第27話「追憶の激闘」
レオンの強さを垣間見れます!
近々決闘をするというのに、レオンという男はルークとアデルバートをいつも側に置いてこの日もイングラムを誘った。
「よお、おはようイングラム。朝飯4人でどうだい?今日はルークが奢るんだけど」
レオンは片手を上げて手を振り、声を上げて気付かせるようにそう言った。
「くっ、ジャンケンやにらめっこで負けなければ……!」
隣には悔しげに拳を握りしめるルーク。
そしてそれをジュースをストローで飲みながらプルプルと震えているアデルバート。
笑いを堪えているのだろうか
「結構です……俺はそちら側と仲良くつるむつもりはありません。この間はUMAに気が乗っかっただけです」
「そうか、そりゃあ残念だなをゴーストトークしようと思ったんだがねぇ…」
本当に残念そうに、イングラムの食いつきそうな単語を呟きながら頭をポリポリと
掻き出す。
無論無意識にイングラムはその単語に反応したが、今回は己を御して言葉を紡ぐ
「……くっ、どういうつもりなのですか?これから闘うというのに、なぜ敵と仲良くしようとするんですか?俺にはそれが理解できない」
「単純だぜイングラム。レオンはお前と会話がしたいだけなんだよ」
アデルバートのそんな言葉を聞いてイングラムは尚更眉を細めた。勉学は理解できるが、この男については本当に理解できない。
「あなたの軍門に降るとでも?ふん、反吐が出そうだ」
イングラムの目は殺意に満ち満ちている。
そして、アデルバートとルークを睥睨し
「あぁ、そうか……レオン、貴方はそのふたりを手足として当の本人は大した実力を持っていない。ということですね?」
その言葉を言った瞬間、深緑の影と紺碧の影はイングラムを取り囲んだ。イングラムも咄嗟に槍を構えてふたりの攻撃を
迎撃する。
「あ〜、始まっちまった」
自分を罵倒されたというのに、レオンはあちゃーと片手を顔に当てため息をついた。先の言などまるで気に留めていない。むしろ殺気づいたふたりを眺めながら口角を下げている。
「取り消せイングラム・ハーウェイ
それ以上は許されんぞ」
アデルバートは冷酷にそう紡いでイングラムの槍を氷の糸で縛る。目視すら難しい糸をイングラムは視認し、解こうとしたその刹那
「そうそう、謝るなら今の内」
深緑の剣がイングラムの腕の辺りまで振り下ろされる。その速度の速さに思わず目を見開いた。
「お前たち……どうしてそこまでレオンを
信用する?」
迎撃をするよりも先に、疑問が浮かび上がる。それを取り払うために、イングラムは言葉による理解を試みる。
「単純だ、こいつといると面白ぇからだよ」
「これから教員たちに手足となって使われるより、彼といるほうが楽しいと俺たちは思ってる」
面白いと、楽しいと、このふたりは声を揃えていった。この男のどこにそんなカリスマ性があるというのか、イングラムにはわからない。
「くだらない、そんな感情など俺には必要ない」
馬鹿馬鹿しすぎて理解するのを放棄した。
こんなことは初めてだったが、時間を無駄にするよりはマシに思えた。
「レオン、後日コロシアムでお会いしましょう。それまではお互い接触禁止ということで」
「……そうか、そうだな。俺はどうやら馴れ馴れしすぎたらしい、その時にまた会おうぜ」
背を向けているイングラムに、手を振って
そして彼も背を向けて歩いていく
「……ルーク、俺たちはコロシアムの状態を確認するぞ、奴らが卑劣な策を用いてこないとも限らん」
