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シャッフルハード  作者: 成神全吾
娯楽祭編
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『フィフス』ウインドガードナー11

「ハゲタカッ! 大丈夫なんですか!?」

「貴様っ、何で動ける!?」

「レンさんにゲン・ゲンを真っ向から破られたショックで拘束が解けたみたいだ。後は私に任せてください」


 掴んだ弾丸を捨て、ハゲタカはゆっくりとアメッカスに歩み寄る。


「どうした? さっきまでの饒舌さはどこに行った? また透過の魔術を使うか?」

「ぐぅっ……! まさか、まさかまさかぁ!」


 あがくように、逃げる様子もなく苦し紛れに無作為に何回も発砲するが全て受け止められる。

 なんで逃げないんだと思ったけど、風紀取り締まり係の隊長と真っ向面からやり合うのは得策ではないと言ってたし、逃げられないとわかっているから逃げないのか、異世界人の意地から逃げたくないのか。


「近寄るな! こ、こんなところで俺の三十年が……! このぉごえっ!?」


 ハゲタカがアメッカスの口を鷲掴んでは持ち上げる。


「口を塞いでしまえばゲン・ゲンは使えない。貴様の敗因は私をすぐ始末しなかったこと。少女と思ってこの子を舐めたこと。そしてゲン・ゲンを使えると驕ったこと。貴様は前時代の遺物。ただのテロリストだ」


 ハゲタカは手に持った剣をアメッカスに突き立てる。

 何の躊躇もなく、剣は体を貫通し、アメッカスは力なく倒れる。


「こ、殺したの?」

「死んではいないです。これ、パラドクスポーション。その怪我を治してください」


 これまた高価なものを持っている。

 だけど肩をぶち抜かれたし、ありがたく頂戴しよう。


「痛かったので助かりました。あ、そいつの顔面に一発叩き込みたいんですけどいいで、」


 俺の言葉を切り裂くようにハゲタカは俺に剣先を向けてくる。


「あの……俺何かしました?」

「ゲン・ゲンで動きは封じられていたけど話は聞こえてはいたんです。改めてお聞きします。君は異世界人ですか?」


 心臓の音が一つ跳ね上がる。

 下水道での会話で確かにぼろが出そうなところはあったし、疑いの目を向けられているのは重々承知していたけど、さっきの戦いで確信を得てしまったのか。

 一瞬が何十秒にも感じられたけど、俺はすぐに答えた。


「違います。異世界人じゃないです」

「その言葉、自分自身に誓えますか」


 ハゲタカは風紀取り締まり係である以上異世界人の存在を許す気はないだろう。

 本当のことを言ってしまえばきっとアメッカスのように剣を突き立てられる。

 仮にスタン・トで逃げられたとしてもアメッカスのように追われる立場になるかもしれない。


「……まあいいでしょう。大事なのはそのことじゃない」


 ハゲタカは剣を納める。


「ムラはあれどゲン・ゲンを真っ向から破る人知を超えた驚異の精神力。肩を撃ち抜かれようとも決してひるまない不退転の意思。身体能力も申し分ない。君を風紀取り締まり係にスカウトします。私の師事のもと、世界のためにその力を役立てませんか?」


 今度は手を差し伸べてくる。

 風紀取り締まり係のスカウトってことは俺を弟子にしようってことか。

 俺の力を認めてくれてる辺りちょっとだけうれしい気もする。

 だけどスカウトの裏の魂胆、以前テレサが言っていた和平協定が結ばれた際異世界人を迎合した話。

 もしかしたら俺をスカウトすることで管理しようと考えているのかもしれない。


「……すみません。お断りします」

「……祭りはあと一日あります。明日また、その考えが変わっていないか店に伺います。今日は君に助けられました。ありがとうございます」


 アメッカスを抱え、ハゲタカが歩きだしたので俺もそれに着いて行く。

 その背中、担がれたアメッカスを見て思った。

 これがこの世界を破壊するために何十年も走り続けた異世界人の末路なんだと。

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