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梶野宮家の転移家計簿  作者:
第八章 五月は割と暑い日が多い
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スリープキノコ対策と第三近衛中隊のお礼



 朝食を終えた土筆たちは食休みをしながら隊長であるピピラを加え、スリープキノコについての話し合いが行われていた。


「スリープキノコはもっと北に生息していたはずです。何かしらの原因があるかと思われます」


「にゃ~でも美味しかったのにゃ~」


「そうなると胞子がここまで飛んで増えたか……」


「にゃ、姉さまが言うように美味しかったのにゃ! 増やせばずっと美味しいのにゃ」


「渡り鳥に付着し増やす植物などもあると聞いた事があります。スリープキノコの胞子が付いた鳥などがここで胞子を落としたという事も……」


「バター炒めにカレーは美味しかったけど、キノコの養殖? 栽培? できるのかな?」


「ペルーシャさまとシャムールさまと笑美さまはあちらで遊んできて下さい。スリープキノコは危険な魔物なのでその対策を行わなければなりません」


「は~い、ごめんなさい……」


 レナが軽く怒っている事を察した笑美は猫耳姉妹を連れ会議の場を離れる。


「怒られちゃったね」


「でも美味しかったのにゃ~」


「初代さまは猪の魔物や魚の魔物を隔離して育てたのにゃ。それができると思ったのにゃ」


 三人は会議の場を離れ、第三近衛中隊が寛ぎながら話すたき火近くへと足を進める。


「あのカレーの味は一生忘れない……」

「グリーンフォースのロールサンド美味しかったなぁ……」

「食べた後まで幸せな余韻が……」

「あんなに柔らかいグリーンフォースは初めてです……」

「パンと合わせるとあんなにも美味しいのですね……」

「味付けが絶品でした……」

「ピンク色のタレに秘密があったのでしょう……」


 見張りに立つ者以外は食休みを取っており、竈には鍋がセットされ湯が湧くと、それを冷まし飲み水にする準備が行われていた。


「先ほどはご馳走様でした」「した!」


 笑美たちに気が付いた副隊長であるマルティンがお礼をし、その後に続く第三近衛中隊。


「いえいえ、兄の料理は美味しかったですか?」


 会話の取っ掛かりにでもなればと思い話を振る笑美に、マルティンは目をキラキラとさせ言葉を紡ぐ。


「昨晩のスープはとても美味しかったです! 故郷のスープに似た味を再現して下さり……あのスープは故郷の味よりも美味しかったのですが、風味が似ていて……父がよく兄妹と一緒に海辺の町へ連れて行ってくれ、そこで食べたスープの味に……父さんは元気だろうか……兄貴たちも……」


