『ファースト』ポーションケミカラー2
「ご飯を奢ってくれたことには感謝してる。けどそれとこれとは話が別だ!」
「自意識過剰だね君。誤解だよ。せっかくこうして知り合えたんだからもっとお話をしたいってだけで、」
「ひぃい! その殺し文句で鳥肌が! 俺はやることあるから、さよならー!」
「君は異世界人だろ」
俺は足を止め、振り返る。
異世界から来たってわかるのか。
確か死神の話だと三桁以上の人が挑戦しているとは言っていたけど。
「どうしたらいいかわからないんだろう? ついてきなよ」
もしかしてコレ、ゲームで言うイベントってやつでどこかでフラグが成立したのか。
他に当てがない以上、着いて行く以外に無い。
俺は手招きされるがままに着いて行き、人通りを抜けて次第に人の足音が聞こえなくなり、気が付けば裏路地ともいえる場所を歩いていた。
「つまり、君は元々男でこっちに来る際に女にされたと」
「そーなんですよ! クソ死神のすっとこどっこいのこんこんちきのせいでこんな体になったんです。ホントにあのヒョーロク玉は本当……あの、何で俺の後ろにいるんですか?」
「いいからいいから」
歩いている場所は建物の影もあって街のアンダーグラウンド的な場所を歩いている気分だった。
「何でこんな人気のないところに来なくちゃいけないんですか?」
「異世界人は基本的に招かれざるものなんだ。それこそ国が多額の懸賞金をかけているほどにね。生け捕りで五百万シミズク。死んでいても三百万シミズク。だから異世界人は常に狙われる存在なんだよ」
同時に力強いバックステップで地面を叩く。
たった一歩で間合いを一気に詰め、勢いのままにお兄さんの鳩尾に肘鉄をくらわす。
肺の空気が吐き出ただろう、身体がくの字に曲がっただろう。
俺は踏み込んだ左足を軸にコマ回転し、下った顎に拳を下から叩きこむ。
お兄さんの体は大きく仰け反り、俺は手をそのまま伸ばし、額を鷲掴んでは後頭部を地面に叩きつける。
それを何度も何度も繰り返し、お兄さんは動かなくなった。
その手にはナイフが握られていた。
「あっぶねっ! お兄さん、懸賞金が目当てだったんだな! 信じた俺がバカだったよ! ペッ!」
刺される前に気付けて良かった……刃物相手に心臓バクバクだけど、グッジョブ俺。
だけどこう言う奴には……、
「うわぁやられてるじゃないか」
「幼き少女だからとて異世界人をナメるからだ」
十中八九仲間がいる。
奥からは斧を持ってる大男、後ろからは弓を持ったもやし野郎が登場。
こいつら、さっき言ってた懸賞金が目的なんだ。
「にしてもうまそうな娘だなぁ。お手付きってのは」
「ダメだ。仲間を傷つけられた仕返しはもっともだが生け捕りが大事だ」
何とも悪そうな会話だけど、どうするか。
喧嘩はよくしていたけど流石にこの状況を経験したことは無い。
どうやって切り抜ければいい。
刃物向けてくる奴と喧嘩したことはあるけど……そうだ。
「お前ら随分と仲間想いみたいだな。よほどこいつを心配しているように見える。なぁー!?」
倒れているお兄さんを足蹴にする。
「こいつ、気絶してるやつの顔を踏みやがった! なんて非道なんだ!」
「やはり異世界人。人間の所業じゃない」
どの口が言うかと言いたい。
俺は首根っこを掴み、お兄さんを持ち上げる。
「な、何をするつもりだ」
「仲間想いだからこそ矢を射るなんて無理だろう、なぁー!」
そう、『仲間想いは出来の良い盾作戦』を決行し、そしてそのまま弓男に突っ込み、逃げられるよりも早く一緒に倒れる。
俺はいち早く体勢を立て直し、下敷きになっている弓男の顔を何度も何度も、動かなくなるまで容赦なく踏みつける。
よし、斧男とは距離があるからあとは元来た道を戻って逃げるだけだ。
逃げ足なら自信がある……ん?
「オイオイオイ」「やられてるじゃないか」「マイファミリー!」
戻って来た道から剣を持った男が三人現れた。
まだ仲間いたのか。
「ちょ、嘘ォッ!?」
さすがに三人相手に真正面から逃げることはできないし、後ろには明らかにプロテイン過剰摂取の斧男がいる。
ヤバい……逃げ道が無い。




