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1 P.バンド結成

自由に生きる集団『T』。ルールも常識もマナーも超えた世界に生きるT達は、≪音楽≫に≪ダンス≫に≪喧嘩≫、本望を通じて走り回っている。

 彼達の人並み外れた生活に、憧れること間違いナシ!!

 ぜひ、お見逃しなくっっっ!!

「いいじゃん。俺達でバンド組んでもぉ。長く付き合ってるんだしぃ」

「あっはっはっ! 私は別にいいよー。生活が変わるだけじゃん」

「ジェスカはそういうと思ってくれてたー!! マジありがとう」

「あっ、はいはいはい!! ジェスカが入るんなら私も入るーっ」

「ロリンも本間ありがとー。俺なんか嬉しくなってきた!」

「じゃあ、成り行きで俺も入るわ。なんか入ったら連絡して」

「おおっ。わかった」


 1分程度の軽いバンド結成だった。Tと呼ばれる喧嘩と音楽、ダンスを中心として活動する人のラジオ番組。自由に生きる者同士の自由トーク。視聴者から絶大的な支持をうけ、長きにわたり全国放送をしている。

 勿論、1分で形成されたまだ名もないバンドが有名になるにも時間はかからない。


 ラジオ放送が終わる。Tのボスとも呼ばれるライブハウス経営者のマスター・アレブティに育てられたことで有名なロリンは、恋人のユージに満面の笑顔を見せると赤銅色のコートを素早く着て、スタッフに深々と頭を下げると一番にドアから出ていく。残った3人は、イヤホンをゆっくり外し放送室から出る。お疲れ様でした、と口々に言い合いながら徐々に外に向かって出ていく。


「明日は午後3時からスタンバイお願いします」

「久し振りにリハやる? 明日私暇だからさ」

「あ、じゃあお願いします」

「はい。じゃあ2時に来るんでよろしくお願いしまーす」


 ジェスカは、深夜の時間に疲れていなさそうな声を出してその場を和ませる。照明が時刻に応じて暗かったが、彼女の長くうねった金髪はよく光って見えた。スタジオから出ると疲れ切ったような顔になり、猫背が目立った。


「ちゃんと寝たのいつだっけ」ジェスカが言う。

「俺寝てねぇ」間髪を入れずにレンジも口を開く。

「俺は車の中で寝たくらい……?」ユージがそう言って首をひねる。


 ジェスカが深々と溜息をついて、暗い顔で廊下を2人と歩き始める。食事はマスターのバランス手料理を食べているから問題ないにしても、休養が全くと言ってとれていないのが現実。つまりにつまったスケジュール帳を全部こなせるかという不安が3人につきまとう。


「アンタ、今から何あんの?」

「ライブ」

「ユージは?」

「友達と喧嘩の予定入れらぁ」


 なのに、バンドを組んじまったわけか。ラジオで言ったものは、有言実行しなくてはならない。無理だった、なんて二言はできる筈がない……。

 T達も余裕でスケジュールをこなしているように見えるが、それはきっと休養の時間を省きまくっているからであって、いざ自分の体を素直に向き合ってみれば筋肉がギシギシと言っていることだろう……。

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