走る人
蝉の鳴く暑い夏のある日、あるテレビ局のある番組では毎年、二十四時間、人が百キロ近い距離を走る事になっている。
信号待ちをしていた番組のプロデューサーが、適当に目に留まった若者に声を掛けた。
「どうもこんにちは。私は二十四時間テレビのプロデューサーをしている者なのだが、君、ランナーとして走ってみる気はないかい?」
突然声を掛けられた若者は驚きながらも聞いた。
「どうして僕で、何故走らなければならないのでしょう?」
若者の問いに、プロデューサーは少し考え答えた。
「正直に話すと、走る人の姿を視聴者に見せる事が出来れば、走る人間は誰でも良いのだ。そもそも、本来の走る目的など誰も覚えていないし、毎年の恒例の行事とはそんなものだろう?」