凄いファンタジー
物書きを目指して約数年、書いて書いて書き綴った物語を手にし、早園妙は郵便局へと向かうところだ。
雨がぱらつく歩道を急ぎ足で行くその表情からは、少し焦りが見えている。
妙の年は三十代後半、物書きの夢を叶えるのに早い段階ではない。
勿論小説だけで食べていける程の文を書くには人生経験が必要だが、それでも妙は出来れば二十代には受賞、デビューしたいと考えていた。
(三十過ぎても変化ないなんて、まさか思わないよね。
だけど、これで人生変えてみせる!)
傘を原稿へと傾け自身の身が濡れても気にしないで、妙の足は郵便局の入り口を小走りで抜けた。
「こんにちは、郵送へのご案内はこちらの窓口です」
局員の女性が妙に声をかけた。
「あ……はい、普通でお願いします」
「かしこまりました」
局員の女性が原稿の重さを計る間、妙は不安を抱いていた。
(始めて目にした出版会社だけど、ふざけた記事じゃないよね。
ちゃんと『文学マガジン』に掲載されてるし……)
少しの雨に濡れた封筒には『株式会社銀河空間書店』と宛て先が記されている。
今まで聞いたことがない出版会社だが、募集記事の内容からふざけている感じはしないので妙は応募をそこに決めた。
(でも兎に角、今度こそ……受賞しますように)
妙の夢をのせた小説は出版会社へと送られた。
〈初回募集だけあり、まだ応募作品は少ないですね☆〉
〈認知度がローなので、数名の応募しかない☆〉
〈次回からは多数の応募があるだろうよ☆〉
審査員の惑星の化身が、作品の審査をしながら語り合っていた。
結果は地球でいう五日後……間もなくだ。
〈この作品……銀河の泉の匂いがする……☆〉
応募作品の中の一つを見た惑星の化身の一人が、懐かしい故郷を思い出していた。