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東方禁忌祿 ー禍ヲ纏イシ忌憚劇ー  作者: かれーうどん
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【第参話】能力開花?座学も兼ねて

枝暮「所で霊夢。俺を居候させてるけど、収入の方は大丈夫なのか?」

霊夢「あんたが働いてるのもそうだけど、後は紫からあんたの生活費を貰ってるわ」

枝暮「そなの?……道理で収入ない割に生活が安定してるわけか………」

魔理沙「ま、賽銭箱は空っきしだけどな」

霊夢「うっさい」

 博麗神社にて、曉(曉)枝暮(しぐれ)居候(いそうろう)兼雑用として生活している。毎日面倒な雑用ばかりが多いが、何だかんだ長閑(のどか)な一週間を過ごしていた。


魔理沙「枝暮、スペルカードルールは知ってるか?」

枝暮「………え?スペルカードルール?」

魔理沙「そうだ!」


その内の一日、霊夢は午前幻想郷に異変がないかの警備に行った際、丁度そこに遊びに来た魔理沙にお茶を出していた枝暮はそう聞かれたのだ。突然だったので、枝暮は鸚鵡(オウム)返しをしてしまう。

───スペルカードルール

通称【弾幕ごっこ】で通っており、幻想郷内での異変や紛争を安全に解決するため、博麗霊夢に作られた決闘法(システム)。言うなれば現実世界での野球やサッカーと言ったスポーツ的な決闘法でもある。

ルールとしては

①カードを使う回数を宣言する

②技を使う際には「カード宣言」をする。

宣言が必要とされるため、不意打ちによる攻撃は出来ない。尚、「カード宣言」は叫ぶ必要は無く、技の名前を言う必要もない

③弾幕の美しさに意味を持たせる。攻撃より人に見せることが重要

④体力が尽きるか、すべての技が相手に攻略されると負けになる

⑤このルールで戦い、負けた場合は負けを認める。余力があっても戦うことはできない

……と言うものだ。色々と細かいルールがあるが、今はそれどころではない。

簡単に言えば、『殺し合い』を『遊び』に変換したのだ。だからこそ異変も起こしやすくなり、今まで「紅霧異変」や「春雪異変」と言った異変が多々起きている。

恐らくこのルールがなければ、今頃他の妖怪は存在していなかったであろう。

枝暮は「一応」と言って頷く。


魔理沙「お、外来人なのに知ってるのか?珍しいなぁ」

枝暮「ま、一応だから」


全てを知ってる訳じゃないと枝暮は付け足して笑う。

彼は知ってはいるが、詳しいところまでは分かっておらず「美しく魅せたら勝ち」みたいな解釈を持っている。


魔理沙「私は結構好きなんだぜ?スペルカードルールはお互いの個性や自分で考えたスペルを出しあって楽しむからな!」

枝暮「ほーん………でもよ、それってあくまでも少女が楽しむ為の決闘法だろ?それだったら男や大人はどうなるんだ?ほれ、森近さんだって妖怪と人のハーフなのにやってないだろ?」

魔理沙「あ~?彼奴はスペカは自分がやることは無粋だの何だの言ってるからな。ま、あくまでも少女に似た妖怪がやるものなんじゃね?」

枝暮「成る程ねぇ………」


実際、弾幕ごっこは殆どの場合が少女の姿をした妖怪や神が異変を起こし、強力なスペカを起こしていたりもする。

男は?という問題についてだが、この幻想郷では男は一般人はいても妖怪はいない。ぶっちゃけて言うと弱い存在だろう。まぁそれでも平和なので関係しない。

魔理沙が「お前も能力がありゃあなぁ」と煎餅をかじりながら呟いているのに対し、枝暮は「あったとしてもしょうもないもんだろ?」とそんな他愛もない会話が続く。すると、警備のため飛行していた霊夢が戻ってきた。


霊夢「ただいま」

枝暮「おかえりさん」

魔理沙「お疲れー」

霊夢「いつものメンバーね。……ってちょっと!勝手に煎餅食わない!あ、枝暮、お茶だして」


戻ってくるなり怒りながら座敷に入り、枝暮は「はいよ」と言って座敷から出る。

霊夢は胡座をかいて手を付き、煎餅をとってかじる。


霊夢「何の話してたの?」

魔理沙「ん?枝暮が弾幕ごっこを知ってるかって話だな。後、お前に能力が無いかって話」

霊夢「能力?………あっ、そういや思い出した」

枝暮「ん?何を思い出したんだ?」


丁度茶を入れた湯飲みを霊夢の前に置き、霊夢はそれを飲んで一服する。そしていつもの変化のない表情で枝暮の事を見る。


霊夢「あんた、“能力”については知ってるわよね?」

枝暮「まぁ、ね。霊夢とかの空飛ぶ力とか見せられりゃ嫌でも実感するわな」

霊夢「ん。じゃあ説明しなくて良いわね。じゃ、やるわよ」


やる?何をやるというのだ?

