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空想世界は色づいて

第3話~占い師コマリは春を待つ~

作者: シラン

【登場人物】空色の髪 少女 占い屋 【名前】コマリ

【キーワード】「鎖」「春」「明日なんて永遠に来ないだろうけど」


眠たい。まだ夜も明けていない。

ただ、鳥たちは目を覚ましたのか、チュチュっという声が聞こえてくる。

「…なんじゃ……春鳥(はるどり)か…」

この世界にしか存在しない春にしか姿を見せない人懐っこい鳥だ。人間と遊んでほしくて鳴いている。


ぐいっと伸びをして起き上がる。もう少ししたら従者が起こしにくるだろう。

まぁ、良いだろう。たまには、春鳥たちと(たわむ)れるのも。

袖の長い上着を羽織って、布団から這い出ると、春特有の肌寒い風が足をくすぐっていった。

「寒いのぅ…なぜ、こんな寒いのに(みな)は何故(わらわ)に会いに来るのかのぉ…」


草履を履いて庭に降りていけば、チュッチュッと自然に降りてくる春鳥達を撫でながら、コマリの頬に涙が伝った。

春はコマリのような年齢だと恋する暖かい季節なのだ。

そのはずなのだが、コマリはそんなことなかった。


コマリの仕事は占い屋。

ずっとそうやって生きてきたのだ。生まれてきた時から持っていたよくわからない力のせいで、こんな揺さぶられ引っ張られる恋すら知らない人生を歩んでいる。

恋なんて、世界を見ることなんて夢のまた夢で、本でしかコマリは世界を知らない。


そんな自分が居ていいのだろうかと考えたこともあるが、人々からすればほぼ当たるコマリの占いは必要らしい。

こんな素晴らしい鳥籠に捉えられながらも、人々が喜ぶ様を見ているのがコマリに唯一の生きがいだった。

でも、辛いのには変わりがない。


「…妾には、明日なんて…」

明日なんて永遠に来ないだろうけど。

そう笑いながら涙を流した。


コマリは今日も離れの小さな家で人々を占っている。

コマリの足と首と心には、責任と運命という見えない鎖が雁字搦めになってコマリを苦しめている。

人々は、それを全く知らない。


コマリは、占い続けてる。

人々の運命を見続けている。


終わることない今日と春の日に。



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