『フィフス』ウインドガードナー9
ブルーステラウェイの下水道なんて初めて来た。
ブロックごとの地下に街の水質を管理するための下水道があるのは知っていた。
行き届いた管理とこの地方の特殊な水質により下水に到達した時点でかなり洗浄されるため思っていたよりは匂わない。
風紀取り締まり係の何人かと突入したけど分かれ道にぶち当たっては二手に分かれるを繰り返して、気付けばハゲタカと二人になっていた。
「アメッカスってどんな奴なんですか?」
「どんな奴って……反和平組織の鉄砲玉。三十年前にこの世界に来た人魔戦争時代末期の英雄です」
「へぇー、英雄」
「……フォノクンは異世界人特有の能力を用いて多くの魔族を屠ってきました。性質は『命令』で名は『ゲン・ゲン』。前魔王が使っていた強制命令を強いることのできるコンフュ魔法『我業の現言』と同系統の能力を使います。しかし妙ですね。やろうと思えば街の住人全てを操り人形にできるはずなのになぜこんな目立たないように行動しているのか」
「はえー。アメッカスってすごいやつなんですね」
「……フォノクンは戦争のこともあってこの世界の常識的な存在なんですが。何で君は初めて知ったみたいなもの言い何ですかねぇ」
「ドッキーン! あの……俺ッ! この街に来る前はスンゲーど田舎に住んでて……! 一般常識に疎いところがあるんですぅ! アハハハ」
愛想笑いでごまかしながら歩いていると突然ハゲタカは俺の前に手を出し何かを掴んだ。
「ビンゴ。この先にフォノクンがいる。まさか逃げずに攻撃してくるとは」
「何を掴んだんですか?」
「これは弾丸、ピストルです。戦争中期に投入する予定でしたが製造方法を知る異世界人が殺されたせいで大量生産する前に闇に葬られました。しかし最近になって反和平組織が独自の製造方法を見出したとか」
ハゲタカは俺を背負う。
「一瞬で終わらせますからその眼にしっかりと仇を焼き付けることですね」
ハゲタカは走り出し、俺は必死に首にしがみ付いた。
時折何かを掴んでは捨てるを繰り返し、ある地点で立ち止まった。
「ここ辺りのはず、」
突然ハゲタカの顔面が横に薙ぐが倒れはせず、俺を水路に放り投げる。
「ごぼあっ! 何するんですかハゲタカ! ハゲタカ?」
ハゲタカは剣を引き抜いた姿のまま固まっていた。
まるで時間を止められたかのように。
「ハゲタカ相手に真正面からぶつかろうなんて考えは持たないさぁ。大物を……仕留めることができたぁ」
何もない空間からカーテンをまくるように髭を生やした不格好な男が現れる。
あいつが、アメッカス・ンゴゥャル・フォノクン。
アニーチカ以外で初めて見る正真正銘、この世界を破壊するための活動をしている異世界人。




