでは? と徐々に冷静になるレナの思考。


 ひと呼吸し冷静さを取り戻すレナ。

 光も徐々に治まってきた気もする。


 「いいですか土筆さま。土筆さまから頂いたポーションは、これ一つで城が買えるほど高価で貴重な物なのです。

 二日酔い程度の治療にホイホイ使っていい物ではないのです!

 何でこんな貴重な物を持っているのですか?

 ダンジョンでも攻略したんですか!

 まったく土筆さまは常識が足りません!!!

 そもそもエリクサーなんて使う物ではなく外交戦略のために使うか、国に仕える重要人物の危機に使うものであり、私の二日酔いなどに使っていい物ではないのです!

 それなにの……あーもうっ! どうするんですか! どれほど貴重か……こんなにも愚かな行動……はあ……」


 声は次第に小さくなり意気消沈するレナ。


 レナの叫びに集まってきた元二日酔いの面々はエリクサーの単語を聞き、我々が飲んだ物も? という疑問や、二日酔いの治療にエリクサーを使う土筆への非常識さ、エリクサーを所有出来るほどの財力があるという証明、などがみなの頭に頭に渦巻いた。


 もとより、守護者であるアステリアスが護衛しているのだ。只者ではないのは知っているし実感もあっただろう。

 それがエリクサーを出したことで完全に証明されたのだ。


 「すいません」


 背を丸め正座し怒られる土筆。


 もちろん土筆がエリクサーを選んだのにはちゃんとした理由もある。

 他のポーションには二日酔いに効くとの記載がなかったのだ。

 状態異常を治すポーションもあるのだが、そこには持ち合わせている耐性などの注意事項なども多く、二日酔いでダウンするなか何耐性がどうのと聞いて回る事に気が引けたのだ。

 それに所持しているポーションの数にも問題があり、二十名以上へ配る状態異常ポーションの持ち合わせがなかったのである。

 それなら初めから薄めても効果が半減するエリクサーを使って二日酔いを治した方が、完治しなくても少しでも改善できればとエリクサーを使ったのだ。

 レナに渡したのだって薄めたエリクサーで効果が出ているのなら、原液だっていいじゃない。

 だって効くと照明されたのだもの、つくし。


 貴重なものだとは薄々分かっていたが、青い顔で苦しそうに呻く姿を見ればポーションの一つや二つ惜しくないと土筆は思ったのだ。

 天使長さんへ使ったポーションの報告をすれば取り寄せも可能というのも頭の隅で覚えていたりもした。


 それなら使うにきまっている。



 「いいですか! 次からは何を使うかちゃんと説明してからにして下さい!」


 消沈から新たに盛り上がってきた説教。

 レナの輝きも完全に収まりポーションの効果もしっかりと現れ、顔色も優れ元気な様子のレナ。


 「何を嬉しそうな顔になって! 聞いているのですか!」


 鬼のように攻め立てるレナの癇に障った土筆が安堵した表情。


 「すいません。でも、その、レナさんが元気になって良かったです」


 その言葉に、二度目のその言葉に、レナの顔が真っ赤に染まる。


 エリクサーという超が付くほどの貴重なポーションを何の躊躇いもなく使ってくれたこと。

 二日酔いという無様な姿を晒し、嘔吐している中、優しく背中を摩ってくれたこと。

 そして、元気になって良かったと言ってくれたこと……


 一瞬で思考が回り続け「キュー」と一声発し、真っ赤な顔が芝生に横たわる。


 「ちょっ、レナさん」


 倒れたレナへ駆け寄り、新たにエリクサーを出す土筆。


 それを止めるアステリアス。


 「これ土筆! レナも言っておったが常識を覚えるのじゃ! それはしまうのじゃー!」


 アステリアスの言葉がキャンプ地に響き渡り、土筆はエリクサーを指輪へと収納するのだった。






お読み頂きありがとうございます。

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