 早口で捲し立てる様にお礼をいうマルティンに続き、第三近衛中隊の近衛兵からも口々に味の感想が述べられた。


「カレーはまた食べたいです! あまりお金は払えないかも知れませんが、金貨数枚なら払えますので、店を出す時は声を掛けて下さい! 必ず常連になります!」


「今朝のパンに入っていた肉が最高でした!」


「また煮込みうどんが食べたいです! あの柔らかく深みのある味が忘れられません!」


「グリーンフォースをああも見事に柔らかく仕上げるコツはいったい何ですかっ!?」


「昨日のスープに入っていた団子が美味しかったのにゃ! 魚を丸める発想が凄いのにゃ!」


「串に刺してあり食べ易かったですね」


「あのスープも深みのある味で……また食べたいです!」


「冷えた体が温まりました!」


「新人たちだけが食べた鍋の話ですか? 話ですか?」


「あれは夜番をする者たちに土筆さまが差し入れして下さったものです!」


「そうだとしても食べたかった! 食べたかったわ!」


 第三近衛中隊たちから上がる料理の感想から食べたかったというクレームまで、幅広く聞きながら笑美は何度も頭を縦に振り兄の料理が受け入れられた事を嬉しく思う。


「喜んでもらえたようで良かったよ~」


「感謝しかありません!」

「何か困った事があれば我々を頼って下さい!」

「必ず期待に答えて見せます!」

「その時は差し入れを宜しくお願いします!」

「お前ら……まったく……」


 最後にマルティンが呆れ第三近衛中隊の話が纏まり、それを聞いていた笑美は小さく笑い、ペルーシャは誇らしげに腕組みをしていた。


 土筆の料理は凄いのにゃ~おでんも美味しかったのにゃ~あれは猫耳族ケットシーにゃら誰しもが喜ぶのにゃ~あれは屋台で出すべきにゃのにゃ~にゃんとかにゃらないかにゃ~


 カツオと昆布の出汁の効いたおでんを思い出すペルーシャは薄ら涎を垂らし、おでんの味を思い出しながらレガンス領の屋台事業に参入させる方法を考えていると、話が纏まったのかアステリアスやレナから笑美が呼ばれ、それについて行くペルーシャ。


「笑美よ、すまぬが遠征訓練は中断じゃ。これより帰還し森の大々的な調査へと切り替えるのじゃ」


「もしものことを考えると土筆さまや笑美さまを参加させる事は出来ません。申し訳ありませんが領主館で待っていて下さい」


「この穴埋めは何かでするのじゃ。近いうちに海洋都市マーメイドにでも連れて行くからそれで勘弁して欲しいのじゃ」


「おお、海だね! またあのかっこいい領主さまの登場が見れるのかな!」


 笑美が思い出したのは以前海洋都市マーメイドへ行った際に領主夫婦が庭の池から勢いよく登場し、使用人たちに抱えられて挨拶をするというパフォーマンスである。


「ど、どうじゃろな……」


「私はあまり見たくありませんが……」


「また魚料理を振る舞ったら喜んでくれるかな……」


 土筆の呟きに反応した右眉をピクピク動かすアステリアスと、眉間を左手で押さえため息を吐くレナ。


「そのなんじゃ……その事は置いておいてじゃな、エルエルに頼んで先に戻って欲しいのじゃ。イレーネイルにはココアから報告してもらい援軍をお願いしたいのじゃ。冒険者ギルドにもすぐ動ける者に頼み森を大々的に調査し、スリープキノコを根絶させるのじゃ!」


「殿下と私とキャルロッテに第三近衛中隊は現場に残り先に調査を致しますので、安全に退避してほしいのです」


「了解です!」


 アステリアスとレナの説得に、右手を額近くで手首を使いクルクルと三度回し、ビタっと止め敬礼をする笑美。


「それならエムエムのテントを置いておき、緊急の避難場所にしますか?」


 土筆の提案に首を横に振るレナ。


「冒険者が後から来る事を考えると、非常識な物は片付けたいです……」


「そうじゃな……土筆の気持ちはありがたいが……レガンス領で美味しい物でも作って待っておってほしいのじゃ……帰ったら土筆の作った料理をいっぱい食べるのじゃ!」


「おお、アッちゃんがフラグを立てた!?」


 拳を握り料理を作って待ってろというアステリアスに、水を差す様にフラグ発言をする笑美。


「はい、食べきれない量を作って置きますね。レナさんやキャルロッテさんも気を付けて下さいね」


「任せろし!」


「ありとうございます」


「それではエルエルにお願いしてきます。笑美も挨拶したらテントにな」


 一足先に白い小さなテントへと向かう土筆。


「は~い……アッちゃんもレナっちもレレ姉さんも気を付けてね! ピピラさんも生きて帰ってきてね! 絶対だよ!」


 やや真剣な瞳の笑美にキャルロッテは軽く抱きしめ、レナは笑顔で返事を返し、ピピラは敬礼で応える。


「スリープキノコなんぞに遅れは取らんのじゃ! 任せておくのじゃ!」


 平らな胸をドンと叩くアステリアスに笑顔を向けた笑美も小さなテントへと移動する。


「心配して貰えるのは嬉しいですね」


「うむ、土筆と笑美は良い奴らなのじゃ」


「早く終わらせて土筆の料理をお腹いっぱい食べるし!」


「私の事まで心配していただいて……頑張らないとですね!」


 アステリアスにレナとキャルロッテにピピラは地図を広げ、スリープキノコが増えた原因となる場所を特定すべく作戦を立てるのであった。




 お読み頂きありがとうございます。

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