「そうだね、じゃあ俺はあいつらの監視
アデルは潜入して、怪しいところがないか調べてきて」
アデルバートは首を縦に振ってまるで忍びのように姿を消した。そしてルークも風のようにその場を去って行く。
「ま、あーたこーだ言ったって仕方ねえか、飯にするぞ、今日は俺は胸肉の蒲焼きで──」
レオンが思い出したように踵を返すと
そこにはもう誰もいなかった。
「えぇ、ソロ飯かよ……」
落胆しながら食堂へ向かっていくレオンであった。
イングラムは真っ暗な部屋にいた。というのも、地図を使う必要がないと思って
適当に歩いていたら道に迷ったのである。
「……どこだ、ここは」
イングラムは紫電を集めた球体を作り出して掌の上で明かりを灯す。すると、目の前には大きな岩のような何かがあった。
「……?よく見えんな」
球体をゆっくりと浮かばせてその正体を探る、答えはすぐに見つかった。
モアイ像がある。彼の頭に最初に浮かんだ言葉は、なぜ?だ。
「誰だ、ボクボク眠い」
「……は?」
上から何かずしりと響くような声が聞こえた。気がした。間違いない。モアイが喋った。なぜ喋ったのか、今更聞く必要もないだろう。
「聞こえなかったか?ボクボク眠い、そのギラギラするの消せ」
「あ、ごめん」
イングラムは指を鳴らして電球を消した。
モアイ像はそれに満足してスヤスヤと寝息を立てた。
(なんだったんだ、なんでこんなところにモアイ像があるんだ……)
イングラムは脳細胞をフルに回転させて
思考するが、答えは出ない。
「んが……っ」
モアイの声がまた聞こえた。何か喉に詰まらせたように苦しそうに咳き込む。
「さっきの、まだいる?」
「さっきの……ね、あぁいるぞ」
「ガムガムくれる?」
「……」
「ねぇ、ガムガム」
イングラムははぁ、と溜息をついて
目覚まし用に買っておいたスパークリングレモーニングという名のガムの封を切った。
「酸っぱいぞ」
「いいよ」
あーん、と口を大きく開ける。空気を吸い込む音が聞こえるから、相当大きいのだろう。しかし、暗闇なのでうっすら浮かぶシルエットしか見えない。
「電気付けていいか」
「ダメ」
ちっ、と舌打ちしてもういっそのこと全部投擲した。また買いなおせばいいのだし
「モグモグ……」
「どうだ、美味いか?」
苛立ちを孕ませながら問いかける。だが、くちゃくちゃ音が煩い
「美味い、でも酸っぱい。お前、いい奴、名前言え」
「……イングラム・ハーウェイ」
くちゃくちゃと咀嚼しながらもふむふむと言う言葉が聞こえて来る。きちんと聞いているようだ。
「グラグラ、レオレオと闘うのか?」
「……お前もあの男の肩を持つのか?」
モグモグと咀嚼しながらモアイ像は答えた。
「アイツ、いい奴、独りだったボクボク
ここに連れてきた。それに、ガムガムくれる」
「へぇ……なぁ、ガムガムやった代わりに教えてくれよ。アイツはどんな奴なんだ?」
いつの間にか、レオンが気になっている自分がいることにイングラムは気が付かなかった。
咀嚼音が速さを増してきたが、敵の情報を得るにはうってつけの相手だ。ここの女どもはイングラムを見るやきゃー!という奇声しか上げてこず、レオンの話題を振れば廊下に唾を吐くような奴らばかりだからなんの役にも立たない。
「アイツは、ボクボク持ち上げる時凄いマナ使ってた。心、暖かくなった。」
(心が暖かくなるマナだと…?)
