『サード』インディペンデンスリーパー8
「お見送り感謝でござる」
翌朝の正門前。
俺たちヴァルハライズクラークスは今日をもってブルーステラウェイから旅立つシンゴロウを見送りに来ていた。
テレサは露骨に邪険な顔をしているが。
「買い取ったポーションの販売と宣伝、お願いしますね」
「任せるでござるアニーチカ殿。色々な人に紹介するでござるよ」
シンゴロウはアニーチカの計らいでヴァルハライズの一員、もとい出張宣伝員として背中に剣の代わりに店のロゴを背負うようになった。
「本当は嫌なんだけどね。何で私の天使を傷つけた奴を雇わなきゃいけないのよ」
「ありがとうでござるテレサ殿。頂いたバッグ。全く重さを感じないでござるよ」
肩にかけたバッグはスライムの洞窟にもっていったものと同じであり、デメンジッパーを応用した超量収容袋の『ジャングルバック』と呼ばれる代物らしい。
簡単に言えば有限の四次元ポケットであの中に剣や買い取ってもらったポーションを全て詰め込んである。
「売れたポーションの代金の半分はアンタの手取りだから。それ以外は全部バッグに突っ込んでね。欠品はバッグにメモを入れてくれたらこっちで補充しとくから」
何よりジャングルバッグはデメンジッパーに繋がっているから補充もらくちん。
と言うか街中のポーションの補充は基本デメンジッパーを使っているとか。
「うむ。何から何までかたじけない。アニーチカ殿。剣を振るって悪かったでござる」
「気にしてないことは無いけど、今度からあんなことしちゃダメですよ」
「うむ。テレサ殿。拙者はこれからも街破りをしていく。最終目標は魔王だが、その前にテレサ殿からだ。いつか戻ってきた時、もう一度手合わせしてくだされ」
「嫌」
と言うより方向音痴のシンゴロウがここに戻ってこられることはあるのだろうか。
「そしてレン殿。魔王討伐もいいが君はもっと女の子らしく可憐に振る舞うでござるよ」
「ごめんだね。じゃあな……シンゴ」
大手を振って一本道を歩んでいくシンゴを見送り、俺たちは店に戻るために歩きはじめる。
「でもいいよなー旅って。俺もそのうち魔王討伐のために旅に出なくちゃだしなー」
「いや、君に魔王討伐は無理だよ。アニーチカはもとより、今回で君に魔王討伐が無理だってことは重々理解したから」
まるで俺のことを分かっていますよみたいな言い方にちょっとだけムッとする。
異世界に来た理由が魔王討伐である以上、必ず完遂してみせるさ。
「……ん?」
「どうしたアニーチカ?」
「いえ、今誰かがこちらを見ていたような気がして」
周りを見回すけど、特にこれと言った怪しい影もないし、ただの見間違いと勘違いだろう。
「さぁ、店の在庫はほとんどなくなっちゃったし、今日からポーションをガンガン鋳造しないとね。色んな意味で忙しくなるよー。気合入れてね。二人とも」
「「はーい」」




