『エイス』ミシカルモンスターズ17
「もうやめて下さいテレサ!」
「俺たちは……こんなお前を見たくない!」
俺たちは胸の内を吐き出しながらテレサに抱きついた。
飛びついた勢いで俺たち三人はヘカティオンの肩から落ちていった。
だけどこの手は離さない、落ちようとも俺たちは決しテレサを手放したりなんかしない。
俺は腰にしがみ付いた手に力を入れると、テレサの左手が抱き返してきた。
落ちる最中にヘカティオンがジッパーを破壊して完全にその体を現界していた。
金切り音が咆哮のように響き渡り、八本のアームどころではない千手観音を想起させるようなおびただしい数のアームを展開し、その一本一本を来賓たちに向かわせる。
そう、アームが皆を捕らえようとすると同時に俺たちは地面に落ち、ヘカティオンは呼応するように、まるで地面に叩き落とされたガラスのように砕け散り、消滅した。
「ヘカティオンが……よかったぁうおっ。テレサ?」
「ごめん……ごめんねレン、アニーチカ……二人に、危険な思いをさせて、こんなにボロボロになってまで……私が間違ってた。ごめんね。もう二度とどこにもいかないからね……!」
横になった状態で抱き締めてくるその手はとても強く優しく、目いっぱい涙をにじませているテレサは弱々しかった。
いつものテレサだ……テレサが戻ってきた。
「謝らないで下さい。僕は……途中で……投げだしそうになって……ウッ、ぐすっ……! テレサァ! いきなりいなくなるなんてやめて下さいよ! バカー!」
アニーチカも負けず劣らず涙を浮かべてテレサに思いきり抱きつく。
今まだ溜まっていた鬱憤とかが一気に噴き出したのだろう。
「ふぅ……ん? 何だよハゲタカ」
「レンさん……君はどこまで」
「んだよ。こんなことになってもまだやろうってのか。そういやアニーチカを殺すって言ってたよな。だったらこのままやり合うか? 決着はまだついてなかったよな」
立ち上がり、俺は泣きじゃくるアニーチカとそれを抱いて座るテレサの前で構える。
微妙な表情でハゲタカは睨み付けてきたけど、その横を通って魔王が俺の背中をバチーンと叩いた。
「いってぇ! 何すんだよ!」
「よくやった煉瓦少年。わりぃなニブルヘイム。たった今より俺様はこいつらの味方になる」
魔王は俺の前に立つ。
「煉瓦少年。貴様はやったことを誇りに思え。成り行きとは言えテスタロッサ家に反和平組織の手が及ばないように諸悪の芽を摘み、何より暴走した機械天使を止めた。貴様の勇猛なる決定の意思がこの世界を機械天使の脅威から救ったんだ。魔王の名をもって最果煉瓦を英雄と讃えよう!」
魔王は声高々に宣言する。
人間にも魔族にも俺の存在を知らしめるように、俺の功績を褒め称えた。
「いや、やったこと自体はほめられたことじゃイタッ」
なんだ……急に角の部分に痛みがイタタタタタタタタタタタタタ。
「ぐる、ギャがあああああああああ!? 何だこれ!? ごぽぐるふぁらあああああ!?」
頭が内から膨張しているような、今一度コンクリートを外から無理やり詰め込まれているような度し難い痛みが頭を起点に全身をめぐる。
この痛み……バーサクポーションの副作用なのか。
リバイバルポーションの再生も追いつかないほど痛みが湧いてくる。
「ガギャがああああああああああああああ!? ヴぁっ!?」




