2.伊藤って苗字は日本人の苗字ランキングで5位なんだぜ!(2019年11月現在)
えー、伊藤連、15歳。
もうすぐ16歳になる高校1年生です。
さて、俺は現在、友人である伊保橋流星の前世世界であるアヴェンシアに来ています。
え、え?
俺でいいの?
異世界来ちゃうの俺で良いの?
伊保橋と伊藤で『伊』しか合ってないけど俺で良いの!?
同性同名、多分だけどいっぱい居るよ?俺で良いの!?
恐ろしく動揺しているけど、オーケー冷静になろう。
問1―なぜ俺はココに居る?
答え―わかりません。
問2―ココに来る前は、何してた?
答え―えーと、学校帰りにコンビニ寄ってお茶を買った…いや、手に取った所までは覚えてる。
問3―今の持ち物は?
答え―右手に携帯、左手にペットボトルのお茶、背中にリュック。因みに中身は筆記用具と課題が出た英語の教科書とノート、体育で使った体育着とタオル、カラの弁当箱、箸と温かいお茶が入ってたステンレスボトル、お菓子が色々と財布。以上です。
問4―今の格好は?
答え―学校指定のワイシャツとネクタイに、チェックのスラックス、ベージュのカーディガン。足元はスニーカー。
問5―なぜココがアヴェンシアだと思う?
答え―なぜなら、おつきさまが、ふたつあるからです!って子供みたいに言ってみる。
そう、俺の頭上のはるか上には柔らかな光を発している月が二つ。
一つは満月で、もう一つは三日月。
ココがアヴェンシアだと思ったのはこれが原因だ。
流星の話によれば、アヴェンシアには月も太陽も二つある。
地球での月の満ち欠けの周期は約29日で、それはアヴェンシアでも同じらしい。
ただ、太陽も二つ有るため、二つの月は太陽が当たる方角も違うため、二つ同時に満月になるのは4年に1回で大変貴重らしい。
閏年?って聞いたら同じ様なものって流星が言ってた。
そんな訳で月が満月と三日月だから、太陽も二つと推測し、きっとアヴェンシア!て言うかアヴェンシアが良い!!って言う、俺の希望でもある。
「てか、ココがアヴェンシアじゃなかった場合、俺詰んでるよね?」
ついつい独り言つが、返ってくる言葉はもちろん無い。
「さーて、どうしたものか…。」
月を見上げながら、手に持っていたお茶のキャップを外して一口すする。
まだお金払ってなかったけど、今回は大目に見てね?
いつ戻れるかも分からないし、かと言って飲まないって言うのも無理な話だしね。
お茶をもう一口飲み、リュックにしまう。
携帯を確認すると、勿論電波は無く、充電のパーセンテージは72%と表示されていた。
ホームの時計は16時28分と表示されていて、記憶の通り放課後だった。
「これって地球、てか日本の時刻はって事でいいんだよね?」
携帯を見つめながらついつい眉根が寄る。
ホーム画面には最近お気に入りの某バンドメンバーの一人がこちらを挑発したポーズで映ってる。
あー、今こういう気分じゃないんだけどなーとか思いながらも、俺の脳はフル回転。
まず、ココをアヴェンシアであると仮定しよう。
そして、今は夜…だよね?
月も出てるし夜で合ってると思いたいけど、地球では昼間も陽が出ない極夜があるし……、果たしてアヴェンシアでもあるんだろうか?
地球みたいに南極圏、北極圏のみみたいに地域によってアヴェンシアでも起こる可能性も捨てきれないから、今が夜であるって言いきれないのが辛い。
そもそもココはアヴェンシアであるとして、どこの大陸なんだ?
流星の話では、五つの大陸が合って、それぞれ文化に違いがあるって言ってたな……、正直、流星が前世で主に生活していた赤龍の大陸が良いなーとか思うけど、情報が足りな過ぎで何にも分からん。
周りを見渡せば、正面は草原が広がっていて月明かりだけで地平線が見えるほど何もない。
右は小高い丘になっているようで奥は見えず、左も草原が広がっている。
そして後ろはと言えば、数百メートルほど奥に林が見える。
さてはて、どちらに向かうべきか……。
うーん、まずは小高い丘に登ってもう一回周辺確認かなー?
忘れている訳じゃないけど、アヴェンシアだったらモンスターも出るし、周辺確認大事だよね!
よし、取りあえず動き出そう!って事で、俺は異世界での初めの一歩を踏み出した。