そんな疑問を持ち、どっこいしょと立ち上がる霊夢に疑問を投げ掛ける。


枝暮「……?やるって、何をやるんだ?」

霊夢「ん?決まってるじゃない。





────あんたの能力強制発動よ」


◆◇◆◇◆◇




ボンジョルノー☆やぁ、曉枝暮だぜ?

今俺は博麗神社・境内。正面には霊夢。隣の自宅には魔理沙が縁側でワクワクしている。

………さて、俺は今何をするのかと言うと………


霊夢「おし、やるわよ」

枝暮「…………なぁ、本当に能力の強制発動って大丈夫だろうな?」

霊夢「大丈夫よ。死ぬほど痛いだけだから」

枝暮「それ大丈夫じゃないよ寧ろヤバイやつだよ!?俺の体を何だと思ってるの!?」

魔理沙「心配するなー!私が骨を拾ってやるぞー!」

枝暮「そこぉ!俺が死ぬ前提で言わなぁーい!」


俺のツッコミは俺の体力を奪っていく!てか俺に能力あったの!?てか何で言ってくれなかったんだよ紫さんよぉぉぉぉぉぉぉ!!

そんな俺の心の嘆きは無視され、霊夢が何やら呪符を持って唱えている!

あっヤバイもう準備してやがる!いや能力できれば欲しいけど不味い!死ぬほど痛いって絶対死ぬ!


霊夢「んじゃ、行くわよー」

枝暮「適当な風に言わないで!?もっと俺にとって大切なモノなんだぜ!?」


霊夢はペッと適当に札を投げつける。

あっれーおっかしいぞー?適当に投げたはずなのに全然見えな───


バリバリバリバリバリィィィィィィィッ!!!


枝暮「あぎぇああぁあぁあああぁあああああああああああああ!!!?!?」


枝暮の全身に電撃のような痛みと衝撃が走る。その光景はまるで落雷に撃たれた人のような光景で、枝暮の体は壊れたラジオのように震え、固まっている。

それが十秒くらい続き、終えた頃には汗まみれで膝に手をつけて息を荒げていた。


枝暮「はぁっ………はぁっ………ごほっおぇ………」


喉の痛みと全身の痛みが俺の体にまとわりつき、胃の中のモノ(輝くキラキラ)が出そうな気分になる。

俺は乾いた口の中から唾を必死に分泌し、飲んでその乾きと不快感を紛らわして落ち着かせていく。


霊夢「一応言い忘れてたけど、能力は普通自然発動するのが一般的だから、強制発動は鳩尾(みぞおち)を全力を殴られるような感覚になるって聞いたけど………」


違います。いやマジで違う。俺味わったのこれ全身を焼かれるような……感電したような感じでしたよ?いや鳩尾よりも痛いかもしれんよ?

心の中でそう思いながら、自分の体に異常があるか確かめてみる。

…………体が暑いくらいで何も分からない。……まさか───


霊夢「強制発動に失敗も何もないわよ。今投げた札にはね、必ず発動する術式を組み込んだ博麗式呪符。失敗したら先祖を恨みなさい」

枝暮「…………で、でもよ、何も感じないぞ?強いて言うなら体が熱いくらいだし………」


そう俺は手を軽く振り、何か出ないのかと拳を適当に振る────

ボォウッ!

…………あれ?今燃えた音したよね?てか何でか俺の手燃えてない?え?こんな……えっ?ナニコレ?


霊夢「…………それがあんたの能力みたいね。おめでと」

魔理沙「何かやるせない気持ちだろうなぁ。あんな能力の出し方って…………」


霊夢は何か呆れたような声で、魔理沙は笑いを堪えるような声で呟いている。何故だろう。能力までろくでもなさそうな気がしてきた

………でも、この炎、何か普通の炎って言うか……。何んだろう…………

俺はよく分からないまま、その炎を見つめていた。

………………熱かった


◆◇◆◇◆◇



枝暮が何やかんやで能力を手に入れ、仮称として『炎を操る程度の能力』としたんだ。

次の日、博麗神社から北西に離れた森の中にて


枝暮「………して、何故こんなところに?」

霊夢「森でなら神社に被害来ないでしょ?弁償とかしたくないし」

枝暮「まぁ、確かに…………」

霊夢「じゃ、今回は最初だから計測を兼ねての模擬戦闘。ルールは能力の使用禁止。弾幕も陰陽玉も使わないで素手のみの試合よ。良いわね?」

枝暮「要は格闘戦だろ?……ま、頼みますわ………」


二人は森の中で立ち合い、構える。

枝暮は腰を低くして脚を開き、固定して防御体勢の構えをとる。

霊夢はその場に立ち、右手を突き出して左手を拳の甲側を見せる。脚は半開きで枝暮を見つめている。

これは博麗流戦闘術という、霊夢のみで作り上げた妖怪退治にも有効な武術。基本構えをとらないが、今の構えは一対一を想定し、攻撃と防御を兼ね合わせた『受攻の構え』という型だ。所謂稽古用の構えで、武術の初心者も対応しやすくなっている。

───風の音がしない。乾いた空気と緊張感が流れる。

呼吸を整え、───地面を蹴る。

そのまま勢いをつけて拳を握り締め、左正拳突きをする。だが瞬間、霊夢を捉えていた枝暮の視界は反転し、別の方向を向いていた。

──何があった?何が起きたんだ?

