第二話 発覚
R15。無理矢理系です。
寛人の家をあとにし、僕は家路に着いていた。
明日の事を考えるだけで、今から待ちどうしくて仕方がない。
僕達が付き合い始めて三ヶ月くらいになるが、僕から誘うのは初めてだった。
お互いの家に行き来することがほとんどで、デートなんて数える程しかしたことがない。(恥ずかしさから僕はその数回さえもデートと認めてはいない)
しかも誘うのはいつも寛人の方だった。(やっぱり恥ずかしかったから此方から誘うなんて出来なかった)
今思い出すだけでも恥ずかしい。
「あー、早く明日にならないかなー」
恥ずかしさを紛らわすように呟いた。
「ただいまー」
返事がないからてっきり誰もいないのかと視線を下に向けると、父さんの靴が置いてあるのが目に入った。
そういえば、リビングからテレビの音が聞こえてくる。
なぜか電気が点いておらず真っ暗だったが、とりあえずリビングに向かう。
開けっぱなしのドアから部屋を覗くと案の定真っ暗な部屋で父さんはソファに座りテレビを視ていた。
「ただいま父さん。どうしたの?電気も点けないで」
「ああ、優杞。おかえり」
くるり、と此方を向いて笑顔で答える。
いつもと変わらない笑みになぜか違和感を覚えた。
でもそれはテレビの光と真っ暗な部屋のせいだ。
「どうした、父さんの顔に何か付いてるのか」
「あ……、別になんでもないよ」
どうかしてる。
父さんの笑顔が怖いなんて。
「それより、何見てるの。電気も点けないでさ……」
そう言って画面を見ると、幼ない男の子が楽しそうに笑っている姿が写っていた。
「これ……もしかして、僕?」
「ああ、幼稚園の運動会の時の優杞だ。他にもまだあるぞ」
そう自慢げに話す姿は、やっぱりいつもの父さんだ。
少しほっとしながら、父さんの隣に座る。
「まだ残してるの?」
「当たり前だろ、お前は父さんの自慢の息子だ」
本当に親馬鹿だな。
父さんは昔から僕に甘い。
聞いてるこっちが恥ずかしい。
「本当に大きくなったな」
「何だよ、突然」
唐突に頭を撫でられる。
「子供の成長ってのはあっという間だな。母さんが死んでもう四年になるが、お前は本当に父さんの心の支えだったよ」
何だか気恥ずかしくなる。
今日は本当にどうしたんだろう?
「僕だって悲しかったよ。それでも父さんがいてくれたから、僕は頑張れたんだよ。
それに僕には寛人がいるし……」
「そんなに奴のことが好きなのか」
父さんの顔付きが変わり、今まで聞いた事のない声で言う。
「父さん……?どうしたの突然……」
「答えろ」
びくり、と体が震えた。
「だって、小さい頃からの友達だし……」
「友達?」
父さんは馬鹿にするように鼻で笑った。
「お前は友達相手に寝るのか?」
その瞬間、全身から血の気が引いた。
信じられない。
今、父さんは何て言った?
「な……なんで……」
知ってるの?
「やっぱり、寝たのか」
しまった。
そう思ったが、もう手遅れだった。
「お前に悪い虫が付かないようにするためだよ。泊まりに行くなんて言うからまさかとは思ったが……」
もう言い逃れはできない。
どうしよう。
「父さ……」
パンッ!
気が付いたら床に倒れていた。
何が起こったのかわからない。
次第に頬が痛みだし、叩かれたのだと理解した。
「渡すものか。お前は俺の物だ!」
ゆっくりと父さんが近付いてくる。
鬼のような形相で、いつもの優しい父さんの面影はどこにもなかった。
獲物を追い詰める獣、欲望を剥き出しにした一人の男だった。
「少し甘やかし過ぎたようだな。この際誰の物なのか、しっかり躾けてやる」
愉悦に満ちた顔の男は足元まで迫っていた。
恐怖で体が動かない。
「…や、いやだっ、来ないで……」
違う。
こんなの父さんじゃない。
こんな父さんは知らない。
怖い。
怖い、怖い!
