『セカンド』ドリフターチルドレン4
「よぉし。ここまで来たらもう安心だ」
「ここ……アナタの部屋ですか? 随分と散らかってますね。片付けないとだめですよ」
散らかっているのは事実だけど俺の部屋に来て早々何て言い草だ。
とりあえず俺はアニーシャを引き連れて自室に戻った。
この部屋は元々テレサの物置兼書類倉庫兼書庫として使っていた部屋を俺の部屋として今改装中なのでいろいろと取っ散らかっている。
「ここはポーションショップなんだよ。俺も新人の身でな。この部屋にあるポーション薬学の本読んで勉強して店に貢献しろって言われてんだよ」
「へぇー。つまりポーションを作る人の卵ってことですか?」
「まあそんなとこだ」
ただし、俺にはちょっとした野望がある。
「お前は今日から俺の部屋で生活する。分かったな?」
「……え? アナタの部屋で今後どうするかを話し合うんじゃないんですか?」
「どうせ話し合ったところで解決案なんか出ないに決まってる」
だったら最低限、屋根のある家を提供する。
衣食足りずは何とかするとして、住に関してはこれで解決だ。
「いや、いいんですか? えっと、アナタはこの家の主なのですか?」
「いんや。でも黙ってれば平気平気。お前は俺が世話してやるから安心しろ」
「僕は拾われた犬ですか。その計画、最初から破綻しているように思えるんですけど」
破綻してようがしていまいが関係ない。
正直面倒見るとか言っといてこれくらいしか案が出せない自分の力量のなさにはほとほと呆れるものはあるけど、一度吐いた言葉を飲み込むつもりは無い。
最低限こいつの次の宿が決まるまではこの部屋に置いておく、それが義理ってもんだ。
「いいかアニーシャ! 大船に乗ったつもりで俺に頼れ、」
『レーン。帰ってきてるの?』
唐突なテレサの声に俺の体が跳ね上がる。
今アニーシャのことを知られるのはマズイ。
「アニーシャ! 隠れろ!」
「か、隠れろって。そんな場所どこにも……」
「ここだ! クローゼットに隠れろ! ちょっと狭いかもしれないけど!」
「無理無理無理! 狭いです!」
分厚い防寒着のせいでクローゼットの扉がどうしても締まらない。
「ちょ、痛いです! 無理です! 入りませんって!」
「だーっ! だったらそこら辺に隠れろ! とにかく隠れるんだー!」
『入るよー』
ゆっくりと開けられる扉に俺は飛びつき、隙間から外を見る形になった。
「な、何だいテレサ? 何か用?」
「帰ってきたんなら一声かけなさいよ。どうしたの、息切らせて」
「走って帰ってきたんだ! 汗かいて大変で大変で」
今見られるのはマズイ。
口に出さずとも俺は必死に目でテレサに入らないでほしいと訴えかける。
「君、もしかして……見られたくない何かが部屋にあるの?」
「ドッキーン! ななな、無いよ☆ 無いからテレサは店に戻っていいよ。ね☆」
「今日はもう閉めたよ。それより、部屋を見せてよ」
テレサが向けてくるこの視線……俺を疑っていやがる。
秘密を暴くためなら服だってひん剥いてやると意気込む悪漢のような目だ。
「えとえと……そうだ。俺今下半身丸出しなんだよ! 秘部を見られたくないから一回扉を閉めるんだ!」
「走って帰ってきて、汗かいたから着替えてる途中ってこと?」
「そ、そうだよ! 汗がぐっちょんぐっちょんでもうぶるぬっぱじゅばじゅばで最悪って感じ! だから閉めて! お願いだから扉を閉めて! お願い!」
「ふんっ」
苦し紛れの言い訳を看破するように扉が開かれる。
「普通にズボン履いてるね。何で……嘘をついたの?」
「……テレサお姉ちゃんが大好きだからつい悪戯しちゃうんだ☆ だから、」
「何で……嘘ついたの?」
繰り返しの威圧感。
ぶりっ子振りまいても乗ってこないし、かなりマジな態度を取ってくる。