そんなものは聞いたことがない。マナは地球の大自然の力の一部を人間が拝借することで初めて使うことができるものだ。
感覚的に熱いものはあれど、暖かなものなど、あるはずがない。
「ボクボク嘘つかない。イングラム、お前いいヤツ、レオンもいいヤツ。闘うのダメ。ボクボク悲しい」
「————」
なぜだか、レオンがボクボクに対して
優しく接している場面が勝手に浮かんできた。鬱陶しいので手で払ってやったが
「ボクボク悲しいはもうたくさん。レオレオとグラグラ仲良く————」
「無理だな。俺はあの男と刃を交えねば
ならん。アデルバートとルークを側に置いているんだ、アイツらより弱いということはないはずだ」
「どうしてもやめない?ボクボク……悲しい」
悲しげな声を出して、ボクボクは黙った。
イングラムは背を向けて歩き始める。
罪悪感なんかこれっぽっちもないはずなのにこの心に穴が開いたような虚無感はなんなのか
(人外も、そして人以上の力を持つあの2人も、なぜこうもあの男に付く?見極めなければ、今回の戦いで……!)
そして、決闘当日————
まるでかつてローマに存在していたコロッセオを彷彿とさせるような楕円形の建物の中に、魔帝都の人間たちがぎゅうぎゅう詰めで座っていて大きな歓声をあげている。
〈さあ!始まりました!此度はわが最高学長きっての催しとなります!歴史上初のワンマン対決!トーナメント式ではナッシング!期待が高まりそうだぁー!〉
司会者は同意を求めるようにマイクを観客席に向け、歓声を拾い上げる。
〈学長!今回レオンさんに相対する人物とは一体?〉
「おい君、間違ってもあの屑男の名前は出さないでくれたまえ、気分が悪くなる。
そうだろう皆!」
そうだそうだと言わんばかりの空前絶後の大ブーイング。レオンは老若男女ともに大変不人気らしい。同僚にすらブーイングされるとは、なんとも悲しい男だ。
〈わ、わかりましたぁ……では、青コーナー!ここ魔帝都で最も不人気な男で超有名なふたりを下僕にしているとかなんとかな、ええっと、ブルーマン!〉
それはレオンのことだった。ブーイングがまたも始まり、その中でレオンが入場口からその身を乗り出す。上部にいる人々は唾を吐き捨て原始的な毒塗りの吹き矢で殺そうとする者までいる始末だ。
「ったく、やることが陰湿だな」
それを避けていく。当たらなければどうということはないらしい。慣れているということか。
〈続いて赤コーナー!彗星の如く現れた槍の戦士。幼少期から強者を求め、数多の猛者を退けてきた若き戦士!イングラム・ハーウェイ!〉
会場のボルテージが最悪から最高潮に達する。女性は惚気た声をあげ、男性たちは
喝采を起こす。話したこともない人々が、こんなにもレオンを妬んでいるのだと、イングラムは理解する。
(ここも、屑どもの集まりか……)
深々と溜息を吐きながら、イングラムは槍を向けて叫ぶ。
「拍手喝采大いに結構だが、対戦相手に
無礼があるようでは私のやる気も削がれるというもの、学長、今一度彼の名を呼んでいただいても構いませんか?」
何を言っているんだと、自分でも思うし
周りの人間もざわつき始めている。しかし、戦いに於いても礼儀は不可欠だ。それがたとえ第三者のものであろうとも不快なまま始めたくはない。
「……ちっ、仕方あるまい!青コーナー!レオン!赤コーナー!イングラム・ハーウェイ!両者前へ!」
舌打ちをしながらも、司会者をそっちのけで指示を仰ぐ学長の顔は怒りに満ちていただろう。だが、そんなことは関係ない。
今この時より、最も強き男と闘えるのだ。
「さあ、健闘を誓う握手を……!」
そう呟かれると、レオンは先に右手を差し出してきた。遅れて出した手を彼は優しく握りしめて
「よう、イングラム。退屈させないと約束しよう。それと、ヤジが来たら手伝ってくれると嬉しい」
「……いい戦いにしましょう。さっきみたいな変な奴らが来たらそいつらは焼きます」
