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第83話 甘えん坊なノア

「ふうー……」


 自室に入ってくるなり、ノアは自分の布団に寝転がった。

 無理もない、とその後ろを歩いていたシャーロットは思った。


 彼は、ここ十年ほどはEランクの平民として生きてきたのだ。

 WMUダブリュー・エム・ユーでの時間は、相当精神的な疲労が溜まったはず。


 それに、行きも帰りもシャーロットを送ってくれた。

 飛行魔法など使えないのでどれほどのものかはわからないが、人一人を背に乗せて空を飛ぶのは、決して楽な作業ではなかっただろう。


「お疲れ様です、ノア君」

「うん……シャルもお疲れー」

「私は何もしていません。ノア君の背中に乗っていただけですから」


 そう。本当にシャーロットは何もしていないのだ。

 それでもWMUのデイヴィット総監、UPN(ユー・ピー・エヌ)のウィリアム事務総長、自国——ラティーノ国のリチャード首相が集っている空間というのはプレッシャーが半端なものではなかったが、ノアに比べれば精神的にも肉体的にも疲労は少ない。


「なかなか大変な一日でしたね」

「ねー……まさか、特別補佐官なんて特別そうな役職を提案されるとは……あぁ、名前的に特別ではあるのか」

「何を言っているのですか?」

「僕もわかんない」


 二人で吹き出す。


「にしてもあのWMUの副総監、ベンジャミンさんだっけ……あの人、なんか圧がすごかったなぁ」

「そうですね。一人だけ勧誘の熱が違いましたもんね」


 デイヴィットなどもノアに入隊して欲しそうではあったが、ベンジャミンは絶対に入隊させるのだという強い意志を感じた。


「うん……なんか裏でもあんじゃないかって、疑いたくなったよ」

「ですね……あ」


 シャーロットは一つの可能性に思い当たり、声を上げた。


「ベンジャミンさんがノア君を熱心に勧誘した理由、わかりましたよ」

「何?」

「実はショタコンで、可愛いノア君の事が気に入ってしまったのです」

「うえー? そんな不純な動機で未成年勧誘しちゃダメでしょ……そもそも僕は可愛くないし」

「いえ、ノア君は可愛いです」


 特に今は、疲労も相まってふにゃふにゃしており、いつもの倍は可愛さが爆発している。


「可愛くないよ……」


(くぅ……!)


 むにゃむにゃしているノアを見て悶えていたが、シャーロットはふと冷静になった。

 ここまで疲れているノアを布団に寝せておいて、自分はベッドで眠ってしまっていいのか、と。


(良いわけないですよね。私がお邪魔していない時はベッドで寝ているわけですし)


「ノア君。今日は私が布団で寝ますから、ノア君はベッドで寝てください」

「えー……どうして?」

「お疲れのようですから。私は全然疲れていませんし、ベッドの方が寝つきも良くなるでしょう」

「うん、でも悪いよ……」


 遠慮するノアを抱え上げ、ベッドに乗せる。

 身体強化を使えば楽な作業だ。

 ついでに照明も暗くしておく。


「シャルが冷えちゃうよ……」

「大丈夫ですよ。掛け布団もしっかり用意していただいていますから」

「うーん……」


 ノアは不満げだ。

 しかし、今回ばかりはシャーロットも譲る気はなかった。


「私は大丈夫ですから。ね?」


 ノアの手を握って言い聞かせる。


「うん……あっ、ならこうすればいっか……」

「えっ? ——わっ⁉︎」


 突然ノアから伸びた魔力の縄がシャーロットの体を絡め取り、強制的にベッドに寝転がした。


「っ……⁉︎」


 シャーロットのすぐ目の前に、ノアの顔があった。

 息も触れ合うほど近い。

 シャーロットの頬が一気に熱をもった。心臓の鼓動が早まる。


(えっ? えっ?)


 シャーロットが現状を把握するよりも先に、ノアが彼女の腰に手を回した。


「これで、二人とも寒くないね」


 ノアがへにゃりと笑った。


「っ〜!」


(む、無理、無理です! こ、こんな近くでそんな笑みを浮かべられたら……!)


 悶え死にそうになり、シャーロットは慌ててノアに背中を向けた。

 腰に回されていた手は添えられている程度だったので、体の向きを変えるのは難しい事ではなかった。


 そのままの勢いで離れようとするが、それより先にノアの手がシャーロットのお腹に回され、彼女はガッチリとホールドされた。

 ノアがシャーロットの首元に鼻を寄せ、すんすんと匂いを嗅ぐ。


「ひゃあ⁉︎」

「良い匂い……シャルの匂いだ」


 嬉しそうにそう言って、シャーロットのお腹に回している腕にますます力を込めてくる。


(こ、このままではお腹よりも先に胸が締めつけられて死んでしまいます!)


「の、ノア君っ! さすがにこの体勢は——」

「すぅ……すぅ……」


(ね、寝てしまいました……!)


 背後から聞こえてきた穏やかな寝息に、シャーロットは言葉を失った。

 彼に他意はない。疲れて人肌を求めただけだという事はわかっている。


 それでも、彼氏に抱きしめられながら一緒のベッドに寝ているという状況は、これまで恋愛もそういう事も経験していないシャーロットには、刺激が強すぎた。

 ピッタリとくっついているため、ノアの吐息が首筋にかかっているし、彼の筋肉、さらには腰のあたりに柔らかい感触まで感じられる。


(ま、まだ固くなっていなくて良かった……って、わ、私は何を考えているのですかっ!)


 このままでは変な気持ちになり、暴走しかねない。

 かといってノアを引き剥がしたり、声をかければ起きてしまうだろう。

 せっかく気持ちよさそうに寝入っているので、それは申し訳ない。


 シャーロットには、最高で最悪の状況から抜け出す術はなかった。


(こ、これ以上意識していたら変になってしまいますっ。そ、そうだ。ベンジャミンさんについて考えましょう)


 一人だけ異常なほどノアをWMUに入らせたがっていた人物、ベンジャミン・ロペスについて考えを巡らせる。


 実家のテイラー家とほぼ絶縁状態とはいえ、貴族の娘として、情報の大切さはわかっている。

 WMUからの接触があると知った時点で、一応主要人物の事は簡単に調べていた。


 ベンジャミンは今でこそWMUの副総監という地位にいるが、昔から有名だったわけではなく、ここ数年で頭角を現してきた。

 妻はおらず、女性関係などの噂も表には出ていない、もっぱら仕事一筋だと評判の人物だ。

 

 ……冗談抜きに、同性愛者かもしれない。

 シャーロットとしては同性愛には何も思わないが、ノアが狙われるのなら話は別だ。


(さ、さすがに大丈夫ですよね? ノア君も私の体に興味は持ってくれていますし、今日だってお尻を……⁉︎)


 WMU本部からの帰りにお尻を揉まれ、少しなら触っていいと了承してしまった事を思い出したシャーロットは、再び羞恥に悶える事となった。

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