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第7話 デア・ノイエ。

「残念だったな。また11月になったら来たらいい。お前が働くところから1日がかりだけどな。」

「うん。新酒はあきらめる。でも、なかなか美味しいワインだね。小さなワイナリーだけど。」


途中の宿泊地で宿をとってから、フィンを連れて、ワイナリーでやっている居酒屋に向かった。新酒の解禁は11月1日だったので、まだ少し早かった。

料理をあれこれ頼んで、ワインを飲む。


「しかし、お前はまだ小さいのに、のん兵衛だな?」

「え?もう17歳だけど?もうすぐ18になる。」

「え?…」


チビだな。身長は150ちょっとくらい?


「ラースがでかすぎるだけだ。オレは156はある。これからもっと大きくなる。」


チビじゃねえか。

ピザに似たフラムクーヘンというのがいたく気に入ったらしく、フィンが今食べているのは2枚目だ。イモにこれでもかって、言うくらいチーズがかかったものも気に入ったみたいだ。

「ビールにも合いそうだけど、ワインでもうまいよね。」

そうだな。お前は何を食べてもうまそうに食うな。



「…そうよねえ…お相手が浮気したのが悪いなら逃げ出すことはないから、何かやましいことがあったんじゃない?」

「やっぱり、そうよネ?だって、王子様と結婚できるんだもの、愛人ぐらい目をつぶるわよねえ!あははははっ!」


お隣のテーブルでおばさま方が盛り上がっているのは、今、ブリア国内で話題の、未だに見つからない第一王子の元婚約者の話題らしい。どこに行っても聞くな。

フルール国内でもブリアの役人が探しまくっている。ひと月以上たつがまだ見つかっていない。


「そうそう、その元婚約者にも恋人がいたらしいじゃない?新聞読んだ?」

「読んだ読んだ!ねえ、お互い様、って感じ?お貴族様も庶民もそうそう色恋は変わんないのね?」

「男と女しかいないんだもん!そうよ!あははははっ!」



「チッ。」

今の今まで、ハフハフしながらアツアツのチーズ掛けイモをうまそうに食っていたフィンが、眉間にしわを寄せて、目を細めている。聞いていて楽しい話ではない、か?おばさま方うるさいし。まあ、どうせみんな噂話だけどな。


「まあ、いろいろとこの国も大変そうだよな。その逃走中の元婚約者さえ見つかれば、真実もわかるんじゃねえ?」

「真実?真実ねえ…真実なんて一つじゃないでしょう?」

「あ?」

「真実なんて…しょせん、主観よ。人の数だけあると思うな。」

「……」


こいつ…酔ってるのか?

目つきが悪くなったフィンを引っ張って宿に戻る。俺は飲み足りなかったので、ワインを1本買ってきた。


「お前も飲むのか?」


グラスを差し出すフィンに、少しあきれながら注いでやる。結構いい赤だ。自分のグラスにも注ぐ。


「なんだ?あのくらい、この国中ではどこでも話題になっていただろう?何を怒っているんだ?お前の、正義感、ってやつか?いらない感情だぞ。」

「あら、いるわよ、正義感。目をつぶっていたら何も見えないし、そもそも何もなかったことにされちゃうじゃないの?」

「…」

「タブロイド紙ならまだしも、大手の新聞まで、権力に媚びを売るようになったら終わりね。そもそも、真実はどこか、とも、原因はなにか、とも考えも調べもしないで聞いたことそのまま垂れ流してんじゃないわよ、って言いたいわけよ!」

「…新聞に怒ってるわけか?」

「まあ、ね。所詮、権力の道具なのね、新聞て。知りたくなかったわ。」

「……」


2人で、買ってきたワインを1本空けて、散々フィンの愚痴を聞かされてから、さっと湯を浴びる。後で入ったフィンがなかなか出てこないので見に行くと、風呂場で伸びていた。飲みすぎ、だろう。長湯すんな。


おいおい…。


タオルで拭きあげて、ベッドに運んで水を飲ませる。







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