「お 前 は 俺 の 物 だ」
「―――っ、いやだぁああっ!!」
僕に逆らう術は無かった。
ズボンのベルトを無理矢理外される。
抵抗すると頬をぶたれた。下着ごと一気に引きずり下ろされる。
体を強引に反転させられ、腰を高くあげる格好にさせられた。
そして尻を容赦なく叩かれる。
「ひ…っ、痛いっ!」
何度も何度も叩かれる。
「やだ、やめてっ……」
「口ごたえするなっ!」
そう言ってさらに強く叩かれた。
「ひうっ、いっ、あっ」
ずいぶん長い間叩かれ続けた。
やっと止めてもらえた頃には僕はもう抵抗することすらできないほどだった。
父さんも息が上がっていた。
父さんの手が僕の方に延ばされる。
「もう…許してっ……」
また叩かれると思い涙を浮かべながら必死で懇願する。
すると父さんがにやり、と笑った。
「じゃあお尻をぶつのはこれで終わりだ。今度は別のお仕置きにしようか」
「なに……?」
別のってどういうことなんだろう。
父さんがより一層笑みを深めた。
嫌な予感がする。
「そんなに脅えるな。大丈夫、怖くないから。
さあ、優杞。上を脱ぐんだ」
え?
「聞こえなかったのか。服を脱げと言っているんだ」
父さんは何を言ってるんだ?
こんなことを言うなんて絶対におかしい。
「早くしろ!父さんが可愛がってやるって言ってるんだ!」
「……や、いやだっ!」
怖い。
間違ってる、こんなの。
親子なのに!
「いやだよ!何でそんなこと言うの?おかしいよ……。ねぇ、父さん……」
言い終わる前にまた頬を叩かれた。
「言っただろう、これはお仕置きだ。躾なんだ。教育なんだ。まだ解らないようだな」
再び僕を冷たく睨みつける。
ひどく苛立っているようで、僕はその顔に恐怖を覚えた。
「ううっ……父さ……」
「パパだ。俺のことはパパと呼べ。解ったか」
僕は怖くてただひたすらこくこくと頷いた。
「わかったならさっさと脱げ!」
「ひっ……」
僕はもつれてうまく動かない指先で必死にシャツの釦を外した。
すべて外し終えると震える手でシャツを脱いだ。
僕は靴下以外何も身に着けていない状態になった。
父さんの舐めるような視線に羞恥を覚えて身を固くした。
「いい子だ。さあ、パパといいことしようなぁ」
恐怖で体が動かない。
逃げるなんて無理だ。
僕は屈するしかなかった。
「はい、パパ………」
目を覚ますと僕は父さんの寝室に運ばれていた。
体中が痛い。
昨日のことを思い出した。
そうだ、僕は父さんに……。
その瞬間背筋が凍るような恐怖がよみがえり、吐き気が込み上げてきた。
ふと、首に違和感を覚えた。
そっと触れてみると、首に何か着いている。
犬用の首輪だろうか。
鎖がじゃらり、と動くたびに音をたてた。
その先はベッドに繋がれていた。
どうなっているかわからないが普通のペット用の首輪なら取り外すことができるはず。そう思い首輪に手をかけた。
と、同時にドアが開き父さんが部屋に入ってきた。
「おはよう、優杞。よく眠れたか?」
「っ、おはようございます……パパ」
とっさに手を下ろしたが恐らく手遅れだろう。
父さんはゆっくりと此方に歩み寄る。
「優杞はいい子だから、逃げたりしたらどうなるか、わかるよな」
「ご、ごめんなさいっ」
逆らったらどうなるか昨日、身をもって知らされた。
「逃げたりしないよ……。そのかわり、寛人には何もしないで……」
昨日の父さんは尋常じゃない。
この様子だと何をするかわからない。
寛人の名前を出したせいか、父さんは不快そうに顔を歪めた。
「なんでもするから……!だから、お願いします……」
父さんはしばらく考えるそぶりをした。
「…本当だな」
「本当だよ!絶対なんでもするからっ」
寛人には絶対迷惑をかけたくない。
僕が少し我慢すればいいんだから。
「……わかった。あいつのことは見逃してやる。そのかわり、俺の言うことは絶対だ。あいつとは二度と会うな。わかったな?」
「え……」
寛人と二度と会えない。
そんなこと考えられない。
でも、逆らうことはできない。
寛人のことは絶対に守らなきゃ。
「わかった。寛人にはもう会わない。言うことはなんでも聞くよ……」
父さんが満足そうに笑った。
その後僕は父さんに好き勝手にされた。
昨日の疲れが残ったままだが、それでも休むことは許されない。
僕はもはや声にならない悲鳴を上げながらひたすら父さんに揺さぶられ続けた。
父さんが出し入れするおぞましい感覚のあと、なかに父さんが欲望を吐き出すと同時に僕の意識は途切れた。




