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シャッフルハード  作者: 成神全吾
邂逅編
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『ファースト』ポーションケミカラー4

 ‐スタン・トワープ‐


 景色が一転し、眼前にいたお姉さんの背中が目に飛び込む。

 何で発動したかは知らないが、とにかくこのチャンスに俺は奥の通路へと走った……んだけど前に進まない。

 お姉さんはまだ棚の影の前にいるのに、何かに腰を掴まれている感触がある。


「この……離せ!」

「逃げないでよ。別に獲って食おうなんて思ってないから。ほら、離したよ」

「くっそー! 俺も捕まるわけにはいかないんだ! 女性に手を上げる趣味はないけど、少しおねんねしてもらうぜ! オラァー!」


 俺は思いっきりお姉さんに殴りにかかる、があっさり止められる。


「何言ってんだかこの子は」

「クソッ、やるな! だけどこう見えて昔はワルだった! 俺の本領発揮はここからイタタタタ! イタァい!?」


 握られた拳にとんでもない激痛が走る。

 このお姉さんとんでもない握力だ。


「落ち着きなさい。鼻息を荒くしないで。呼吸を整えて」

「くぉお! 暴力なんかに屈する最果煉瓦じゃない! たとえへし折られても屈服なんかするもんかァあ……!」

「えぇ……何この子。しょうがない。よっと」


 引っ張られて、俺はお姉さんに背中を向ける形になったかと思えば次の瞬間、景色は石造りの天井に変わった。


「何で寝てるんだ?」


 なんか首筋が痛いし頭もグワングワンする……とりあえず寝てよう。

 フカフカの布団は天国へのいざないだ。


「起きたんだ。大丈夫?」

「ほわあぁあ!?」


 突然お姉さんが部屋に入ってきて、俺は跳ね起き、部屋の隅へと逃げる。


「大丈夫よ。チチチチ。君を傷つけようなんて思ってないから」

「嘘つけ! お前も俺の懸賞が目当てなんだろ! 捕まってたまるか! オラァー!」

「ちょっと、棒を振り回さないで。わかった。私は何をしたらいいの? どうしたら君の信用を得ることができるの?」


 手をひらひらとしてくるお姉さん。

 どうすればって言われても……俺はとりあえず棒をポイする。

 今思うとこの人は俺をベッドに寝かせてくれていたんだし、少しくらい友好的になってもいいかもしれない。


「お、心開いてくれた。お話する気になったの。サイハテ・レンガちゃん」

「何で俺の名前知ってんだ?」

「自分で名乗ってたじゃん。女の子にしてはちょっとカッコ良すぎる名前だけどね」

「ぐ、俺は女じゃない。俺は男だ。ダンディズム溢れる男なんだー!」

「は? だってそのおっきなおっぱい……えいっ」

「うわぁっ! やめろよ! 胸触んな!」


 反射的に胸を手で覆い隠す。


「触ってみても本物のおっぱいなんだけど」

「お、おぉお男の胸が偽物とでもいうのか! とにかく男なんだよ!」

「……じゃあこっちは」

「股間に手を伸ばすな!」


 このお姉さん、初対面で股間を触ろうとしてくるなんて相当の変態だ。


「君の名前だけ知ってるのも不公平ね。私はテレズス・テスタルーサ。この街でポーションショップを営んでるの。テレサって呼んで。よろしく」


 手を差し出されたので一応握手。


「んん~。若い肌っていいよねぇ。ぴちぴちしてて……ぐへへぇ」


 俺の手を凄いニギニギしてくる。

 笑い方といい、ぱっと見で危険な人だってわかって怖い。


「ところで君は、異世界人でいいの? 本当に魔王を討伐しに来たの?」

「はい、一応。そうだ! テレサ……さん」

「テレサでいいよ。敬語も使わないでね。なんかくすぐったいから」

「あ、そう。ならテレサ。実は俺」


 一応同意はしたけど俺は無理やり送り出されたこと、女ではなく元は男だったことなど事の顛末を話した。

 寂しかったのか、頼れる大人に甘えるようにすべてを吐き出していた。


「じゃあ魔王を倒す気はないってこと?」

「いや、魔王は倒す。それが目的だし、魔王は敵だろ? 人間を苦しめる悪いやつだ!」

「魔王を倒したら世界が消滅するってホント? 正直信憑性ないんだけど」

「あ、これは口にしちゃダメなんだったんだ……でも俺は死神にそう聞かされた」

「だって魔王って一回殺されてるのよ」


 今……俺の目的の根本的な物を覆された気がした。


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