そこまでしなくていいよ。とレオンは最後に呟いて距離を置いた。
〈では!レオンVSイングラムの決戦を始めます!両者構え!〉
レオンは隙だらけなポーズでイングラムを真っ直ぐに見据える。対してイングラムは透明にさせていた槍を顕現させて、くるりと回転させて切っ先を向けた。
〈レディ・ゴー!〉
先手を打ったのはイングラム。神速の如き三連突きがレオンめがけて繰り出される。
しかし、片腕で防いでそれを受け流し、イングラムの首筋に向かって音を置き去りにした蹴りを繰り出す。
咄嗟に屈んで、足蹴りを腹部に繰り出してやる。しかし、それを読んでいたのか
腹を引っ込めた。そのせいで空振りに終わる。
レオンは足払いをしてイングラムを宙に浮かばせ、勢いよく蹴り飛ばす。
コロッセオ後方の壁に勢いよく叩きつけられた。
「やるじゃないですか……」
「そうでもないさ」
称賛を否定する。本気を出していないのか、それとも単なるお遊びなのか、イングラムにはそれがわからなかった。
「俺は弱いよ、本当の強さってのをまだ見つけられてやしないんだからな」
「戯言を!」
理解に苦しみながらもイングラムは突貫し、胴体を貫通させる勢いで、思い切り突きつけた。
「っと……!」
避けられた上、槍を握っていた手を上から被せるように握りしめてレオンは自ら距離を詰め、呟いた。
「ところで、気付いてるかい?
魔帝都の奴らの殺気……どうもきな臭い」
「……何?」
イングラムが視線を上げると怪しげな集団が複数人、弓を構えている。そして太陽光に照らされた矢には淡く紫色に光る液体が垂れていた。それはレオンの背後にだけでなく、自分の後ろにもいることに気がつかされた。
「やつらはアンタだけを殺すつもりじゃないのか……?」
「学長のやつは疑り深い。君が俺について色々調べていたことを真に受けて、離反するのではって恐れてる。だから————」
なるほど、だから射殺しようというのか。
「だがその点に関しては大丈夫だ。俺には頼れる後輩がいる。だから安心して続けよう、ここで死ぬことはない」
ふん、とイングラムは鼻を鳴らす。不思議と、この男が嘘をつくようには思わなかった。
再び距離を置いて、レオンは右足を基点とし、身体を旋回させてを攻撃を回して攻撃する。その速度と破壊力はこれまで相手にしてきた人よりも大きかった。
それを、ほぼ直感で防ぐ。槍を持つ腕が
キリキリと音を立てて震えている。
「ふっ、さあ楽しもうぜイングラム!」
ブーイングなんて掻き消すくらいの爽やかな笑顔と熱意がヒシヒシと伝わってくる。それに感化されたらしいイングラムも思わず口角をあげた。
「ええ、心ゆくまで!」
ふたりは同時に後方へ跳躍、同時に突貫し、中間距離で激突した。立ち込める煙の中で、金属の音だけが響き、そして、その煙からひとつの影が吹き飛ばされたように出てきた。
「くっ……!」
立ち込める煙が宙を舞い佇んでいるその人物を陽が照らし出す。そこにいたのは、レオンだった。
「思った通りだぜ、お前からは計り知れない力を感じる……!何人をも凌駕しかねない力をな!」
「……過分な言葉だな!」
全力で仕留めなければなるまいとイングラムは全身のマナを最大限に解放する。空気中の静電気が、視覚化できるほどの量を以てイングラムに取り込まれていく。
「はぁ————!」
紫の雷を全身に纏ったイングラムは
雷神の如し風貌となった。歩けばそこに落雷が起こり、槍を振るえばコロッセオ中を引き裂くほどに強力な紫電が周囲を焦がす。
それを見ても、レオンは畏怖せず
豪快に笑い、手を広げた。
「いいね、来いよ!受けてたってやるぜ!」
レオンはマナを全身には纏わない。それを侮辱と受け取ったのか、イングラムは
手始めに槍から紫色の超高圧電流を放射した。
「おっ…と!」
レオンは身体を動かすことなく、顔だけを逸らした。頬には雷の残滓が残るほどの傷を負う。
「いい痺れ具合だな、目覚めにちょうどいい」
(なんだ、この男は……!)
