FG
FGが人間によって創り出されたのは、今から約400年前の事。当時の人間は国家間の戦争で、人間の犠牲を減らす事を目的とし、動物達を利用する事を考えた。
手始めに、既に軍事目的で利用されていた軍用犬の、知能を向上させる薬を開発した。
これが最初のFGといわれている。
早速、軍用犬に、初代FGを使用した訳だが、その効果は絶大で、使用後1週間程で片言の会話が出来るようになり、更に1ヵ月後には、日常会話や、文字を読む事もできるようになった。そして、FG使用から3ヶ月後には、人間の中学生並みの知能を持つまでに成長した。
知能を持った軍用犬は、その俊敏さと、抜群の嗅覚で人間同士の争いの、様々な場面で活躍した。戦争に影響を及ぼす存在となった。とはいえ、決定打とはならなかった。そうなると人間は、当然のように次の手を打つ事になる。
今度は空を飛べる鳥にFGを使用した。しかも、知能だけでなく、早く・長く・高く飛べて、更に、重いものを持てるようになる。そんなFGを開発した。
これは、戦争に非常に大きな影響を及ぼす事となった。決定打になった訳だ。なぜか? 小型でレーダーに映らない爆撃機、もとい、爆撃鳥が完成したからだ。
爆撃鳥は活躍した。
このFGを開発した国が、もっと多くの資源を持ち、もっと大量の爆弾を保持していれば、一気に世界を征服していたかもしれない。それ程までに爆撃鳥の力は凄まじかった。
しかし、他国は当然それに対する策を講じる。爆撃鳥に対しては、戦闘機ならぬ戦闘鳥だ。
戦闘鳥は、戦闘に特化した鳥で、足の爪、嘴といった、鳥の武器が非常に強化されていた。
一方の爆撃鳥は、両足で爆弾を抱えて飛んでおり、戦闘鳥からの攻撃には、ほぼ無防備な状態となった。
上空で迎撃された爆撃鳥は、自らと供に持っていた爆弾も一緒に地面に落下する。これにより多くの民間人が犠牲になる事態が相次ぎ、遂には国際条約で爆撃鳥の使用を禁止する事になる。それまでに犠牲となった民間人は、全世界で数千万人及んだ。
この後、各国は競ってFGを開発し、数多くの動物に知能や特殊な能力が備わる事になった。
結果、戦争による被害は格段に増え、やがて人間達は、進化した動物達をコントロールしきれず、衰退し、FGの開発もそこで打ち止めとなった。
現在の動物達は、その頃に遺伝子操作をされた動物達の子孫に当たる訳だが、当然、その子達は操作された遺伝子情報を引き継いで産まれてくる。産まれて少しすると言葉を操り、筋力増強された親の子は、当然並外れた筋力の持ち主であった。
400年も前のFGが、未だに発見される事がある。FG1つで国力が変化すると言っても過言では無く、各国は、FG捜索に力を入れ、1年に数本のFGが見つかる事もあった。
FGの中でもRFG(レア フォビドン ジーン)と呼ばれる、希少種が存在するとされている。
RFGは通常のFGとは異なり、遺伝子操作が子に引き継がれない特徴を持つが、その力は絶大とされている。しかし、現在それを有する者が存在するのかは不明であり、もはや伝説に近い存在となっていた。