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第2話 とりあえずビール。

厩舎から馬を一頭引き出して、うちの家紋入りの馬具を付ける。

後は、南街道をひたすら南に走る。薄暗くなってきたが躊躇している暇はない。

王都のはずれの小さな町まで来てから、馬をしばらく休ませて、馬に言い聞かせて尻を叩く。


「いい?この道を真っすぐ走るのよ?行け!」


南街道はそのまままっすぐ行くと、お隣の国フルール国につながっている。

うちの家紋のついた馬が国境付近、そうでなくても南街道付近で見つかれば、私はフルール国に出国したと思ってくれるだろう。

…しかも、貴族令嬢が髪を切る時は夫と死別したときと、修道院に入る時。

残してきた切った髪は、私が修道院を目指しました、という証。


上り始めた月明かりの中、身軽になって楽しそうに走っていく馬のお尻を見送る。


さて。


このあたりの治安が良いのは知っているが、早々に安い宿を探して、部屋を取る。

9月の中旬ともなると、夜はそれなりに寒くなるから、野宿は避けたかったし。

【フィン】と宿帳にサインして、近くでまだ食事のとれるところを紹介してもらう。


紹介してもらった食堂は、にぎやかな居酒屋だった。夜遅くまでやっているらしい。

店の外にも即席のテーブルと椅子が置かれていて、みんなご機嫌でビールを飲んでいる。6人ほどの常連さんらしい酔っ払いが、乾杯の歌を歌っている。相当出来上がっているなあ…。

老若男女、いろいろな人が楽しそうにやっている。


私は帽子をもう一度しっかりかぶりなおして…カウンターでとりあえずビールを注文する。前払いみたいだ。ごそごそと小銭入れからお金を出して払う。


お腹が減っていたので、ローストしたチキンとイモ。白ソーセージのゆでたやつを一緒に頼んで、カウンターの空いている席に着く。


…舞踏会前なんかろくに食べれもせずにぎゅうぎゅうにウエストを締め付けられて…いざ舞踏会に行って見ると、何も飲み食いしないうちに終了してしまったし…


「ほいよ~ぼくちゃん、ビールね。お待たせ~」

お姉さんが片手に3つずつ巨大なジョッキを持って、そのうちの一つを私の前にドン、と置く。置かれた拍子に、白い泡がタプンッ、と揺れる。


…おお!


国内の視察に出かけて、ビールの醸造所にも見学に行ったことがある。かつての私の婚約者は、ビールなんて庶民の飲み物だ!と口も付けなかったから、飲みたかったけど私も少ししか飲めなかった。


うふふっ。飲むぞ~!


私の自由に!カンパーイ!!







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