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ライオン王国

「ユニオンデール攻略作戦の説明は、以上になります。ご質問は?」参謀キュベルが、バッファロー王国で難攻不落とされる、ユニオンデール攻略作戦を皆に説明し終えたところだ。

 ユニオンデールが難攻不落と称されるのには、いくつかの理由があった。まず、城の中に街が形成されており、その中で食料と水を確保出来る為、兵糧攻めは出来なかった。次に、城の場所だ。元々は、小高い丘の上に巨大な城を築き、その中に街を形成した。その後、平地から城への緩やかな斜面を削り取り、断崖絶壁の上に巨大な城が聳え立つ形を作り上げた。

 ユニオンデールとの、唯一の連絡通路となっているのが、城の東側なのだが、ここは巨大な3重構造の城門と、高さ20mにも及ぶ城壁で磐石の備えとなっていた。 又、その城壁の前には、川幅3kmにも及ぶ巨大な川、カンマナ川が流れており、敵の大群が迫ってきたとしても、一斉に城に近づけないようになっていた。天然の堀な訳だ。

 

「ユニオンデール攻略中の、北方3国に対する守りはどうされますか?」第3部隊長、ベッケルンが尋ねる。

「北西部のサイ王国とは一時休戦期間中ですので、最小限の守りとします。中央部のチーター王国、北東部のハイエナ王国には十分な守りが必要であると考えます」

 ライオン王国の北側は、西にサイ王国、中央にチーター王国、そして東にハイエナ王国と隣接していた。

 サイ王国とはかつて何度か大きな戦いがあったが、両国共に被害が大きく、休戦協定を結ぶ事となった。それ以降は、互いに自国の被害を恐れ、休戦協定が継続されている。近々同盟を結ぶのでは? との噂もある。

 チーター王国は、北方3国の中では最も国力、土地共に小さく、これまでもライオン王国に侵攻してくる事は無く、今のところ大きな脅威では無かった。

 ハイエナ王国とは何度も大きな戦いを繰り広げてきたが、ライオンは南へ、ハイエナは北西へと、互いに反対方向に戦力を向け始めてから数年、大きな戦いは起きていない。


「第3部隊には北方の守備に当たっていただきます」キュベルがベルシモンに向かって話す。

「心得ました。では国王様の守備部隊だけでも、ユニオンデールへお供させます」

「それは心強い、北方の守りも頼むぞ!」国王ブレイドが答える。

「はっ! この命に代えてもお守りいたします!」

「うむ。頼んだぞ! だが、大切なのは命だぞ! 国民と兵士と、お前の命を守れ。城や土地などは後から何とでもなる」

 大切なのは命。

 ブレイドの口癖だが、それは代々ライオン王家に伝わる家訓のような物であった。

 FGが開発された当初、動物達は人間達と共に戦っていた。しかし、そう思っていたのは動物だけで、多くの人間は動物を戦争の為の兵器としか考えていなかった。その為、動物の命を軽んじた作戦が多く、多くの命が犠牲となる事となった。

 動物は、何度も人間と話し合い、命を平等に扱うよう求めた。しかし、それは叶わぬ願いであった。人間は動物を戦争兵器として活用する為に、FGを開発したからだ。それを悟った動物達は徐々に人間に牙をむき、遂には人間に勝利し、自分達の世界を創る事となった。

 多くの動物はそんな数百年前の出来事を覚えていないが、ライオン王家では代々語り継がれ、命の尊さを家訓としている。

 命の尊さを家訓としながらも、ライオンの本能が消える訳では無い。その結果、命を大切にした戦闘が行われる事になる訳だ。


「他に質問は御座いませんか?」キュベルが全員を確認する。

「よし、ではこれで行こう。予定通り事を進めるように! 皆、くれぐれも無理はするな! 頼んだぞ!」ブレイドの決定で、ユニオンデール攻略作戦の実行が決定した。


「いやぁ~しかし、さっすがキュベルだなぁ、そんな方法で川を渡るなんて、俺は思いも付かなかったよ!」グレインが嬉しそうにキュベルに話す。

「恐れ入ります、若様」

「父上、私の初陣はいつですか? 何ならこのユニオンデールでデビューって事でも……」

「グレイン、お前はまだ成獣の儀が済んでおらんではないか。成獣と認められた者でなければ、戦いには連れては行けぬ。それにお前は今日も遅刻をした。時間を守れぬ者が戦いの場でどれだけ周りの者に迷惑を掛けると思う? ましてやお前は皆を指揮する立場。遅刻癖が直るまで戦いには行けぬと思うておけ! 皆の迷惑になる」

「……はい、ごめんなさぁ~い」シュンとするグレイン。

「申し訳御座いません、私の管理不行き届きに御座います」平謝りのコークス。



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