イングラムの電撃は掠っただけでもその箇所を焦がすほどの威力を持つ。最悪、対象が焼け焦げて焼死するなんてこともこれまでにはあった。しかし、彼からはその兆候すら感じられない。
「ん?どうしたよ、来ないのか?」
不気味に感じながらも、イングラムは攻めの手を緩めない。これから、最大最強の一撃を叩き込むために
「爆雷焼波!」
槍を機関銃のように向けてその膨大なエネルギーをレーザー光線のように放った。
「ほう?」
驚く様子も見せず、レオンは微笑んで超スピードで迫ってきたソレを
「……そらよっと」
そう、ポツリと呟いて空中へと蹴り上げた。一瞬、純白の白いマナが見えたような気がするが、イングラムの雷が見せた幻覚だったかもしれない。レーザーはマナが尽きるその時まで空中へと飛んでいく。
そして、マナが尽きてガス欠になり、イングラムは膝をついた。
「ぐ……馬鹿な、俺の最大の一撃が……!」
「いやぁ、凄かったぜ。あれをモロに食らったら死んでたかもな!」
はっはっはっは!とレオンは豪快に笑い
イングラムに手を差し伸べた。
「来いよ、俺のところへ!退屈は絶対させない!」
不思議だ、温もりなど幼い頃に失くしたと思っていたのに、この男からはそれが溢れている。イングラムは、その手を掴もうと手を伸ばし————
「やはり役に立たんか、イングラムを殺せ!レオンもろとも!」
学長の恐喝が、コロッセオの内部にいた
刺客たちを奮い立たせ、弓を向け矢を放った。しかし————
それは瞬く間に業火によって燃え散った。
地面に落ちることも許されなかったそれは
空中に胡散する。
「ダメですよ学長、第三者が神聖な決闘場を汚しては」
三つの影が、レオンとイングラムを囲うように降り立った。
「貴様、ルキウスの弟だというから大目に見ていたというのに!」
「それに関しては感謝しています。しかし、イングラムくんは僕たちの友人です。
大衆の眼前で死なせるなんてことは起こさせませんよ」
ルシウス・オリヴェイラ。弓の達人で、視力を活かした後方型の戦士。だが、同時にレイピアも達者である。
「この戦い、どちらが勝ちとか負けとかじゃねえ。お前らの遊興はここで終わりだ」
アデルバートは自らが周囲に仕掛けていた暗具を展開する。学長と、レオンたちを狙った暗殺者たちの首は容易く飛んだ。
「そういうこと、邪魔するなよなー肥満野郎」
一番言われたくないことを言われて腹を立てたのも束の間、ルーク、アデルバート、ルシウスの3人はイングラムを抱えていく。
「さて、おいたまするとしようぜ。腹も減ったしな」
にかり、と笑みを浮かべるレオンは誰の目にも捉えられないほど疾く姿を消した。
ルークたちもそれに続く。
「と、まあ長くなりましたがこんな感じですね」
「イングラム様の全力を容易く返す……並外れた武勇をお持ちの方なのですね」
「ええ、とてつもなく強かったです。
当時の俺では、いや、きっと今も足元に及ばないでしょうね……」
天井を見上げて今はいない親友を思い浮かべる。自然と深いため息を吐いていた。
「……騎士様?その女の人はだあれ?」
!
か細いが聞き取れるくらいの声が聞こえた。セリアは小さな両手を優しく握り
笑顔を浮かべる。
「リルル様、初めまして。私はセリア、お医者さんをやっています。ぜひ仲良くしてください」
「リルル、目が覚めたか。よかった」
リルルはイングラムに手を伸ばし
それを優しく握った。
「えへへ、ふたりの手、あったかい」
ふたりは見合って、思わず微笑んだ。
ドラゴンくんも、無事に目を覚ましたようだった。あとは、ルークの目覚めを待つのみだ。
泣けるほど強かった……