『セブンス』アンノウンウォッチャー
「レンッ! レンッッ! 行かないで! 僕を一人にしないで! 置いてかないでッ!」
一人取り残された僕は必死に扉を叩き続けた。
身を割くような悲しみをぶつけるように、どれだけ手が痛もうとも叩くことを止めない。
「何で、何でア・フルンが発動しない! 何でこんな扉を破壊できない!」
拳に力を籠め、ア・フルンを呼び出そうとしても全く応えてくれない。
まるで体の中から大人一人分の体重が抜け落ちたかのようにすら感じる。
その無力感は体中を駆け巡り、僕は膝から落ちる。
「何で……何で!」
「そりゃ心が折れちまってるからだ。ここから出たいか」
何もないはずの背後から誰かが答えた。
僕はゆっくりと振り返る。
そこにいるのはつば付きのキャップをかぶりポンチョを纏った一人の男の人。
見覚えがある……確か、
「アナタ……シンゴロウさんと別れた、あの時の」
そう、シンゴロウさんとの闘いの翌日に見送った際に視界の端に映った男の人だ。
「煉瓦少年は破綻者だが強くはない。速攻でやられるのがオチだ。奴が本当の強さを手に入れるためには貴様の強靭さが必要不可欠」
男の人は僕を指さしてそう言った。
「僕の……強靭さ?」
「あいつはスタン・トの真価を理解している。あとは貴様がどうしたいかだ。煉瓦少年は先に異世界の洗礼を受け入れた。貴様はどうする、アニーシャ嬢」
嬢って、僕のことを女だと理解しているのか。
言っては何だけど初見では絶対男に間違われるはずなのに。
「アナタは……いったい」
「俺様はニブルヘイム。貴様たちが倒すべき魔王だ」




