勇者はやる気をなくしたようです
とある時のとある国
100年前、封印されたはずの魔王がどこかのイタズラ小僧のおかげで封印が解けてしまった。魔王は魔物を各地に送り、民を苦しめていた。
そこに男勇者イルダ、男戦士カイム、女魔法使いエリス、女僧侶カルナの4人が立ち上がり、人間世界を救うべく魔王を倒すことになった。
そして激しい戦いをくぐり抜け、魔王城まであと少しというところ
決戦の朝のことだった。
「……………」
「……………」
「……………」
「あーダルいわー」
勇者はやる気をなくしたようです
~~~~~~~~~~~
「…おい、勇者」
「なんですか?カイムさん」
「もう出発の時間だ、準備をしないか」
「えー…眠いっす」
「何を言う。今日は魔王との決戦の日ではないか、気を引き締めんか」
「そうですよっ、もう少しなんですから頑張りましょうよ」
女魔法使いのエリスが励ましてくれる
「あー、もういいんじゃね?魔王倒さなくても」
『!!!??』
「な、何を言っているんだ勇者!!」
「俺もう疲れたんだよ、家に帰らせてくれ」
「ダメに決まってるだろ!魔王城はすぐ目の前なのだぞ」
「…なんで俺、こんなところまで来たんだろ…」
「何を今更…」
「ていうかさ、なんで俺勇者なんてやってんだろ…」
「勇者様が何か自分の存在を否定し始めましたよ!?」
「今頃勇者なんてカッコ悪いじゃん。魔王倒すとか(笑)とか言われてるよきっと…」
「それって私達も否定してませんか(汗)」
「しかもあの王様、俺らでパーティ組んだ時、4人もいるのにはした金としょうもない武器よこすんだぜ?魔王討伐させる気あんのかよ…」
「王国は財政難………これもしょうがないこと………」
僧侶のカルナがそうつぶやく
「それはあのジジイの経営が下手くそなだけだろ。俺らには関係ねい」
「だ、だが魔王を倒せば俺達にもお金が入るんだぞ?」
「お金が欲しいから、命懸けるとかアホの考えだろ」
「……………」
「なにが伝説の勇者の血を引くものだよ………そんな理由で危険なところに行かせるなよ…」ブツブツ
「…………………………」
戦士、魔法使い、僧侶はコイツを見てこう思った。
『コイツめんどくさい…』
こそっ
「ど、どうしたんでしょう勇者様(汗)」
「うむ…分からん。昨日はあんなにやる気だったのに」
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昨日の勇者
テレレレッテッテッテッテー
「よっしゃ!!レベルアップしたぞ」
「やりましたね、勇者様!」
「勇者のレベルはもう最高レベル………これで魔王に対抗できる………」
「うむ、これで魔王討伐の準備は万全だな」
「よし、明日は遂に魔王との闘いだ。皆、世界に平和をもたらす時は近いぞ!!」
『おーーーーー!!』
おー…おー……おー………
~~~~~~~~~~~
「昨日の勇者様はものすごく張り切ってたのに…」
「もしや勇者は………魔王の呪いでやる気を削がれたのかもしれない………」
ふとカルナがそうつぶやく
「なるほど、魔王が着実に成長する勇者をどこかで見ていて危機感を覚え、やる気をなくす呪いでも掛けたのかもしれないな」
「となれば呪いを解くには…」
『魔王を倒さなければならない………』
だが、唯一の戦力である勇者はやる気がない
「俺は土になりたい」
しかも何か変なこと言い始めたし…
「なぁエリス、魔力は充分足りてるのか?」
「は、はいっ。今日に備えるために魔力草で回復させました」
「カルナは?」
「問題ない………蘇生魔法も万全状態………」
「仕方ない…勇者も連れて俺達で魔王を倒そう」
そしてカイムが勇者に近寄る
「おい、出発だ」
「動きたくないでござる!動きたくないでござる!」
「ここで動かねば魔物にやられるぞ」
「む、それは困るな」
「そうだ、だから…」
「そうだ。転がればいいんだ」
「………は?」
「俺はダルくて立ちたくないんだ。だったら転がればいい」
「そ、そんなことしたら服が汚れちゃいます(汗)」
「だって立って歩くのダルいんだもーん」
ゴロゴロゴロゴロ
「あー、地面がひんやりしてキモチイイー」
「……………」
~~~~~~~~~~~
ゴロゴロゴロゴロ…
「あー、転がるって楽ちんだなー」
「……………」
勇者は転がりながら、魔王城へ向かっていた
端から見ればすごくシュールである。
すると…
グオオオオオォォォォォ!!!!!
