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詩歌集

夜空バス

タイトルの読み方は「やくう」です。




夜更け。


ふらりと外に出た私。


誘われるように。


夜道を歩く。


普段、煩いくらい車が走る大通り。


けど、今は車が一台も走らない。


静かで、虫の音が夜の闇に良く響く。


すると、遠くから乗り物が走る音がした。


その音の方をみると、バスがこちらに向かって走ってきた。


こんな時間にバスなんて走らない……のに。


それに、見たことのないバスだ。


バスは、私の傍で止まった。


プシューっと音を立てて、扉が開く。


「こんばんは。このバスは君の行きたいところへ連れていくバスです」


何とはなしに。


私はそのバスに乗る。


そのバスは最初は普通に車道を走っていた。


すると、ふわりと車体が持ち上がって浮かんだ。


夜空を走る、バス。


私は驚きながらも「これは夢だろう」と思い、バスの窓から外をぼんやりと見つめた。


バスの外では星がキラキラとちいさく瞬いて。


とても、綺麗で。


バスはある程度空を昇ると、まっすぐに夜空を走る。


何処へ向かってるのかなんて、しらない。


バスに揺られながら、私はぼんやりと窓の外を眺めていた。


すると。


「次のバス停で停車します」


運転手がそう言うと、バスは止まった。


まさか誰か乗ってくるの?


こんな時間に?いや……そもそも人?


そんなことを思いながら、入り口の方を見ていると。


誰かが、乗ってきた。


その人は──


「あっ……」


君、だった。


「なんで……?」


「いや、何となく目が覚めて外に出たら……このバスが俺のところに止まって……」


しばらく。


君と私は見つめあっていた。


すると運転手が咳払いをし、君は慌てて私の隣の席に座った。


「発車します」


運転手は言うと、バスを走らせた。


夜空を走るバス。


私と君はずっと無言で。


私は窓の外を見るふりしながら、窓に映る君の顔をチラッと見た。


すると、窓越しで君と目があって。


ばっと、お互い素早く窓から目を反らす。


ふいに、私の手と君の手が微かに当たる。


「「ご、ごめっ」」


ぶわっと頬が熱くなる。


無言のまま、バスは走る。


息苦しくない沈黙。


心地のいい、静けさ。


バスは夜空を走る。


キラキラと星瞬く夜空のなか。


君と私を乗せたバスは、静かに走る────







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