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深海特急オクトパス3000  作者: 夜神 颯冶
永劫回帰の無限円環
6/9

                                ─6─          

 



       狂っている



       狂っている



       狂っている




そしてふと我にかえり、

急いで近くのWCと書かれた(トイレ)を開き中に転げ込むと、

すぐにじょうをかけその場に座り込んでいた。



ひんやりした扉に背をつけ思考停止する。




 どれくらいそうしてただろうか。




中は薄暗く時間だけが永く流れていた。




 ここはどこだ?



 何が起こっている?



 僕はもしかして、すでに死んでるのか?




答えの無い永劫えいごう深淵しんえんの中で、

疑念ぎねんだけが壊れたようにループしていた。




その時、唐突とうとつにどこからか声が聞こえた。




   ─あなたは誰?─




その声はあまりに唐突で。



空耳そらみみかと疑い辺りを見渡す。




便座べんざの奥から再び声がした。




 『ここよ』



そこには便座の影に隠れるように膝を抱え座り込んだ、

1人の少女がいた。




幽霊かと動転しひきつった顔を、

すぐに自制心でどうにかおさえ、

さとられないように取りつくろう。




「君いつからそこに?」



『あなたより前から』




その答えにようやく先客がいたのだと気がつく。




「なにしてるの?」



彼女は不思議そうに僕を見つめつぶやいた。



『オブザべーション』



ここがトイレだった事を思い出す。



配慮(デリカシー)のかけた質問を誤魔化ごまかす様に、

僕は彼女にふたたびたずねた。




「電気つけなくて怖くないの?」



『闇を恐れるのは恵まれた人間。

 闇の住人は光を恐れる。



 知ってる?

 タコには9つ脳があるのよ。

 それぞれの足に1つづつ。 心臓は3つ 』




その意味が解らず彼女を見つめる。




『隠れているの』



『オクトパスの目が唯一無い場所だから』




「オクトパス?」



『この深海特急の名前』



やっぱりここは深海なのか?



どうやら彼女もここに避難してきたらしい。




『君は何をしてるの?』



そう言った彼女の顔にはどこか見覚えがあった。



「多分、君と同じ」



「君、どこかであった?」



その問いに彼女はしばし僕の顔を見つめるとつぶやいた。




『会ってない。初めて』




それでもじっと見つめる僕に、

彼女は小さく付け加えた。




『私はね』



その声にはどこか既視感きしかんがあった。




 近くて遠い記憶。



その彼方で、その声がリフレインしていた。





    ─私はね─



    ─私はね─



    ─私はね─






『もういいかな』




彼女はあきらめたようにくうながめ、

塵芥じんかいの笑みをたたえ、そうつぶやいた。



インモラルな瞳の奥に、

それでもぬぐえない悲しみの色があった。




if(イフ)もし、明日世界が滅ぶとして、

 最後の日、あなたがもし、

 美女と1日過ごして終われるとしたらどうする?


 美女と1日過ごして終わる?


 それともあがいて、

 答えのない迷路をさ迷う? 』




そう言った彼女は、

自分自身にそう問いただしてるようだった。



僕は無意識につぶやいていた。



「今日は去りました。

 明日はまだ来てません。

 だから進みましょう 」




迷走する彼女の問いに、

自然とそんな言葉が口かられていた。




『それは初めて聞く・・・  』



『それがあなたの選択?』



「いや誰かが、そんな事を言ってたなと思って」




『誰の言葉?』



「わからない」



『わからないの?』



「僕には記憶が無いんだ。

 正確にはさっき、

 車両で目覚めてからの記憶しかない」




jane Doe(ジェーン・ドウ)



彼女は小さくそうつぶやき続けた。



『 テ レ サ 』



「えっなに?」



『名前』



「えっ?」



『あなたは記憶喪失。

 自分の名前がわからない。

 だからつけてあげた』



 ・・・



「ありがとう。

 でもテレサはね・・・  」



『嫌なの?』



「嫌と言うか、ぼく男だからね」




そう言った僕の声は低くこもり室内に響いていた。



 


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