ゴーレムが現れた!
「くっ、いきなりか。勇者以外戦闘隊形を取れ!」
「はいっ、やってやるです!」
「了解………」
「……………」鼻くそホジホジ
たたかう ピッ
カイムの攻撃! ミス! ダメージを与えられなかった
エリスの攻撃! ミス! ダメージを与えられなかった
カルナの攻撃! ミス! ダメージを与えられなかった
「つ、強い…」
「ダメです!攻撃を全部ガードされちゃいます」
ゴーレムの攻撃!
ドカッ!!
「ぐわっ!!」
カイムに50のダメージを与えた!
「カイム様!!大丈夫ですか!?」
「あぁ大丈夫だ………攻撃はかすったが」
「勇者様!!あなたも戦ってください。敵が強すぎます!」
「ダルいっす」
「戦ってください!!」
エリスがスゴい剣幕で言う
「んもー…しょうがないなぁ」
ゴロゴロゴロゴロ
「ちょっ!?そっちは敵の方だぞ!」
ゴロゴロゴロゴロ…
勇者はゴーレムに突撃する!
ドンッ
グアアアアアァァァァァ!!!
ズシィィィィィン…
勇者がゴーレムのすねに衝突!
ゴーレムに10000のダメージを与えた!
ゴーレムをたおした!
『…………………………』
「さて、倒したし行くか」ゴロゴロ
『勇者パネェ………』
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魔王城
「遂に魔王城か…」
「なにか………おどろおどろしい雰囲気を………感じる」
「ふえぇ、急に緊張してきました…」
「……………」お尻カイカイ
「よしっ、これが最終決戦だ!!魔王を倒し、世界に平和と安寧を。ついでに勇者のやる気を取り戻すのだ!!」
『おーーーーー!!』
ダダダゴロゴロ…
「ふははははは!!来たか、勇者共よ!!」
不意に声がすると、目の前に巨大な身体が現れる
「貴様が魔王か…」
「いかにも、どこかのイタズラ小僧のおかげで目覚めて世界にめちゃくちゃ迷惑掛けてる魔王だ」
「貴様を倒して世界を救ってみせる!!」
「ふっ、やってみせよ。どうやら全員生き残ったらしいな。戦士、魔法使い、僧侶。そして勇shーーー」
「あー床がひんやりしてキモチイイー」だるーん
「………あれ?なんでコイツだらけてんの?」
「なにを言う!貴様が勇者に呪いを掛けたからこうなったのだろ!!」
「え?わし?」
「おかげで勇者説得すんの大変だったんだぞ!」
「ていうか、呪いってなに?美味しいの?」
「まだしらを切るつもりか!」
ガキィン!!
「ちょい待ちちょい待ち!!わしそんな呪い掛けてないし!」
「嘘をつくな!」
「いや知らんてマジで」
「……………本当か?」
「あぁ、逆にそんな呪い掛けんならそっちに魔物大量に送るんだけど」
「た、確かに…」
なぜか魔王に説得される戦士
「じゃあつまり…」
「勇者は呪いでやる気なくしたんじゃなくて…」
『コイツ元々やる気ないだけじゃねえかあああああああああああああああ!!!!!』
ドゲシィ!!!
カイム、エリス、カルナの攻撃! 勇者イルダを蹴っ飛ばす!
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
「げ!なんかこっち来たし!」
ドスッ
「いってえええええ!!足がぁ!足があああああ!!」
ズシイイイイイィィィィィン…
魔王に99999のダメージを与えた!
魔王をたおした!
『…………………………』
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こうして魔王討伐の旅は幕を閉じ、世界の平和と安寧が訪れた。
それから数年後、王都の中央広場にダルそうに寝てる勇者の銅像が作られ、勇者のやる気なし伝説は永劫語り継がれたとさ
めでたしめでたし?