表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深海特急オクトパス3000  作者: 夜神 颯冶
永劫回帰の無限円環
8/9

                                ─8─          


 

『L'AVENIR N'EST PAS UNE LANTERNE QUE L'ON ACCROCHE SUR LE DOS POUR ECLAIRER LE PASSE.』 




「えっ?」



『背中に明かりを背負っている人の前途ぜんとは真暗闇』




僕は少女の謎めいたその言葉の意図いとがわからず、

少女の方に振り替える。



室内の電灯は何回かの点滅を繰り返し完全に点灯していた。



明るくなった室内に少女の姿はすでになく、

無人と化したトイレで僕はただ1人、

たたずんでいた。



まるでそこには初めから存在してなかったように。



まるで幽霊のように跡形あとかたもなく。




  不気味な静寂せいじゃく




僕は鏡の中に閉じ込められた様な錯覚を覚え、

鏡に映らない位置で膝を抱えた少女が、

映ってないかのような妄想がよぎった。



僕は鏡の中の自分と再び手を重ねれば、

入れ代わるんじゃないかと言う強迫観念に囚われ、

鏡の中の自分に向かって手を伸ばしていた。



ひんやりとした鏡面きょうめんの感触。



だが何の変化もなく、

ただ鏡に向かって手をつく女性じぶんが、

映っているだけだった。



僕は自分の頬や唇を触って鏡の中の女性それが自分だと、

確かめていた。


 

何が現実でなにが妄想なのかわからなくなっていた。



まるでペンローズの(無限に続く)階段を登っているような、

錯覚さっかくに囚われている自分に気づく。



その疑念ぎねんは加速していき、

ここは鏡の中で、鏡に映らない全ての人が消えさり、

車内は無人になっている気さえしてきた。



僕はその疑心ぎしんの真相を確かめるべく、

固く閉ざした扉を開いた。


 

薄暗かった通路は明るく照らされ、

全面ガラス張りの深海パノラマを華やかに彩っていた。



誰かが何事も無いように普通に僕の前を通りすぎ、

死体の転がる車両の扉を開いて、

その中に消えていった。



僕は通路に出て呆然ぼうぜんとその様子ようすながめていた。



夢でも見ていたのかと思えるほど、

その景色は様変さまがわりしていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