第90話 お泊まり① —イチャイチャ—
四人で遅めの昼食をとった後、僕とシャルは彼女の家に向かった。
というより、両親に車で送ってもらった。
今日はそのまま泊まるつもりだ。
本当は昨日お泊まりする予定だったが、WMUに呼び出されて夜遅くなってしまったため、一日ずれちゃったんだよね。
帰宅して少しまったりした後は、二人で掃除をした。
言い出しっぺはシャルだ。
「少し前まではあんなに嫌がってたのにね」
「綺麗にする事の楽しさに気づいたのです。こまめに掃除しておけば、毎度大掛かりな事をする必要もなくなりますしね」
「それが掃除のコツだよね」
「はい……あぁ、ありました」
机の上を整理していたシャルが、何かを取り上げた。
「何があったの?」
「魔法師カードです」
「常に持っておきたまえ。無駄な争いを避けられるから」
「自分も忘れた割には偉そうですね」
あえて上からものを言えば、シャルは注文通りのツッコミをしてくれた。
「僕はいいんだよ。そんなに使う機会ないから。でもシャルは可愛いんだから、僕がいない時はすぐナンパされるでしょ? 変なトラブルに巻き込まれないためにも持っておかなきゃ」
少し真面目に注意をすると、シャルが頬を染めて「すぐそういう事を言う……」と唇を尖らせた。
未だに可愛いって言われ慣れないところとかが可愛いんだけど、それを言うと拗ねそうだからやめておこう。
「ですが、そうですね。なるべく持ち歩くようにはします」
「うん、お願い。でも、もしそれでも変なのに絡まれたりしたら、ちゃんと僕の事を呼んでよ」
「はい」
僕らは互いに二枚貝の片割れを見せ合った。
契り貝。かつてシャルがくれた、貴族の女性が婚約者に送るものだ。
魔力を込めると、対になっているもう一つの貝が反応する仕組みになっている。
本来なら愛を確かめ合うための道具らしいが、魔力を込めると相手の位置がなんとなくわかるため、救援要請の道具としてシャルから渡されていた。
「大丈夫です。これを忘れた事はありませんから。ノア君も忘れないでくださいね?」
「忘れるわけないよ。契り貝の本来の用途を考えたらさ」
「っ……!」
シャルがポッと頬を染めた。
しどろもどろになりつつも、言い訳するように言う。
「あ、あの時はそんなぷ、ぷ、プロポーズのつもりでは渡していませんからね⁉︎」
「わかってるよ。でもさ、あの時も本当に防犯のためだけだった?」
「っ〜!」
シャルが耳まで真っ赤にして、顔を背けた。
そして、流し目で睨みつけてきつつ、拗ねたような口調で言った。
「……わかっているくせに、聞かないでください」
「っ……」
あぁ、もう、可愛いなぁ!
愛おしさが限界突破したため、取りあえず抱きしめておく。
「シャル、大好き」
耳元で囁くように言えば、シャルはビクッと震えつつも、体を預けてくる。
そして、背伸びをして僕の耳元に口を近づけ、
「私も大好きですよ、ノア君。というより、私の方がずっと前から好きだったんですから」
ちょっぴり不満げに、いじらしい事を言ってくれる。
たまらず後頭部と背中に手を回し、僕の胸に顔を押し付けさせるようにして抱きしめた。
十秒ほどそうしてから、体を離して向かい合う。
シャルは頬を上気させ、潤んだ瞳に緊張と若干の期待を浮かべていた。
これから僕のしたい事は、わかっているのだろう。
「……いい?」
それでも一応確認を取ると、シャルは一層頬を染めつつも首を縦に振り、顎を少し持ち上げた。
再び後頭部に手を添えれば、シャルは僕の肩に手を置き、そっとまぶたを閉じた。
わずかに隙間の開いた彼女の唇に自らのそれを押し当て、柔らかさを堪能する。
何度か唇が触れ合うだけのキスをした後、少し唇を尖らせて、チュッとリップ音を立てさせてみた。
驚いたのか目を見開くシャルに、短い間隔で何度もキスを落としていく。
シャルがんん、と鼻から抜けるような声を漏らした。
それでもやめないでいると、手のひらで胸を押された。
色々と限界だったようで、耳どころか、首まで真っ赤になっていた。
足から力が抜けてしまったらしく、胸にもたれかかってくる。
「ちょ、ちょっと、は、はげしすぎます……!」
「嫌だった?」
「い、嫌ではありませんけどっ! その、も、持ちませんっ、し、しんじゃいます!」
「死なれるのは困るなぁ」
頭を撫でれば、シャルは目つきを鋭くした。
頬は赤いままだし、瞳もとろけているので、怖さなど微塵もないけど。
「……また、馬鹿にしてます」
「ごめんって。機嫌直して」
「……ぎゅってしてくれないと直してあげません」
シャルが胸に頭突きをしてくる。
こういう時は本当に拗ねているんじゃなくて、甘えたいんだよね。
「仰せのままに」
シャルを抱え上げて、あぐらをかいた足の間に乗せる。
肩口から腕を回して背後から抱きしめれば、彼女はビクッと体を震わせた。
多分、腰のあたりに当たったものが原因なんだろうけど、今はくっついていたい気分だから我慢してもらおう。
「……ノア君って、後ろからハグするの好きですよね」
「うん、好き。シャルは?」
「私も好きですよ……その、す、好きでいてくれてるのだなって伝わってきますし」
はにかみながらそんな事を言って、僕の手に指を絡めてくれる。
可愛いなぁ。
「——ノア君」
不意に声をかけられ、頭を上げると、空色の瞳と目が合った。
あれ、バックハグしてるのに何で目が合ってるんだろう。
そう思った時には、唇に柔らかいものが触れていた。
「あっ……」
唇を離したシャルは、顔を熟れたリンゴのように真っ赤にさせつつも、イタズラが成功した子供のように微笑んだ。
「私からもしないと、不公平ですから」
こんな可愛い事をされてタカが外れない彼氏なんていないよね。
脇の下に手を差し込んでシャルの体を反転させ、びっくりして半開きになっている口にかじり付いた。
上下の唇を喰むだけでなく、唇を舌先で舐めてやれば、シャルはビクッと体を震わせた。
そのまま口内まで侵入したかったが、シャルが自ら唇を開ける素振りは見せなかったので自重した。
口内を蹂躙せずとも、さまざまな角度から攻め続ければ、数分と経たずにふやけたシャルが出来上がった。
「も、もうげんかいですっ……し、しんぞうがはれつしちゃいます……!」
舌足らずなシャルも可愛かったけど、もう本当に限界そうだったから解放してあげる事にする。
いやぁ、満足した。
シャルは以前、僕が誕生日プレゼントとしてあげたクマのぬいぐるみに顔を埋め、呼吸を整えていた。
「シャル、大丈夫?」
「……いじわる」
ぬいぐるみから目だけを出して、こちらを睨みつけてくる。
「ごめんごめん。でも、さすがにあれは我慢できないって」
「……だって、やられてばかりでは嫌ですし」
「あれはクリティカルだったよ。けど、気をつけてね。あんまり煽りすぎると、僕も色々我慢できなくなっちゃうからさ」
「っ……き、気をつけますっ……!」
僕の言わんとする事に気づいたんだろう。
シャルは真っ赤な顔で頷いた。
ただ辱めたいだけじゃない。
これ以上シャルにアグレッシブになられると、本当に理性が抑えられなくなる可能性がある。
……お泊まりの頻度とかも含めて、一度そこら辺はじっくり話し合うべきかもしれないなぁ。
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