そう考える間もなく咄嗟に受け身をとって頭への強打を避け、起き上がって視線の先を見て霊夢を捉える。

即時脚に力を溜め、バネのように飛び込んで右回し蹴りを叩き込む。霊夢は右腕で防御し左フックでカウンター。脇腹を殴られて苦痛そうな顔に歪め、追撃で蹴り上げを食らう。

枝暮の視界が一瞬ブラックアウトしかけるが、歯を食いしばって脚を掴み、地面へと投げ飛ばす。

霊夢は体を捻って側転し着地。すかさず枝暮は走り出し、腕の力を込めて掌底打ちを繰り出す。

両腕を交差してその掌底を防御するが、衝撃の重さと威力で吹き飛ぶ。


霊夢(こいつ………昔から鍛えてる感じがするわね。体も頑丈だし切り替えも早い。我流とは言え、膂力(りょりょく)は人として申し分ないけど………まだ力が出しきれてないって所かしら)


両腕に残る痛みを確認し、枝暮の方を見る。

まだ痛みを覚えているのか少し苦痛そうにこちらを見据えており、防御の構えを取っている。

霊夢はそれを見てふぅ、と一息を付き、構えを解く。そんな行動に疑問を持ったのか、(いぶか)しげな表情になる。


霊夢「あんた、昔から誰かと取っ組み合いしてたの?」

枝暮「え?い、いきなり……?……まぁ、やってたっちゃあ……やってたね。俺、結構不良に絡まれて追いかけ回されたりしててさ……」

霊夢「ふ~ん………、所で枝暮、脇殴られてどんな気分?」

枝暮「へ?えーと……………痛い?」

霊夢「どのくらい?」

枝暮「う~ん……足の小指をタンスにぶつけた位?」

霊夢「それかなり痛いわよね」


霊夢は考える。例え自分が手加減しているとは言え、あの攻撃力と頑強さについてだ。

人の体は弱い。筋肉や体質等で変わってくるが、流石に自分の拳を受けて立ってられるほど頑丈なはずがない。


枝暮「………どしたの?」

霊夢「……いや、あんたって割とサンドバッグになれる(やたら頑丈)わねって」

枝暮「それ誉めてないし貶してますよ?」

霊夢「気にしない気にしない。さ、もう一回やるわよ」

枝暮「いっす」


霊夢はそう言っていきなり飛び出し、飛び蹴りを仕掛ける。枝暮は後ろに跳躍して拳を握り、足裏目掛けて突き出して威力を相殺。

枝暮は仕掛けるためもう片方の腕を伸ばし、掴みかかろうと近づき───

瞬間、霊夢の残っていた片方の脚が上に動き、枝暮の顎に直撃する形で蹴り上げる。枝暮の視界が再びブラックアウトしてよろめく。

その瞬間、霊夢はバク転して着地し、脚を上に上げて勢いよく枝暮の顔に落とす。

そしてその時の枝暮の視界に写ったのは、霊夢の靴の踵だった───



◆◇◆◇◆◇


霊夢「────という事で、大体あんたの基礎向上のために毎日やることをやっていくわよ」

枝暮「いちち………」


時間は午後五時。夕暮れ時の最中、二人は神社に向けて歩きながら今後の事について話していた。

霊夢は代々博麗に渡る修行法があるので、一旦それを使って様子見をすることにするらしい。

枝暮はどんなものなのかと想像し、顔を青くする。そんな枝暮に対して霊夢は「雑用もあるんだから、一日で出来る限りの修行法をやるわよ」とそう付け足して言う。

枝暮は安堵の息を漏らすが、頑張るしかないなと思うのみであった。


枝暮「………所で霊夢、ぶっちゃけて言うと、俺って弱い?」

霊夢「かなり手加減してあれくらいだから、後二、三ヶ月くらい修行を詰め込めば盗人(魔理沙)の魔法くらいには対抗できるでしょ」

枝暮「よく分からん基準を………」

霊夢「ほら、早く帰って飯の支度するわよ!」

枝暮「はいはい…」


そんな他愛もない話をしながら、枝暮はもっと強くなろうと心に誓ったのであった。



◆◇◆◇◆◇



??「───フフ、何だか明日が楽しみね。これも運命ってやつかしら?」


ある紅い館にて、深夜であるに関わらずバルコニーでその夜の風景を眺めている()()()()()()()()()()()()少女がいた。その後ろには銀髪のメイド服を着た少女がおり、座っている少女を眺めている。

少女は紅い双貌を輝かせ、血のように赤い()()()を口の中に注ぎ込むのであった。

枝暮「あ、今日の晩飯どうする?昨日買い溜めした食材である程度は作れるぞ」

霊夢「えっホント?!ん~………じゃ、味噌汁に焼き魚大根おろし付の!」

枝暮「お、少し豪華だな」

霊夢「次回、【お使いついでの紅魔館】!」

枝暮「紅魔館と言えばあの吸血鬼が……?」

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