15/22
第15話 夏まで。
テオに付き添われて階段を降りる。
玄関に侍女と護衛騎士が待ち構えている。
その向こうに…六頭引きの馬車…夜駆けする気?
ふっとため息を一つついて、背筋を伸ばす。
テオが頭を下げているのを、目の端で見る。
「あらいやだ!フィン、何やらかしたんだい?夏のホップ摘みまでは帰ってきなよ!」
ホール係のお姉さんが叫んでいるのを後ろで聞く。
こんな時に、この人は…まったく。そう思うが、帰ってきたいと思う。忙しいらしいし。
「ホップ摘みで手が真っ黒になるんだけど、洗ってもいつまでもホップの匂いがすんのよ!布団に入って、その匂いを嗅ぐとねぇ、ああ、夏が来たなあって思うんだ。」
そんなことを言っていたなあ…
小麦畑が黄金色に染まる真ん中に立ちたい。
ホップ摘みで手を真っ黒にしたい。
お布団に入って、自分の手のにおいをかぐんだ。
帰ってきたいなあ。
お姉さんの意地の悪いからかいも我慢するから、
私もその夏の中にいたいなあ…。
手を取られて、馬車のステップを上がる。




