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北方3国

 ハイエナ国王ブルチと、バッファロー王国使者ベアリウモスは、翌朝再び謁見の間にて顔を合わせていた。

「昨晩はゆっくりと休まれましたかな? ベアリウモス殿」ブルチが尋ねる。

「はっ。素晴らしい部屋と食事を堪能させていただきましたが、本件があるゆえ、心から寛ぐ事はできませんでした」苦笑いを浮かべながら答える。

「それはそうだな、ベアリウモス殿は正直者だ。非常に好感が持てる」ブルチが本心で言う。

「恐れ入ります。何かブルチ様の前では全てが見透かされている気がして……何時もより思った事を口にしている気がします。あぁ、これもそうですね」再び苦笑いのベアリウモス。

「それでこそ信頼が置けるというもの。これから手を組もうとする相手としては申し分ない!」

「……それでは!! 共闘いただけると!!」

「その通りだ。貴殿の言う通り、これは我々3国にとって国土を広げるチャンスであると判断した」

「我々3国という事は、他の2国に関しても共闘いただけるので御座いますか?」

「うむ、鳥は出しておいた。チーターは早速乗ってきたが、サイは未だ返答が無い。ライオンとは停戦協定があるからな。迷って当然。しかし、4国で共闘してこそより良い効果が出るというもの。サイの合意があって初めてこの共闘は成立する。後はサイの返答待ちだな」ブルチは3国が同盟を結んでいる事は話さないが、鳥を送った事、チーターとサイの意向まで全てを話した。

「ありがとう御座います! 私からもサイ国へ書状を送ります」

「うむ、頼む! ところで、ライオンの動きはどうだ?」


 ベアリウモスは、自分が知っている情報をブルチに伝えた。一昨日、ライオン軍がアバディーンからユニオンデールに向かって出撃した事。早ければ明日にもユニオンデール攻めが始まる事。バッファローの秘策はこの戦いで発揮される事。

 ブルチはそれを聞き、返答期限を今日中とする、催促の書状をサイ国王グンドリルに出した。


 ハイエナ国での外交を終えたベアリウモスは迷っていた。これからサイ王国へ向かうべきか、それとも本国へ戻るべきか。サイ王国に着く頃には、ハイエナの元に書状の返事が届いており、その結果が共闘するものであった場合、無駄足に終わる。共闘しない場合、自分が行った所でそれを覆す事ができるのか? 一方、これから本国に戻れば、ユニオンデール城内には入れないものの、外からライオンを牽制する事が出来るかもしれない。どうすべきか思案している時に、鳥がギュリフスからの書状を運んで来た。先ほどギュリフスに出した書状の返事だろう。内容はこうだ。

『ハイエナ国チーター国の共闘、実に素晴らしい成果! アシモフ様も大変お喜びじゃ! こちらは、ベリウス殿を無事アガラスへ送り届けた後、今は王宮におる。明日にはユニオンデールで戦いになろう。お前は外交に専念せよ』

 これを受けて、ベアリウモスはサイ王国へ向かう事とした。



 サイ王国では昨晩、国王グンドリル、参謀ホンドリルによる協議が行われた。本日朝にはハイエナ国に宛て返答をするはずだったが、未だに出せていない。大将軍ワームドルジェが国王の招集に応じず、今朝になってようやく現れたからだ。

「ワームドルジェ、お前どういうつもりだ? この大切な時に召集に応じぬとは?」

「お言葉ですが国王、召集命令を受けたのは今朝ですが?」ワームドルジェはウソを付いていた。昨晩召集が掛かったが出向かなかった。その理由はすぐに国王に知れる事になる。

「何? そんな言い訳が通用すると思っているのか? まぁその前にまずはハイエナに返事をせねばならん。ハイエナかライオンか。我等の進む道はどちらだと考える?」

「……ブレイドには引かれる物を感じます。しかしながら、それはブルチにも同じ事が言えます。それに引き換え……」ワームドルジェがグンドリルを睨み付ける。

「将軍! 国王に向かって何という態度……」ホンドリルが慌てて静止しようとした時だった、ワームドルジェの背後から現れた巨大なサイがホンドリルを吹き飛ばした。

「なっなっ何事か! 貴様等はいったい……えぇい、誰かおらぬか!!」グンドリルが叫ぶが誰も現れない。

「無駄です、国王。周囲は全て私の兵で鎮圧しております。国王、いやグンドリル殿、長年のお勤めご苦労であったな。今日、これより私が国王となり新たなサイ王国を築いていく事とする。これまでの弱腰の平和主義はうんざりだ! ライオンかハイエナかだと? 我々はそのどちらも選ばぬ! 我が道を行く事にする。貴殿にはもうしばらく働いてもらうぞ。ハイエナ国を欺くには貴殿の力が必要だからな」

「きっ貴様等……こんな事が許されると思っているのか……」ホンドリルが腹部から大量の血を流し、ヨロメキながらワームドルジェの前に戻って来た。

「参謀殿……残念ながら貴殿に役目は無い。ここでお別れだ」そう言うと、ワームドルジェはさっと後ろに飛び、5m程の距離を取った。そこから体制を低くし前足を2、3回かくと一気にホンドリルに向かってに突撃した。それはまさに巨大な岩が弾き出されたかの如き勢いだった。ホンドリルはそれを真正面から受け即死した。その亡骸は原型を留めず、巨大な肉片の所々に骨や牙や角が覗き、もはやサイと呼べる物では無くなっていた。

「なっなんという事を……ホンドリル……」グンドリルが膝立ちになり、目を見開いて肉片と化したホンドリルの亡骸をみつめながら、絶句する。

「さて、グンドリル殿、まずはハイエナに返事を書いていただこう。彼らも首を長くして待っている事だろうからな。返事はYESだ」



 チーター王国が手に入れた新たなFGは、元々地上最速だったチーターのスピードを更に高める物だった。これを飲んだのが将軍ゲンジーン。そこから数年かけて出来上がったのがライトニング隊。稲妻の如きスピードを持った部隊だ。隊長はもちろんゲンジーン。

「キンガース様、ライトニング隊100頭いつでも出撃できます!」ゲンジーンが早くも高ぶった様子で報告する。

「そうか、頼もしいではないか。だが、出るのは明日だ。今日はゆっくり休んでおけ。お前達の部隊がこの戦いの鍵を握るのだからな」

「かしこまりました!」

「期待しておりますぞ! ゲンジーン殿!」参謀のストリングも高ぶった気持ちを抑えきれない様子で声を掛ける。

「お任せ下さい参謀殿! 必ずやライオン共を蹴散らしてご覧に入れましょう!」

 決戦は明日に迫っていた。

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