ライオン王国
ブレイド率いるライオン軍は、ユニオンデールから北東に10km離れた小都市、ザイマンスダルに陣を張っていた。今日、ここからユニオンデール攻略に向かうのだ。攻め口は唯一の連絡口である東側で、キュベルの策でカンマナ川を渡り、城門を打ち破って攻め入る作戦だ。
ここでも、ブレイドを中心に円卓が設けられていた。メンバーは国王ブレイド、参謀キュベル、特殊部隊長ガロア、第1部隊長リョーク、第2部隊長ベルシモンの5名だ。特別遊撃部隊は別行動を取り、第3部隊は北方の守備に当たっていた為、それぞれの隊長は同席していない。又、大将ジュードは不測の事態に対処できるよう、首都デザでグレインと共に待機していた。
「キュベル、川を渡る手はずはどうだ?」ブレイドが尋ねる。
「はっ。現在予定通りに進行中です。今から2時間後、カンマナ川に巨大な橋が架かります」
「よし。橋が架かれば、ベルシモンの攻城部隊をガロアの部隊で護衛しつつ城門まで前進。非常に強固な3重の城門だが、2人とも頼んだぞ!」
「お任せ下さい、ブレイド様」ガロアが答える。
「必ずや、城門を破ってご覧に入れます」ベルシモンも答える。
「うむ。城門を突破すると同時に、第1部隊が突入し第2部隊は後退だ。特殊部隊は城内の様子の報告と、第2部隊後退の護衛を頼む」
「はっ、川と城門さえ攻略できれば、他の城と何ら変わりません。私の部隊で押し切ってみせます!」リョークが答える。
「かしこまりました」自信に満ちた表情でガロアがうなずく。
「よし。では、今より30分後の午前9時に出発とする!各自部隊に戻り、最後の支持を待つように」ブレイドの話が終わり、キュベルを除く各部隊長は自分の持ち場に戻った。
「キュベル、バッファローの動きはどうだ?」
「はい、偵察鳥によりますと、ユニオンデール上空は守りが堅く城内の様子は確認できておりませんが、城外へ出向いて来るバッファローは確認されておりません」
「篭城か……最悪のシナリオは?」
「……攻略に時間が掛かり、その隙を突いて北方より3国が攻め入る事……で、御座いましょうか?」
「そうだな。ワシもそう思っておるが、どうも何かを見落としている気がしてな……時間までもう少し考えるとしよう」これまでの戦いでも、ブレイドの直感や閃きといった天性の感覚ともいえる能力で、ライオン軍の窮地を救った事があった。今回も彼の第6感ともいえる感覚が何かを感じ取ってはいた。だが、肝心の内容までが見えて来ず、一抹の不安を抱えていた。残り30分でそれを見つける事ができるか、或いは大戦前の杞憂であると判断するのか……ブレイドが決断する時が迫っていた。