動き出した運命
焼き鳥食べたい^^/
「ボォォォォォ!」
午前零時、突然廃駅に大きな汽笛が鳴り響いた。汽笛の聞こえてきた方を見ると、轟音を立てながら巨大な汽車がこちらへ向かってきた。
「「え.....」」
そのあまりの光景に驚きを隠せなかった。いやいや、あれはないだろ!幻影列車というくらいだから、やっぱり銀河鉄道っぽい感じかと思っていた。しかし、目の前にあるのは汽車とは言えないほど巨大でゴツイものだった。しかも、とても長い。何両編成なんだろうか......
「なんか、本当に来ちまったな......しかも、なんかすごいでかいぞ...どうする祐?」
どうするって言われても一体どうすればいいのか。すると幻影列車はゆっくりとホームに止まった。そして各車両の端にあるドアが開いた。中は、不気味な光が揺らいでいる。まるで、乗れと言っているようだ。
「二人ともどうする、せかっくだし乗らないか?」
さすがにこの列車を見たら、このまま引き返すっていうのは無理だろう。やはり二人とも、首を縦に振った。俺は自分の一番近くにあるドアから車内に入った。
「もしもし、私ですが。彼らが幻影列車に乗りました。」
真っ暗な部屋の中、私は部下からの報告を聞いていた。どうやら彼らは幻影列車に、いや世界に選ばれたようだ。これでまた私の計画に一つ近づいた。彼らは非常に大事な駒だ。これからこちらの思い通りに動いてもらわなければ。
「このまま彼らを追ったほうがよろしいでしょうか?」
「いや、その必要はない。ただ彼らの監視は継続しろ。」
「了解しました。」
下手に追って怪しまれることは避けたい。特に幻影列車にはあの男もいることだしな...次の瞬間、ズキッと右頬に痛みが走った。忘れるはずがない、あの男に付けられた屈辱の傷。次に会ったときは、どうしてやろうか....ただ今はそれよりも計画の方が大事だ。ただ、破滅にあの男は邪魔だ。早いうちに始末しておかなければ......
「「広!!!」」
幻影列車の中は予想以上の広さだった。俺達が入ったところは、広間のようなところだった。とてつもなく広いのだが、人の気配が一切しない。
「ねぇ、だれかいないのかな?」
優衣が不安そうに言った。すると、俺たちが入ってきたドアがゆっくりと閉じた。
「まさか.....」
「ボォォォォォォォォ」
幻影列車は再び轟音を上げながら進みだした。
「おいおい、どうすんだよ。これじゃ帰れないだろ。」
「とにかく、まず俺らのほかに乗っている人がいないか探しにいこう。」
まずは、人を見つけることが一番だ。ということで適当に幻影列車の中を探索することにした。今いた広間の奥の扉を開けると、その先は客席のようなものが続いていた。改めて思うがこの列車、ありえないくらい大きい。一体どうなってんだと思い窓を見ると、
「「は?」」
その窓に映っていたのは、さっきまでいた駅の近くの風景でもなく、学園の近くの風景でもなく、怪しげに光り輝く広大な空間が映っていた。一体なんなんだ........
「どう考えても、ここは地球じゃないな......」
慶が唖然としている。俺らは帰ることができるのだろうか。客室の廊下を抜けると、再び大きな広間があった。さっきの広間とは違いソファーなどがたくさん置いてあり、パーティーでもできそうなところだった。そして、天井には巨大なシャンデリアがぶら下がっていた。しかし、俺らの目はある一点に集まっていた。広間の奥の方にある黒いソファーに一人の男が座っていた。
「よく来たな、ガキども。」
その男は、おそらく50代くらいであろう。髪は、ぼさぼさで、ボロボロの紺色のジャケットを羽織っていて、下はまたもやボロボロのジーンズを履いていた。一見するとボロイ服きた爺さんだが、その男からはなたれている気というものはすさまじかった。この人は、どう考えてもただ者じゃない。
「向こうで、女王がお待ちだ。ついてこい。」
そう言って、男は奥に歩いて行ったので慌てて着いていった。その先には長い廊下が広がっていた。よく見ると壁などに穴が開いている。おそらくここから槍とかが飛び出す仕掛けだろう。結構厳重だな。
「すみません、あなたはどなたなんでしょうか?」
優衣が恐る恐る聞いた。すると男は、
「俺は本当の名ははるか昔に捨てた。ただ、今の名はレウスという。お前たちは聞きたいことがたくさんあるだろうと思うがもうすぐ女王のところにつく。聞きたいことは、アイツに聞け。」
と答えた。なるほどな、大体のことは分かった。しかし、
「女王って一体誰なんですか?」
「この列車を作ったやつで、この列車の主だ。お前らについては俺よりもアイツの方が詳しいはずだ。」
この列車を作った人!!その女王に会えば帰る方法も聞けるだろう。ふぅなんとかなりそうだな。
「あれ?」
慶が前を見ながら不思議そうに言った。見てみるとそこは行き止まりだった。おいおい、レウスさん。道間違えてるよ!!と思ったのが分かったのか、
「この壁は横にあるボタンを押せば開くんだ。」
と言って壁の横にある絵の額の一部を押した。すると、ゴゴゴゴゴッと言う音を立てて、壁が扉のように開いた。その先にあったのは会議室のような部屋だった。広い部屋には大きな円形のテーブルが一つありその周りに椅子が9席あった。しかしそのほとんどが空席であった。そして右奥の席に一人の少女が座っていた。年は俺らより少し下っぽかった。少女は大部分が黒で所々金色の刺繍があるローブを着ていた。髪は美しい銀色で目はすべてを飲み込むような蒼色だった。そして彼女は俺らに向かってこう言った。
「ようこそ、幻影列車へ」