『ファースト』ポーションケミカラー6
「ご、五百万!? シミズクってお金の単位? 大した金額だけど、これが何?」
「ちゃんと読んでみ。君が店に出した被害総額。耳を揃えて払ってください」
「……え? ちょっと待って。これ、払えって言うの? こ、こんなに高いの?」
そりゃ棚を倒してポーションはぐしゃぐしゃにしたし店内はボロボロになったけど、こんなに高いのか?
いたいけな中学生にはわからない金額だ。
「それでも随分減らした方よ。ホントはその倍はするんだけど、子ども相手に全額請求するのはカワイそうだったから」
「倍!? ただのポーションだろ? そんなに高価なのか?」
「倒した棚が悪かったね。あの店舗は希少なものから非合法なものまで扱ってる裏の店なの。若返りのポーションだったり、質量増加のポーションだったり、性別転換のポーションだったり」
「性別転換? なあテレ、」
「ちなみに性別転換ポーションは在庫すら残ってないからね。君が全部壊してくれたから。作るにも今は素材が無いし、何より完成までに二回も冬を越さなきゃならない。無い物ねだりはしないでね」
ならここに用はない。
「世話になったなテレサ! 恩は忘れないから離してぇ!」
「さすがに額が額だから今度から気を付けてね、で済ますわけにはいかないの。お金は持ってる?」
「持ってたら苦労なんかしてない……でも悪いこともしてない。本当だ」
「いい子ね。でも無いのなら……身体で払ってもらわないとね。身体で」
身体で払うって、臓器でも売れと言うのだろうか。
いや、もっと単純に俺の懸賞を使って払わせるとかじゃないのか。
だから五百万なんて切りのいい数字を出したんだ。
こいつも俺の懸賞金が目当てなんだ。
「クソォ! こうなったら実力行使だ! オラァー! ぐわー!」
拳を作って殴りかかろうとしたら後ろからガッチリ腕を極められる。
「君は本当に情緒が不安定だね。大丈夫。痛い思いは一切ない。合法的な返済をしてもらうからね。その若い身体を使って、ね♪」
何をしようって言うんだ。
ここからじゃ表情は見えないけどきっと邪悪な顔をしてるに違いない。
「やめろ……やめろ……! やめろー!」
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「いらっしゃいませお客様♪ ポーションショップ『ヴァルハライズ』へ♪」
「ん? 初めて見る顔だね」
「はい♪ 今日からこのお店でお世話になることになりました最果煉瓦です♪」
「そうかい。随分若くてかわいい子じゃないかテレサちゃん」
「ええ。とってもいい子なんでかわいがってあげてください」
「ははは。それではこれを。今日は娘の誕生日なんでね。いいポーションを買おう」
「娘さん想いなお父様なんですね♪ 煉瓦尊敬しちゃいます♪」
「ありがとう。君も頑張ってね。そのエプロンドレス、よく似合ってるよ」
「はい♪ ご来店ありがとうございましたー………………やってられっかぁ!」
オシャレなハットを床にぺしゃり。
俺はフリフリのエプロンドレスを着て接客をさせられていた。
あぁ……生き地獄。




