表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/22

第21話 祝杯。(最終話)

挨拶を交わす人が多すぎて、身動きが付かない。

陛下のご厚意もあるので、無下にもできないし。にこやかに挨拶を交わす。


ようやく切り抜けたら、ご令嬢方に囲まれてダンスに誘われる。

父親に背中を思いっきり押されているご令嬢もいる。

鼻が利く人間には、僕はヘンドリック陛下の匂いがするのだろう。ここぞとばかりに突進されて、お目当てを見失ってしまった。


伯母さまのデザインしたブルーのドレスを着た、チビ。


さっきは壁際につまらなそうに佇んでいた。


どこに行った?また、窓から逃げても、僕は捕まえに行くけどね。


「ごめんなさい、レディ。僕は心に決めた女性がいるので。」

そう言って微笑みながら、人波を切り抜ける。




人気のないバルコニーで、手すりにもたれかかりながらシャンパンを飲む、ブルーのドレスのチビを見つけた。まだいたか。良かった。


「リック様の所有のブルワリーならまだしも、知らない方の物になったところでラースは働けるのかしら?元々の新聞記者に専念するのかしら?」


おい。独り言、デカいぞ。


「新聞記者、か…。チッ、だましやがって。まあ、まんまとだまされたのは私だけど。何が…恋人になる?だ。伯母さまのデザインでドレスを作る?だ。」


シャンパンを一気飲みしている。


「うーん、違うな…ビール飲みたいな。がぶがぶ飲みたい。こんなところのこじゃれたオードブルじゃなくて、焼き立てソーセージを丸かじりしたい気分だ。」


ふふっ。そうだな。


「あーあ、自分では自由になった気で、実際は籠の中に保護、されてたのか…真実なんて実際に見てみたらたいしたことないな。それでも、楽しかったな…。」


空になったグラス越しに、暮れていく夕日を覗いている?


「あ、ラースに借りたお金を返してないな。陛下に預けておけばいいか。」


そうだね。借りた金と恩は返すんだろう?


「今日の戴冠式の報道者リストには、ラースの名前もライナーの名前もなかったな。フルールに帰ったのかな?…ま、いいか。」


いいのか?


「さて、第一王子との婚約破棄で、かなりの金額を慰謝料でもらえるみたいだし、それで領地に帰ってブルワリーを造るか!」


おい…そうきたか。


「レディ・フィーネ?」

「え?どなた様?」


逆光になってよく見えないのか、こんなところで声を掛けられるはずがないと思っているのか…振り返ったフィンは心底迷惑そうな声だ。眉間にしわが寄っている。


「僕と結婚してほしい。」

「無理です。」


秒だな。


「え?」


「どなた様かは存じませんが、私、もう乙女じゃないんで。他をあたって下さい。」

「……」


一瞬で世界がひっくり返るかと思った。僕の脳内の情報を整理する。ああ。そういうこと?


「フィン、お前とサムエル領の小麦畑の中に立ちたい。ホップ摘みも忙しくなる。今度は黄金色の海に沈む町を見にいこう。俺と結婚したら、今なら、美味しいブルワリー付きだぞ?」

「え?」

「目をつぶって、フィン。」

「え?ラース?何その格好?何で銀髪?」


そこ?


「目をつぶれ、フィン。」

「ん。」


お前…チョコレートが入ると思ってるだろう?


間抜け顔のフィンに口づけを落とす。


「ち、ちょっと待って?ひょっとして、あなたはラルフ・サムエル侯爵???え?」

「うふふっ。」

「でも、あなたの最愛の人って、アデリナさん、ていう人なんでしょう?胸の大きな人なんでしょう??」

「あ?アデリナは母の名前だ。ちなみに今はフルールの伯母のところにいる。胸は…フィンの胸だってちゃんと飯を食ったら大きくなるよ?俺も協力するし。うん。」

「あ?え?」


「返事は?」


「ラース!あなたがどんなに嘘つきでも、一緒にいたいの。」


「…いや、それはお前の主観でしょ?言えないことが多かっただけで嘘は言ってない。」


灯りのともりだしたホールに、フィーネの肩を抱いて入っていく。


「とりあえず、僕たちの婚約を祝して乾杯する?ビールの時期に結婚式をしよう。」

「そうね。でもあと2か月しかないわよ?」


「十分すぎるし、長すぎるでしょ?」


俺としては、すぐでもいい。まだいろいろと手続きが残っているから仕方ないけど。


「明日の新聞に私たちのことも載るかしら?」


「一面、陛下とアンジェリーヌ様だから、安心しな。」























本編 完です。番外編に続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