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第16話 離宮。

途中、馬を替えて、夜半には王城に着いた。

かつて自分に割り当てられた部屋に入るのかと思っていたら、賢妃、マルガレータ様の離宮につれて行かれた。


客間に通されて、待機していた侍女たちに風呂に入れてもらって、髪染めも落とされた。さすがに疲れが出て、そのまま眠った。


翌日、少し遅い時間に朝食。あまり食べたいとも思わない。


侍女が自分の支度をするのを、ぼんやりと見る。

「こちらがヘンリック様から贈られたドレスです。」

ラベンダー色の、ふんわりとしたドレス。コルセットがいらないタイプみたいね。


…ああ、ラースが言っていた、フルールで流行っているドレス、ってわけね。


前のドレスを着るように言われたら、さんざん飲み食いして大きくなった私のウエストは悲鳴を上げるところだったわ。


短い髪をピンで留めながら、花飾りをつけて、まるで長い髪を丸めていますよ~みたいに仕上げていく。さすがだわね。


迎えに来た侍女に連れられて、マルガレータ様に挨拶に伺う。

案内されたお茶室には、もうお二人が揃っていらした。窓から中庭が見える。


「ご無沙汰しております。マルガレータ様、フィーネでございます。」

「久しぶりね、フィーネ。これは私の息子、ヘンリックよ。もう会っているでしょう?」

「はい。ご挨拶も出来ず、失礼いたしました。」

「まあ、いいよ、フィン。座って。」


お茶を出して、侍女が下がる。


「なぜ君を呼んだのか、もう見当はついているね?」


金髪のリックさん。やっぱりあなたでしたか。


「…はい。おおよそですが。第一王子派の貴族の子息やアルマさんの親戚あたりが執務や行政に携わって、めちゃめちゃにした。あたりでしょうか。宰相殿はご無事ですか?」

「そうなんだよ。話が早いね。宰相はまだ療養中だ。ひどいもんだね。」


「私が呼ばれたのは、その立て直し、でございますね。」


「そう。どれくらいかかる?」

「多分、解雇されている私がいたころに集めた事務官や執行役員を再雇用していただいて…半年。いえ、3か月で。」

「へえ。さすがだね。どうだろう、母上?」

「ええ。お任せしましょう。それと、今回は第一王子と陛下に振り回されて、あなたに大変な迷惑をかけてしまったわ。貴女の名誉と貴族籍はこちらできちんと取り戻させますからね。本当に、ごめんなさい。」


マルガレータ様とヘンリック様に頭を下げられて、さすがに恐縮する。


「君のご実家には、定期的に僕の従者が連絡を入れていたから、心配はないよ。今日、この後、ここに呼んであるから。」

「はい…ありがとうございます。」


従者、ねえ…。


マルガレータ様が優雅にお茶を飲んでいる。ヘンリック様はお母様に似たのね。

金髪に、薄っすらと紫がかった瞳。


「そうそう、昨日の新聞は読んだ?」

「はい。」

「どう思った?」

「…そうですね…まず、10年前に毒を盛られたのはヘンリック様でしたのね。医師やら薬師が集められて大騒ぎしていたのを見て、仕掛けた本人の王妃陛下が逆手に取った。第一王子が毒を盛られたことにして、犯人をでっちあげて、当時第二王子派だったサムエル侯爵殿の名を語らせた。そうしてそれを大々的に新聞社に流した。」

「うん。それで?」

「世論を味方にして、まるで真実のようにサムエル侯爵殿を裁判にもかけずに処刑したのでしょう。もう二度と、第二王子を擁護する貴族が現れないように。」


マルガレータ様が一つ小さくため息をついて…


「そうね。私自身の名誉のために付け加えると、ヘンリックを連れて、フルールの国王に預ける算段をして国に戻ってきたら、もう事は始まって、終わっていたわ。」

「……」


「…ね、母上、面白い子でしょう?ラースのお気に入りなんだ。」


「本当ね。…いいわね。」

「……」


ん?何かしら?


「そう、結局のところ、新聞という媒体を使ってまんまとことを運ばせたと思っていた王妃は、今度はその新聞に叩かれたってわけ。過去までさかのぼって、これから様々な事件が明らかになる。こちら側にいればいいけど、向こう側にいたら怖いね。」


ヘンリック様が言うことは抽象的だがわからなくもない。要は、使いよう、ってことなんだろう。












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