『セカンド』ドリフターチルドレン8
「俺……昨日の夜中々寝付けなかったんだ」
「奇遇ですね。僕もですよ」
街の正門の真ん前を潜った先は地平線が見えるほどの一本道と所々に点在する雑木林が見える。
異世界に来て一週間が経ち、初めて街の外に出ると同時に俺の感情は高ぶっていた。
「何よ二人とも。今日は随分とごきげんね。そんなに新しい服が気に入った?」
「確かに服は冒険用に新調して多少なりともごきげんではある。ちょっとかわいい系なのが玉に瑕って言うよりかなりの欠点だけどな」
「あの、何で僕の服は真っ黒なんですか? なんで反骨精神丸出しなコーデなんですか?」
「返り血浴びても目立たないしいいじゃん、黒」
「浴びたくないです」
遠出もといダンジョンに潜る用の服をそれ専用の店で買ってもらい、さらに今まで無造作だった長い髪の毛も御団子に結びやる気満々だ。
「服なんてどうでもいいじゃん。大事なのは今からダンジョンに潜ることだ。異世界に来たらやっぱダンジョンだろ!」
「ですよね! 未知のお宝!」
「困難を極める道のり!」
「そして襲い掛かるモンスター! それこそ!」
「「異世界ラーイフ!」」
なんだかんだ文句を言いながらもこんな中途半端なゲームのファンタジーな世界に来た以上ダンジョンに潜らない手はない。
「言っとくけど今から向かうダンジョンは凶暴な動物や魔物はいないし、お宝もない。足元が少し滑りやすいぐらいで困難な道のりなんてのもないよ」
「そうなんですか。がっかり」
「と言うことは初心者向けのダンジョンってとこか」
素材を集めるだけの簡単なダンジョン……異世界ビギナーの俺にとってとっつきやすいダンジョンというわけだ。
「ダンジョンはどこにあるんですか?」
「この道をまっすぐニ十キロ進んだ脇にあるヴィヴィロスの雑木林の中にある洞窟だよ」
「ニ十キロ? 結構距離あるな。歩いたら相当かかるぞ。走ってくのか?」
「いや、馬車とかあるでしょ? 走るなんて嫌ですよ」
「大丈夫よ。ちゃんと移動手段はあるから」
テレサはバッグから小さな笛を取り出し、軽く吹く。
何かを呼び寄せるのかと周りを見渡してみると道の果てから超速の勢いで巨大な車のようなものが向かってきた。
慣性の法則を無視と言わんばかりに急ブレーキをしたそれ。
ボックスカーほどの大きさで羽毛に覆われた、力強い四脚の獣の体に鋭い嘴を持つ鳥の顔のそれ。
そのまんま、グリフォンだった。
「久しぶりピュール。ちょっと、ぺろぺろしないで。ねめねめするからやめて」
「人懐っこくてカワイー。ちょっと俺にももふらせて、」
触ろうとした瞬間に翼を広げて甲高い声を上げて威嚇してきた。
「怖いなこの鳥、おっそろしい」
「ハハッ。吠えられてますね。まあ僕なら触らせてくれる、」
「ピュゥウウウウウウ――――ウイ!」
「うわぁああああああああああ!?」
思いっきり威嚇されてアニーチカは俺の後ろに隠れる。
「ここっ、こいつは危ないやつです!」
「なっさけないなお前。テレサ。そいつにすっごい嫌がられんだけど、どうすんの?」
「これをあげて。ピュールはこの豆を食べさせてもらった人にしか懐かないの」
「豆って、でっかいな。拳大はあるぞ。えっと……チチチ。ほら、豆くえー」
グリフォンの前に恐る恐る豆を差し出すと大きな嘴で抓んで丸呑みにし、甘えてくるように俺に顔を摺り寄せてきた。
もふもふしてかわいいな。
「僕も豆ください! はい食べてくださいピュールさん! うわぁ凄いもふもふです」
アニーチカもご満悦の様子。
「ようし二人とも。この子の背中に乗って。かっ飛んでいくわよ」
グリフォンの背中に乗るテレサの前にアニーチカ、その前に俺と背の順で乗り込む。
「グリフォンの背中に乗って空を飛ぶかぁ。こんな経験死ななきゃできなかっただろうなぁって胸を揉んでくるの誰だよ! やめろよ!」
「ちなみにこの子、空は飛べないから」
「え? こんな立派な羽があるのにですか?」
次の瞬間にたった一歩で最高速に達し、俺の体は強烈な重力に押しつぶされそうになりながら、一気に駆け出した。




