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ただの恋の話  作者:
2/2

初めての恋人繋ぎ

かなりスロー更新申し訳ないです泣。




あの後、あたしと彼はせっかくだから一緒に帰ることにした。いや、断れなかったという表現の方が正しいのかもしれない。それに、あんなに嬉しそうに喜ばれて。めちゃくちゃ帰りたそうな表情でお願いされたら、断れないだろう。もしあそこで断っていたら、…彼は捨てられた子犬のように鳴き続けそうで、断れなかった。


彼と一緒に帰りながらいろんな話を聞いた。

まずはもちろん彼のことだ。彼は、いきなり告白をしてきてくれたのだが、まず名乗っていなかった。彼曰く、緊張のあまり名乗るのを忘れたそうで。とりあえず、想いを伝えたくてしょうがなかったらしい。


名前は、桜井司、と言うそうだ。

そして、もちろんわたしと同じ大学1年生。大学は一緒だけれど、学部は健康福祉関連の学部で、経済学部のあたしとは違う学部。学部が違って寂しいと、この数分で何十回も言われたけれど。なんとなく思う。彼には、きっと何かやりたいことがある。そんな風に感じた。


学部を言うときに、彼の瞳はまっすぐで真剣だったから。


あたしは、何気なく大学を選んで。何気なくこの学部に入ったから。彼みたいに、堂々と自分の学部を伝える姿はすごくかっこよく感じた。


そして、今。

一緒に隣りにいて歩いて帰るだけ、とそう思っていたんだけど。


「へへっ」


なんと!彼は、あたしの手をぎゅっと握り締めてきた。


お、っと!

もう手を繋いでしまうんですね!?


恥ずかしさのあまり、手を振り払って走り出したい気持ちに駆られたけれど。そんなことできるわけなくて。いや、もししたらそれはただの空気読めない奴になってしまうから。必死に堪える。


恥ずかしながら、あたしには男性経験はない。中学から高校までずっと部活一筋だったし、高校に入ってからは、予備校も重なったので、そんな暇なかったのである。それに、凡人だからモテるわけもなくて。男友達ならいたけど、彼氏なんてできたことなかった。


だから、こうして手を繋ぐのも初めてなのだ。


もっと順序がある、と思い込んでいたので。

こんな風にあっという間に手をつながれると、どうすればいいのかわからなくなる。


そう、順序があると思ってたんだ。

まず、友達として知り合って、相手のことを良く知って。それから、段々と惹かれていって、好きだと確信する。


それから、告白をして(理想はされたいけれど)。付き合って最初のデートで、帰り道にやっと手を繋ぐ。


…みたいな?


そんな感じだと思ってた。

ていうか、それが理想だったと言いますか。


隣りを見ると、彼は嬉しそうに微笑んで。

あたしと繋いでいる手をマジマジと見て、指を絡めた。


付き合って初日で、恋人繋ぎ!?

…この人、慣れてますよね。やっぱり彼はモテるんだと、改めて実感。そして、本当に自分なんかでいいのかと、改めて思い悩んだ。


…どうか。

ドキドキと爆音で鳴る、あたしの心音が彼に聞こえませんように。


ただ、それだけを祈るばかりであった。



交際の経験はないけれど。恋人繋ぎ、というものはよく街で見かけていた。指を絡めあって、より親密度がアップするような繋ぎ方だよね。いつも街中で見かけては、羨ましいな…と未来の彼氏とのそんなシーンを妄想したりした。


そんな風にいつか、素敵な人と恋人繋ぎをするんだろうなと夢見ていたけれど。まさか、こんな風に叶うとは思っていませんでした。…ははは。


「桜井くんさ…」

「やだ」

「え?」


なんだ?

今の甘えたような拒否は。


驚いて桜井君のほうを見上げると、彼はぷぅーっと頬を膨らましてあたしを見ていた。そして、歩みをとめた。あたしは、彼の意図がわからずに一緒に立ち止まる。すると、彼は子供のように拗ねながらあたしを見つめて。


「桜井君なんて、他人行儀すぎ」


そんな風に口を尖がらせて呟く。


?、なんだそれ。

甘えん坊か!とツッコミたくなった。


どうやら、苗字では呼んでほしくないみたいだ。


「…司君、でいい?」

「まぁ、まだしょうがないか」


そう言いながらもまだ納得できていない様子の司君。

きっと、いつかは彼のことを呼び捨てで呼ばなければいけないんだろうな。…あたしにそんな高度な技ができるんだろうか。


司君、というだけで、心臓が口から飛び出そうなのに。

呼び捨てするとなると、心臓が破裂してしまうんじゃないだろうか。


本当に、恋愛初心者という自分が恥ずかしい。


「で、何?」

「あ、うん。えと、調査したって何?」


そうそう。さっき言ってた、調査の結果っていうのがずっと気になってたんだ。厳正な調査とか言ってたけど、それこそ怪しくて。ひとつも当てはまらない調査の実態が知りたくてしょうがなかった。



「聞いたんだ、親友の沢木君に」

「佑太に?」


沢木佑太というのは、あたしの幼稚園からの幼馴染。

まぁ、幼馴染だから本当にくだらない仲。あたしのことは当然よく知ってるとは、思ったんだけど。まさか、佑太に聞いていたとは。しかも、知り合いだったなんて。世間て、狭いんですね。



「可愛くて、面白くて、おしゃれな人いないかなって相談したら、陽ちゃんのこと紹介してくれた」

「…」


ポカン…と、開いた口が閉じません。


ますます、不思議が募っていきます。

だってだって!まず、その条件にあたしが当てはまるとも思わないし。あたしを女扱いしない佑太が、その条件であたしを紹介したっていうのもおかしいし。何もかも、おかしいじゃん!ていうか、全然厳正な調査じゃないじゃんかー!



あと!



「陽ちゃんって何?」

「呼、び、名!」


語尾にハートがついているのが分かるくらい、愛をこめてそう言われた。




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